分かってきたら面白い、これまでのデータセンターとの明らかな違い
AI時代のデータセンター、どこが違う? 3社の実例からトレンドを探る
2025年10月09日 11時50分更新
オプテージ:“都市型DC+地方DC”ハイブリッド構成でコストと品質を最適化
関西電力グループの通信事業者、オプテージ(OPTAGE)では、福井県の美浜町にAIデータセンターの開設計画を発表している。サービス提供開始予定は2026年度中だ。
オプテージのコンテナ型AIデータセンター(出典:オプテージ)
まず、安定した電源確保という面では、美浜町には関西電力の美浜発電所があり、電力調達が比較的容易な環境にある。先ほどと同じく“地産地消型”だ。
オプテージのAIデータセンターのユニークな点は、同社が2026年1月に大阪市内で運用を開始する「曽根崎データセンター(OC1)」と自社光ファイバー網で接続されており、2つのデータセンターとネットワークのサービスをワンストップで提供できる点だ。
都市型DCの「OC1」と光ファイバー網で接続されており、AIインフラ全体のワンストップ提供が可能(出典:オプテージ)
ここには「データセンターを適材適所で使い分ける」というトレンドが反映されていると言ってよいだろう。大量の電力を消費するAIモデルの学習処理は、電源地近くの低コストなAIデータセンターで行う一方で、処理は軽量だが低いレイテンシ(遅延)が求められる推論は都心のデータセンターで実行する。こうしたハイブリッド戦略をとることで、コストとサービス品質の最適化につながる。
そのほか、AIデータセンターのトレンドに合致した部分としては、「コンテナ型データセンターの採用」が挙げられる。建屋を建設する場合と比べて、コンテナ型ならば大幅に短い工期で運用が開始できるほか、ユーザーのAI/GPUニーズの増加に合わせて小さな単位で規模を拡大していくことができるメリットがある。
なおオプテージでは、美浜町AIデータセンターの発表後、GPUクラウドプロバイダーの米GMI Cloudとの戦略提携も発表している。GMI Cloudは、顧客専有型(ベアメタル)と共有型(コンテナ仮想化)の両方に対応した、従量課金型のGPUクラウドサービスを提供している。オプテージとの提携を通じ、日本リージョン開設に向けた検証を、NVIDIA B200搭載GPUサーバーを用いて行うとしており、将来的にはオプテージのAIインフラを利用したサービスの展開が期待される。
日立グループ:送配電機器も含む幅広いDC事業者向けソリューションを展開
日立グループは、横浜や岡山を主要拠点として全国にデータセンターを展開しており、ユーザー企業向けにデータセンターサービスを提供している。ただしその一方で、データセンター事業者向けに、エネルギーやファシリティ、IT運用に関連する製品/サービスを提供する立場でもある。
データセンター事業者向けのソリューションとしては、用地や建設のコンサルティングから、高圧送電/受変電/蓄電設備、無停電電源装置(UPS)、冷却設備、IT機器(サーバー/ストレージ/ネットワークなど)、物理/サイバーセキュリティシステム、運用サービスまで、日立グループの総合力を生かして幅広く提供している。
AIデータセンターのトレンドという観点で考えると、データセンター事業者ではエネルギー需要の高まりから、変圧器などの送配電機器に対する需要が急増しているという。データセンター向け電力ソリューションを提供する日立グループのHitachi Energyでは、今年9月、10億ドル超の大規模投資を行い、米国バージニア州で変圧器工場を新設するほか、全米各地の工場を大幅に拡張する計画を発表している。
また10月には、米OpenAIと日立との間で戦略的パートナーシップのMoU(基本合意書)が取り交わされた。このパートナーシップでも、日立はOpenAIが構築するAIデータセンター向けに、送配電設備や空調技術を提供していく役割を担う。
AI/GPUニーズを満たしながら環境負荷を抑える「グリーンデータセンター」のトレンドに対しても、日立グループはハードウェアからソフトウェア、コンサルティング、運用サービスまで豊富なソリューションを持つ。
「グリーンデータセンター」のトレンドに対するソリューションも(出典:日立製作所)
また、AIデータセンターのコンポーネントとして、日立システムズがコンテナ型データセンターを提供している。3つの標準モデルのうち、1つはDLC(チップ直接液冷)に対応した「高負荷サーバーモデル」となっており、コンテナ2棟で800kWのIT負荷に対応する。電源設備や空調設備だけでなく、リモートから無人点検が行えるロボットを標準搭載している点がユニークだ。
* * *
今回取り上げられなかったAIデータセンターのトレンドとしては、エッジAIデータセンターやMEC(マルチアクセスエッジコンピューティング)が挙げられるだろう。自動運転車やスマートシティ、スマートファクトリーといったAIの適用領域では、データが生成される場所のそばでリアルタイムのAI推論処理が求められる。今後、どのように実装されていくのかに注目しておきたい。

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