運営元のNTTソルマーレがその裏側を披露 ― primeNumber「DATA SUMMIT 2025」セッションレポート
“刺さるマンガ”との出会いをどう生むか? コミックシーモアが“マンガ愛”で取り組むAI・データ戦略
2025年12月24日 08時00分更新
月間利用者数が4000万人を超える国内最大級の電子書籍ストア「コミックシーモア」。読者が“刺さるマンガ”と出会えるよう、作品のタグ付けやクラスタリング、レコメンド基盤などで、独自のデータ×AIの仕組みを実装している。
2025年11月、データ基盤サービスのprimeNumberが開催した年次カンファレンス「DATA SUMMIT 2025」から、スタッフや読者の“マンガ愛”を実装するAI・データ戦略が語られた、NTTソルマーレの西良平氏、松尾優太氏によるセッションをレポートする。
“従業員のマンガ愛”に応えるデータ基盤の設計思想
コミックシーモアは、NTTソルマーレが運営する電子書籍ストアだ。2025年8月には21周年を迎え、月間利用者数4000万人を超える。読めるマンガの総数は実に174万冊以上、そのうち無料マンガも5万4000冊以上という規模だ。
NTTソルマーレのインフラチームでシニアディレクターを務める西氏は、コミックシーモアの特徴は「運営のマンガ愛」だと断言する。たとえば、日々展開されるキャンペーンや特集も、従業員全員が“目利き”として、それぞれが企画者となって実施されている。
そうした従業員のマンガ愛に応え、企画のあらゆるプロセスで活用されているのがデータ基盤だ。ただし、その裏側では、データ担当や基盤が膨れ上がっているのが現状だという。
例えば昨年には、コミックシーモアの20周年記念として、読者が利用年数や総読書冊数、読書傾向などを振り返ることができる専用サイト「わたしのシーモアstyle」を立ち上げた。21年間×4000万人分のデータは莫大な量であり、日々、データ連携が実施される。
この企画の立ち上げ時、西氏は思わず「本当にやるの?」と聞いたほどだという。膨大かつ定常的な計算処理とデータ転送に耐えうる基盤づくりに加えて、サイトの負荷を考慮した実装や処理失敗時のフローづくりなどの試行錯誤を重ねたと振り返る。
こうした大規模なデータ活用を支える基盤は、フルマネージドかつSaaS中心で設計されている。Google Cloudの「BigQuery」を中心に据え、primeNumberのクラウドETL「TROCCO」が各種接続を担う。「エンジニアをチューニングやキャパシティ管理から解放する、という思想に基づいて設計している。データ品質の向上のような本質的なエンジニアリングに集中でき、エンジニアとして企画に参画する余裕も生まれる」と西氏。
ただし、こうして基盤を整備しても、使うのが人である以上限界があるという。「傾向を分析できても、すべての読者は深掘りできない。そして、いくらマンガ好きでも、おススメ作品のバリエーションには限りがある」(西氏)
この限界を乗り越えるために推進しているのがAI活用だ。












