ファッションから衣料まで、着実に広がるAIコードアシスタントの活用事例を披露
「大げさではなく、Copilotは人命を救っている」 GitHub年次イベントで多数の事例紹介
2025年11月04日 11時00分更新
Microsoft傘下のGitHubが、AIコードアシスタント「GitHub Copilot」を発表したのは2021年のことだ。そのCopilotを活用して開発効率を改善している事例が、同社が10月28日から2日間、米国で開催した年次ユーザーカンファレンス「GitHub Universe 2025」で披露された。
GitHubは、ソフトウェア開発プラットフォームであり、オープンソース(OSS)のホスティングで知られるが、実際の用途は幅広い。GitHubのユーザー数はなんと1億8000万人に及び、リポジトリの数は6億3000万、そのうち1億2100万が今年新たに追加されたものだという。
よく知られるとおり、ソフトウェア開発における目下のトレンドは「AI」だ。開発対象としても開発を支援するものとしても、AIの影響は大きい。開発支援の観点からは、コード作成をAIにより支援/自動化するAIコーディングがある。
GitHub Copilotがテクニカルプレビューとして公開されたのは2021年6月のこと、OpenAIの「ChatGPT」が公開される前だ。市場で初のAI開発ツールとして、主には開発者によるコーディング中の「コード補完」機能を売りにしていた。
その後、AIコーディング分野にはAnthropicの「Claude Code」、OpenAIの「Codex」などが登場し、アプローチは異なるが「コーディングエージェント」と呼ばれる市場も立ち上がっている。
今回のGitHub Universeでは、新たに「GitHub AgentHQ(」というサービスが発表された。これは、あらゆるエージェントを単一のプラットフォームに統合するもので、Anthropic、OpenAI、Googleなどが提供するコーディングエージェントにも対応する戦略だ。
英国のファッションEC企業、「3カ月」の開発期間をCopilotで「11日」に短縮
基調講演では、GitHubで開発者リレーション担当VPを務めるマーティン・ウッドワード氏が、Copilotの事例を紹介した。
1社目に紹介されたのは、英国ロンドンを拠点に、200以上の市場で8万5000点の商品を販売する、オンラインファッション小売大手のASOSだ。
ASOSのエンジニア、ディラン・モーレー氏は、AIによる開発支援は「段階的に導入を進めるアプローチ」が重要であることを強調した。GitHub Copilotの導入にあたっても、「すべてを一度に変えようとしない」戦略を採用したと話す。
大規模な組織では、ツールの統合やトレーニングの展開には時間がかかる。そこでASOSでは、まず「“退屈な作業”にCopilotを使う」ところからスタートすることにした。具体的には、ドキュメントの更新、テストの追加、反復的なワークフロー実行、小さなバグ修正などの作業だ。派手さはないものの、確実に時間を節約できるという。
こうしたアプローチを通じて継続的な改善を進め、組織全体でCopilotへの信頼を確立することに成功した。加えて、「導入の敷居が低かったこと」「導入後、各チームがすぐに価値を実感できること」も重要だったと語る。
具体的な成果としてモーレー氏が紹介したのは、在庫トランザクションの欠落や不一致を追跡する内部ツールの開発プロジェクトだ。これまでは内部ツール、特に管理画面の開発には、数カ月を要していた。開発の優先度は高くないと思われがちだが、実業務への影響は大きく、「チームメンバーが手作業でデータを調査する必要があり、本来の業務時間を圧迫していた」と振り返る。
開発スタート前には「3カ月かかる」と見積もっていたが、Copilotを活用した結果、チームはわずか「11日間」で堅牢なソリューションを開発させた。
モーレー氏によると、このツールは「Reactフロントエンド、.NET API、SQLデータベースを含むフルスタックアプリケーションであり、複数のデータソースからデータを統合する設計」だという。開発成果の1つが、バックエンドエンジニアが、Copilotの支援と再利用可能なプロンプトを活用して、Reactのスキルを向上させた点だ。「Copilotの強みは、開発者が不慣れな技術コンポーネントをナビゲートする支援にある」(モーレー氏)。
開発時間に余裕ができたことで、チームは品質チェックやテストに十分な時間をかけられるようになった。その結果、基本機能だけでなく、「以前ならば優先度が低く実装されなかった」ような便利な機能も追加できた。全体を通じて、本来注力すべき価値の高い業務に時間を使えるようになったという。
ASOSでは今後も、Copilotを活用した新たなユースケースを進めるほか、事前に指示を設定できる「VS Code」のカスタムインストラクション機能にも期待しているという。











