アクセシビリティは「テックの実験場」になりうるか
インタビューの最後に、2003年からAppleに務め、20年以上アクセシビリティ領域で働いてきた原動力を尋ねると、ハーリンガー氏は次のように答えました。
「誰もが世界に貢献できる何か良いものを持っていると信じています。テクノロジーは、人々が最高の自分を引き出し、生産的で創造的になり、夢を実現するための手助けとなるべきです。テクノロジーは障壁ではなく、助けになるべきだと信じています。それが、人々が最高の人生を送れるような機能を作り続ける私の原動力です。」
この言葉は、企業としてのメッセージであると同時に、アクセシビリティをめぐる現在の状況を象徴しているようにも感じられます。
Appleの内部では、アクセシビリティがOSやインターフェースの実験場として機能し、新しいUIや機能が生まれる土壌になっています。
一方で、SFCの学生たちは、同じプラットフォームの上で、当事者の目線から別の問いを投げかけています。
・専用機器から汎用デバイスへの移行のメリットと、その影でこぼれ落ちるニーズ
・企業が用意するアクセシビリティ機能と、実際の生活空間で生じる「誤解」や「視線」の問題
・当事者が自らツールを作れる環境が整いつつあることの意味
アクセシビリティは、単に「弱者のための追加機能」ではなく、テクノロジーと社会の関係を映し出す鏡のような存在になりつつあります。
Appleの取り組みと、SFCの学生たちのラスト1cmの問題解決は、いま社会とテックの間で何が起きているのかを、具体的に見せてくれる事例だといえるのではないでしょうか。

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