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サイコムがPCとPCパーツ、補佐委員の派遣で協賛

即戦力級の「パソコン組み立て」技術で世界を目指す!障害者技能競技大会(アビリンピック)の全国大会を見てきた

2025年11月16日 10時00分更新

文● ジサトライッペイ/ASCII 編集●ASCII

提供: 株式会社サイコム

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競技責任者の三木先生にインタビュー

 競技が終わったあと、「パソコン組み立て」競技の責任者である、国立職業リハビリテーションセンター(中央障害者能力開発校)の上席職業訓練指導員・三木寅太さんにお話をうかがう機会を得たので、今回の課題やその目的などを語っていただきました。

アビリンピック

国立職業リハビリテーションセンター(中央障害者能力開発校)の上席職業訓練指導員・三木寅太さん(左)と、サイコムの佐藤明さん(右)

――今回の「パソコン組み立て」競技の課題はどんなものだったのでしょう?

三木さん:今回の課題は、2027年の5月にフィンランドのヘルシンキで開催する国際大会を意識しました。一昨年はパソコン組み立て、昨年はパソコンAからパソコンBへの移行でしたが、国際大会で入賞するためにはハードウェアに加え、ソフトウェアの知識など、広範な知識が必要になるので、今回の課題はそのレベルに沿ったものにしました。

――なるほど。パソコン組み立てというと、PCパーツがバラバラの状態から組んで、OSインストール、ドライバーインストールで完成っていうイメージだったのですが、今回の競技はPCパーツの換装やソフトウェア的な設定が多かったように見えました。

三木さん:はい。今回の流れをおおまかにいいますと、メモリーやM.2のSSD、ビデオカードなどを複数種類用意しまして、選手のみなさんが仕様にあった形で選択して増設します。増設後はOSをインストールして、ネットワークを設定。その後、LAN内にあるサーバーにアクセスして、必要なドライバーソフトウェアをダウンロードしてインストールするという流れですね。

――課題のパソコンの用途はなんだったんですか?

三木さん:今回はVRシステム、もしくはAIの自動運転システムを開発するといったような用途を想定しました。ですので、たくさんある画像をAIで処理できる性能が必要になります。

――選手のみなさんは複数のドライブをいじっていたのですが、あれはどんな目的だったのでしょう?

三木さん:それも課題の1つで、実際のドライブとしては旧来のHDDと今回増設するM.2 SSDがあるんですけども、それぞれにドライブ文字をこちらの指定で割り振ってもらうという課題でした。

――ほか、ケーブリングやCPUグリスを塗布しているシーンも多く見受けられました。

三木さん:それも課題でした。お客さんの手元に届くパソコンを想定しますと、やはりケーブルはきれいに整える必要がありますし、グリスは塗り直してきちんとCPUを効率良く冷却できるようにしなければなりませんから。

――今回の競技はサイコムさんの協賛ですが、いかがでしたか?

三木さん:まず、今売られてる最新パソコンと同等レベルのスペックという点がいいです。スペックが古いとイマドキの課題に対応できない場合もありますので。あと、メモリーとSSD、ビデオカードもサイコムさんにご提供いただけてありがたかったです。

――PCパーツは同じジャンルでも複数種類ありましたが、やはりあれも課題の一環だったのでしょうか?

三木さん:はい。要はパソコン知識を測るために複数種類用意しました。1つだけにしてしまうと課題にならないですし。でも、そうなると今回のサイコムさんのようなフルバックアップがなければ、結構予算かかるんですよね。しかし、世界大会を目指す問題レベルにするにはやっぱりどうしても今回のような準備が必要になります。一昨年は最初から1台組む。去年はパソコンAからパソコンBに移行するっていうテーマでやりましたが、今回はもっと実際の現場のような課題にしたかったのです。

――そうなんですね。まさにサイコムさんの組み立て工場でも同じような作業をしていますよね。そういった意味では、かなり実践的だったように思います。

三木さん:今回はWindowsのほかに、Ubuntuをインストールしたり、仮想環境を作ったり、そのためにBIOSから仮想機能を有効にしたり、ネットワーク設定をそのまま移さないとWi-Fiにつなげないようにしたりなど、実践的な課題を多くしました。

――今回の全国アビリンピックは次の国際大会の予選を兼ねた大会だったわけですが、何名が進出するかは決まってるのでしょうか?

三木さん:基本的に日本代表は1名ですね。あと、選手の強化委員としてスタッフがヘルシンキ大会に同行する予定です。

――狭き門なのですね。一昨年、去年、今年と国際大会に向けて課題がどんどんレベルアップしてるような印象を受けましたが、来年もさらに難しくすることはありますか?

三木さん:選手のみなさんには競技後にアンケートをとったのですが、難しかったという意見が多かったので、そのあたりを考慮しながら決めようと思っております。ただ、やはり国際大会で優勝するためには、今回のレベルぐらいはできないとってところはありますね。

――なるほど。全国アビリンピックもそうですが、国際大会で優勝すると、その方の就業の選択肢が増えると思うのですが、そういったことも意識した課題を作られてるのでしょうか?

三木さん:そうですね。ただパソコンを組み立ててOSを入れるだけではなくて、それにプラスアルファで実践的な技能とか知識を持っていると、就労の幅は非常に広がると思っております。

――パソコン組み立て競技は予算がかかりそうですね。この競技は地方予選が少ないのもそのあたりの事情がかかわっているのでしょうか?

三木さん:はい。ですので、今回のサイコムさんの協賛は大変ありがたく思っております。

――今回は大変勉強になりました。貴重なお話ありがとうございました。

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