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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第852回

Google最新TPU「Ironwood」は前世代比4.7倍の性能向上かつ160Wの低消費電力で圧倒的省エネを実現

2025年12月01日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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Ironwoodの性能消費電力比はTrilliumの2倍
システム全体で1.77PBのメモリーを搭載する

 SuperPodの性能だが、同社の従来製品と比べて大幅に高速化されている。もっともピーク性能の比較にどの程度意味があるのかという疑問はあるわけだが、実際のベンチマーク結果などは今回示されていない。

ここまで性能が急拡大できたからこそ、MetaがNVIDIAのGPUの代わりにGoogle TPUを導入する話になったのだろう

 Ironwoodそのものは12月中に一般提供が開始されるという発表があったので、こちらで試して判断してほしいということだろう。

 またピーク性能における性能消費電力比も示されており、前モデルであるTrilliumの倍の性能消費電力比であるとされている。

正確には4616TFlopsであるので、ここから計算するとチップのTDPは157.5Wほどになる。これはかなり低い数字である(先にBlackwellの半分のピーク性能としたが、BlackwellのTDPは最大1200Wだから、ピークで比較すると8倍。つまり性能消費電力比はIronwoodがBlackwellの4倍良好になる

 おもしろいのは、後述するようにIronwoodは各チップに192GB(HBM3e 24GB Stack×8)を搭載し、システム全体では192×9216≒1.77PB(1,769,472GB)のメモリーが搭載されているのだが、このメモリーはユニークアドレスを持っている。

 構造としてはNUMAっぽいのだが、管理そのものはUMA的に行なうことも可能となっている。このあたりはおそらくプログラムから制御可能なのだろう。

複数のチップにまたがって処理を分散させる際のデータアクセスが便利……かどうかは、アドレスの割り当て方次第な気もする。仮想記憶のように連続したアドレスが割り当てられていれば楽だが、物理アドレスが直に見えている形ではハンドリングが大変な気もする。ただMMU的な機能はなさそうに見える

 このシステムは当然液冷である。ここで利用されるのは同社の第3世代の液冷システムだが、この話は別の講演になっているのでまた別の機会にしたい。

例えばIronwoodを1個160Wとして9216個だとそれだけで1474.6KWになる。もっともここには後述するCPUホストの分が加味されていないので、念のために倍にして3MWというあたり。実際にはボードの上にいろいろ載っているからもっと多く、ボード全体で4MW、それにネットワークスイッチ類を加味して5MWクラスだろうか。冷却システムそのものは1GWクラスまで耐えられるとしている

 チップそのもののスペックをまとめると下の画像になる。

動作周波数などプロセスなどは未公開。160Wで収まるのだから、相当低いと想像できる

 この画ではわかりにくいが、Googleが示した写真を見ると複数のダイから構成されるチップレット構成なのが理解できる。

こちらではまだチップレットの切れ目がわかる

 内部のレイアウト推定図が下の画像である。

SerDesチップレット両脇のものは、単にヒートスプレッダを載せる際にダイが欠けないようにするためのダミーシリコンと思われる

 ちなみにHBM3eの寸法が11×11mmなことから以下のサイズと推定できる。

Ironwoodのサイズ
Logic Chiplet 27.1mm×23.3mm=631.4mm2
SerDes Chiplet 27.1mm×5.1mm=138.2mm2

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