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5つのキー領域+フィジカルAI・宇宙・防衛技術に見る、企業向けテクノロジーの未来

富士通は「AI向けCPU」「量子コンピューター」でグローバルリーダー目指す 最新研究を一挙披露

2025年12月04日 08時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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ネットワーク:AIエージェントが障害対応を完全自動化

 ネットワークにおいては、独自LLMのTakaneを活用した、障害対応業務の自動化技術が紹介された。

 編成された専門エージェントが、散在するデータやナレッジを用いて、障害の対処までを完全自動化する。ルールベースの自動化と比べて柔軟に障害に対応でき、グループ会社である1Finityの「Network Coach インデントマネージャー」をベースとしている。

 2025年度の下期には、メールやチャットでのやり取りやマニュアルなどをエージェントが使える形で構造化する「メタデータ自動生成」を製品化。2026年度には、構造化されたデータ間の因果関係によりエージェントが動くための解析・対処フローを自動生成する「動的抽出型ナレッジグラフ」を商用提供予定だ。

障害対応業務の自動化ソリューション

オーケストレートエージェントの下で専門エージェントが障害対応を進める

人・ロボットの協働に向けたフィジカルAIと衛星データを顧客利用につなげる宇宙データオンデマンド

 最後に、開拓を進める新領域の技術だ。

 フィジカルAIにおいては、複数ロボットの高度な行動を実現するための「空間World Model」を発表している。人やロボットといった“物体”をベースに空間カメラとロボットカメラの情報を統合し、空間全体をリアルタイムで把握。そして、物体の相互作用の時系列データをモデリングすることで、物体の行動を予測する技術だ。

 イベントでは、固定カメラ3台と複数の犬型ロボットによる空間情報を統合して、禁止エリアに入ろうとする侵入者の行動を予測し、事前に防ぐデモが披露された。建設現場で重い物を運ぼうとする人にロボットが駆け寄るといった、「人とロボットの協働」にも寄与するという。

空間World Model

複数の犬型ロボットが侵入者を妨害する様子

 宇宙においては、顧客起点で衛星データを創出し、地上データを組み合わせた統合分析を実現する「宇宙データオンデマンド」の技術が紹介された。

 ひとつは、「衛星データ基盤」技術だ。衛星内におけるエッジコンピューティング技術であり、データ処理の消費電力を3分の1にまで低減させ、“準リアルタイム(10分以内)”の地上へのデータ送信を達成している。

 もうひとつの「大規模地理情報処理基盤」は、衛星データと産業データ、地理空間グリッドを統合する技術。例えば、湾内の混雑や港周辺の道路渋滞といった輸送リスクを高精度に予測できる。

宇宙データオンデマンド

グラフAI技術を地理空間に拡張し、コンテナの滞留などを分析、混雑解消を予測する

 最後は、マテリアルサイエンスとデバイステクノロジーを用いた、防衛と次世代通信の領域だ。ひとつは、見えない物体を見える化する「防衛向け常時広域監視システム」であり、独自の高感度・多画素な2波長赤外センサーを、防衛装備庁に提供しているという。

 もうひとつが「省電力ワイヤレス通信技術」だ。通信基地局の半分以上の電力がアンプで消費される中、独自の窒化ガリウムデバイスを用いて、FR3と呼ばれる6G候補周波数において電力効率70%を達成している。

防衛・次世代通信の技術

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