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松村太郎の「アップル時評」ニュース解説・戦略分析 第322回

アクセシビリティは誰のため? Apple担当者と日本の学生に聞く、テクノロジーと社会の調和

2025年12月09日 07時00分更新

文● 松村太郎 @taromatsumura

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Liquid Glassデザイン刷新の裏にも、アクセシビリティチーム連携が

 アクセシビリティは、単一の部署だけで成立するものではありません。Appleの場合、OSやハードウェア、ヒューマンインターフェイスデザイン、カメラ、オーディオなど、複数のチームが絡み合います。

 日本ではAssistiveTouch(画面の中にタッチをアシストする機能を追加)の知名度が高い一方で、AirPodsの外部音取り込みモードやノイズキャンセリングのような音のデザインも、アクセシビリティの重要な要素です。こうした機能の連携について尋ねると、ハーリンガー氏は次のように説明します。

「はい、多くの要素で連携しています。AssistiveTouchのように、ある特定のコミュニティのために作った機能が、他の人々にとっても生産性や効率性を高める機能として人気が出るのは素晴らしいことです」

 今年はOSのデザインが大きく変更され、Liquid Glassのデザイン言語が採用されました。透明感あるガラスや有機的なアニメーション、視覚的なインタラクションの挙動が強まりました。こうした変更は、視覚過敏や乗り物酔いに近い症状を持つ人に影響する場合もあります。

 この点について聞くと、ハーリンガー氏は、デザインのプロセスとアクセシビリティについて、社内の体制に触れました。

「既存の機能として、『視差効果を減らす』『透明度を下げる』『コントラストを上げる』などが何年も前からOSに組み込まれており、新しいデザインになっても適用されます。また新しいヒューマンインターフェースを作る際も、ヒューマンインターフェイスチーム内のアクセシビリティ担当者が、障害のあるユーザーにとっても快適に使えるよう調整とフィードバックを常に行っています」

 実際に新デザインをどう感じるかはユーザーによって異なりますが、少なくともOSレベルでは「視覚的な演出を抑えるためのスイッチ」が以前から用意され、それが新デザインにも持ち越されている、というのがApple側の説明です。

 アクセシビリティ機能が、単なる「配慮」にとどまらず、新しいUIデザインの“安全弁”として組み込まれているとも言えます。

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