慶應義塾大学SFC発の画像認識アプリ「ミエルサ」が示すもの
こうしたApple社内の動きと呼応するように、日本の障がい者を中心とした支援コミュニティもまた、Appleのテクノロジーを活用した環境改善に努めていました。
慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)では、障害や福祉、多様性と傲岸生(ダイバーシティ・インクルージョン)をテーマに活動するSFC学生の団体「SFC-IFC」が、キャンパスのバリアフリーマップ作成やイベント企画など、さまざまなプロジェクトを進めています。
その中から生まれたアプリのひとつが、画像認識アプリ「ミエルサ」です。
開発した杉山丈太郎さんは、SFCの学生であり、株式会社インフィニティーを起業して、20本近いアプリをApp Storeにリリースしている開発者でもあります。
ミエルサは、iPhoneで写真を撮ると、その内容を生成AIが100〜200文字ほどの文章にして説明し、必要に応じて読み上げてくれるアプリです。
「開発のきっかけは、生成AIの画像認識精度が一気に高まったことでした。キャンパスには弱視の学生も多く、暗い場所での表示や遠くの看板など、日常的な「見えにくさ」が存在します。その課題に対して、汎用のスマートフォンでどこまでできるかを試そうとしました」
最初のプロトタイプは、GPTのマルチモーダル機能の発表から1週間ほどで実装したと言います。
その後、同じキャンパスに通う弱視を持つ学生に実際に使ってもらうことで、ボタンの位置、画面構成、読み上げの挙動など、細かな改善点が見え、アプリがより便利なものへと進化していきました。
現在は、オンデバイスで処理するモードも追加され、通信環境やプライバシーに配慮した使い方にも対応し始めています。
このプロジェクトは、Appleが提供するSwiftUIやアクセシビリティAPI、そして生成AIの技術を土台としながらも、実際のデザインや運用方針は学生たちが主体的に決めている点が興味深いところです。
Appleが「アクセシビリティに対応しやすいプラットフォーム」を作ることで、その上で学生や個人開発者がどのような問題解決を試みるのか──という関係性が見えてきます。

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