「まさか、うちのが……?」
11月26日、消費者庁から発表されたニュースに背筋が凍りました。パナソニックがリコール中の除湿乾燥機で、11月8日に新たな火災事故が発生したというものです(参考記事:パナソニックがリコール中の除湿乾燥機で火災事故)。
記事を読んだ後で洗面所に向かうと、そこには、2017年から実に8年間、我が家の洗濯物を乾かし続けてくれたパナソニックの除湿衣類乾燥機がありました。型番はF-YHMX120。2016年の発売当時、4万5600円で購入した愛機です(参考記事:育児に本気で役立った家電 これがないと生きていけない体になった)。
「燃えなくてよかった……」と胸をなでおろしつつ、商品ページを確認すると、そこには非情にも“リコール対象品”の文字が。製品内部の除湿ローター付近から発火する可能性があるそうです。
長年連れ添った家電が「爆弾」に見えた瞬間でした。しかし、そこからのパナソニックの対応は、私の想像を超えるものでした。
迅速かつ明確な回収プロセス
念のためリコール専用サイトで型番を確認してみても、該当機種は間違いなく回収対象でした。パナソニックの対応は、製造打ち切り後8年以内か否かで分かれます。
・打ち切り後8年以内:同等の代替品と無料で交換
・打ち切り後8年以上:1〜2万円程度での引き取り(返金)
「F-YHMX120」は前者の“無料交換”です。
火災事故のニュース翌日にあたる11月27日、Webサイトから回収を申し込みました。入力は型番と引き取り先を指定するだけで拍子抜けするほど簡単でした。
そして申し込みからわずか8日後の12月5日。ヤマト運輸によって、真新しい代替品と回収キットが届けられました。
「紙一枚」に宿る企業の姿勢
届いたのはただのモノだけではありませんでした。
同梱されていた回収グッズ(段ボール、封かんテープ、ポリ袋、着払い伝票)の至れり尽くせり感もさることながら、最も驚かされたのは「お詫びの手紙」でした。
手紙は事務的なコピー用紙ではなく、明らかに質の良い高級用紙に印刷されていました。「ご愛用のお客様へ」と題されたその文面は、単なる事務手続きを超えた、メーカーとしての深い謝罪と誠意をにじませる「ザ・日本企業」と言うべきモノでした。
リコールはマイナスな出来事ですが、そのリカバリーの瞬間にこそ企業の“顔”が見えるものです。手紙からは、顧客を字義通り「お客様」として扱おうという姿勢が見えました。
代替品「F-YHVX120」の実力
交換品として届いたのは、3年前(2022年)発売の「F-YHVX120」。実売価格5万5000円程度の製品です。
8年使い込み、ボディがすっかり黄ばんでしまった旧機種と並べると、新品のピカピカさがまぶしいです。機能面でも進化しており、ルーバーが2つに増えていました。左右でスイングの速さを変えて洗濯物を揺らし、乾きムラを抑える工夫がなされているそうです。もちろん代替品もメーカー保証付きでした。
余談ですが、代替品を巡るかわいそうな出来事も目にしました。ECサイトで業者によって代替品が“新品”として販売されていて、購入者が低評価をつけていました。製品そのものに罪はないのに、不届き者のせいで評価を下げられるのが気の毒でした。転売業者がめぐりめぐって損をしますように。
「ナショナル」の遺伝子を感じて
回収品の返送も極めてスムーズでした。わかりやすいA3の説明書通りに梱包し、集荷に来たヤマト運輸に手渡すだけ。迷う瞬間は一度もありませんでした。
一連の体験を通じて感じたのは、パナソニックという巨大企業のブランド力です。
日本の家電メーカーの多くが海外企業の傘下に入り、かつての輝きを失いつつある現代。発火の恐れという重大な不具合への対応ではありますが、そのスピード、丁寧さ、そしてユーザーへの配慮は、かつての“ナショナル”ブランドから脈々と受け継がれる矜持そのものだったように感じました。
不祥事は起こさないに越したことはありません。ですが、起きた後の振る舞いにこそ、そのブランドを信頼し続けてよいかの答えがあると感じます。
ピカピカの新しい除湿機が元気よく動く音を聞きながら、「やっぱり次もパナソニックにしようかなあ」と思ってしまったのは事実です。この誠実なブランド力が、これからも日本のモノづくりの良心として残り続けてくれることを願っています。









