リコーイメージングはハイエンドコンパクトデジタルカメラGRシリーズの最新モデル「RICOH GR Ⅳ」を8月21日に発表、9月12日に発売する。
価格はオープンで、市場想定価格は19万5000円前後。抽選販売方式を取っており、GR SPACE TOKYOとオンラインのリコーイメージングストアで抽選を受け付けている。なお35mm換算で約40mm相当のレンズを搭載した「RICOH GR Ⅲx」(2021年10月発売)は継続して販売される。
5月の開発発表以降、詳細なスペックが明かされてこなかっただけに、どんな点が新しくなっているのか気になっているユーザーも多いことだろう。
発売前のサンプル機をリコーからお借りできたので、気になるGRⅢとの違いや進化点を中心に紹介していこう(サンプル機のため製品版とは異なる場合があります)。
同じ28mmながら新レンズを搭載
高感度・低ノイズの裏面照射型CMOS採用
GRⅣは従来モデルのGRⅢ(2019年3月発売)の登場から6年半ぶりのフルモデルチェンジとなる。GRシリーズの基本コンセプトである高画質・速写性・携帯性といったカメラの本質的な価値を継承しながら、イメージセンサーや画像処理エンジン、レンズなどの主要デバイスを一新した。
GRⅣは新開発の18.3mm(35ミリ判換算28mm相当)、F2.8のGRレンズを搭載する。
焦点距離はGRⅢと同じだが、4群6枚構成(非球面レンズ2枚)から高屈折率低分散ガラス、ガラスモールド非球面レンズを適切に配置した5群7枚構成(非球面レンズ3枚)になっており、最終レンズには大型の高精度ガラスモールド非球面レンズを追加して、高性能化と薄型化を両立した。
レンズ部の厚さで見ると、33.2mmから31.3mmと約2mmの薄型化を実現した。ボディサイズは約109.4×61.1×32.7mm(操作部材、突起部を除く)で、GRⅢの約109.4×61.9×33.2mmよりもわずかに小型化を達成している。見た目ではやや分かりにくいボディの薄さだが、フォールディングした時に「薄くなった」と違いを感じることができる。
イメージセンサーはAPS-Cサイズ相当で、有効画素数約2574万画素の裏面照射型CMOSイメージセンサーを採用する(GRⅢは約2424万画素)。
またイメージセンサー前面に設けられているUV・IRカットフィルターも新規に開発されたものになった。長波長側の透過率を高めてR画素への入射光量を増やすことで、色再現性の向上も図られている。アスペクト比は3:2と1:1に加えて4:3と16:9も選べるようになっている。
画像処理は「GR ENGINE 7」に
最高感度はISO 20万4800を実現
画像処理エンジンは「GR ENGINE 6」から「GR ENGINE 7」へと進化した。処理速度が高速化したことで、AFをはじめとするカメラのレスポンスも向上している。
新開発のレンズ鏡胴や起動シーケンスの最適化なども加わって、GRシリーズで最速となる約0.6秒の高速起動を実現する。マクロモードへの切り替えやレンズ収納時間も高速化されている。
またレンズ駆動の高速化と新型イメージセンサーによる高速読み出しにより、AF速度もアップ。AF精度も向上も図られている。
高感度・低ノイズが特徴のイメージセンサーと高速処理を可能にする画像処理エンジン「GR ENGINE 7」により、ISO感度は100~20万4800でGRⅢの最高10万2400から1段分高感度側が広がっている。独自のプロセッサーであるアクセラレーターユニットが、データを最適化して「GR ENGINE 7」へと送るようになっている。
バッテリーは専用の大容量充電式リチウムイオンバッテリー「DB-120」を採用する。従来の「DB-110」よりも大容量になったことで、撮影可能枚数はGRⅢの約200枚・再生時間約180分から、約250枚・約240分にアップした。USB Power Deliveryに対応に対応していて、ACアダプターは別売となっている。
記録メディアはmicroSDカード(microSDHC、microSDXCメモリーカードは UHS-I規格に対応)を採用するほか、約53GBの内蔵メモリーを搭載する。
GRⅢの内蔵メモリー(約2GB)はあくまで補助的なものという印象だったが、静止画の最大記録サイズが26MB(アスペクト比3:2・Lサイズ)であることを考えると、約53GBの内蔵メモリーは十分実用的な容量だ。
またBluetooth5.3とWi-Fi6の無線LANのデュアル通信に対応しているので、本体記録だけでなく撮影データをスマートフォン等に転送して保存することも可能だ。
microSDカードは頻繁に抜き挿しするメディアとしては扱いにくいので、内蔵メモリーやデータ転送をうまく利用したい。
最大6.0段の5軸手ブレ補正を搭載
操作系を見直し背面レイアウトも刷新
独自の手ブレ補正機構「SR(Shake Reduction)」では、従来の角度ぶれ(ヨー、ピッチ)と回転ぶれに加えて、シフトブレを補正する5軸の手ブレ補正を搭載する。
補正アルゴリズムを見直すことにより、補正効果はシャッター速度換算で、GRⅢの3軸4段から、最大6.0段(中央6.0段、周辺4.0段・CIPA2024規格準拠)まで高められている。シフトブレは近接撮影の際に特に気になるだけに効果に期待したいところだ。
正面からでは違いがよくわからないGRⅢとGRⅣだが、背面の操作系は大きく変わっている。
露出補正ボタンがグリップ背面に設けられており、再生ボタンはその下に位置するようになっている。グリップは背面側もやや張り出してホールド感が高められている。
グリップに露出補正ボタンが設けられたことで素早く露出を変えられるのは便利だが、しっかりホールドしようとするとボタンが押されてしまうことが何度もあった。
GRⅢでは露出補正などの機能を設定できたADJ. /露出補正レバーはダイヤル式に変わって、エンドレスで回転させることができるようになっている。
また十字ボタンの周りに設けられていたコントロールダイヤルは廃止されており、その分十字ボタンが大きくなっている。
液晶モニターは3.0型TFTカラーLCDでサイズは変わっていないものの、アウトドアモニター機能に使用環境に合わせてモニターの明るさを自動調整するオート機能が新たに搭載されている。
新しくスナップモードを搭載
イメージコントロールに「シネマ調」
「Sn(スナップ撮影距離優先AE)モード」が新たにモードダイヤルに追加されている。設定したスナップ撮影距離と被写界深度を組み合わせて奥行きにこだわった表現が楽しむことができるモードだ。
また前電子ダイヤルを回せば「絞り優先AE」、後電子ダイヤルを回せば「シャッター速度優先AE」に瞬時に移行できる「プログラムオートEx」機能も新たに搭載された。
仕上がり調整機能「イメージコントロール」には「シネマ調(イエロー)」、「シネマ調(グリーン)」が追加された。往年のフィルム映画のような重厚感のある画作りが可能になっている。
また画像を調整するパラメーター(彩度、色相、キー、コントラスト、粒状感)の「粒状感」に「強度」に加えて「サイズ」が追加されたことで、より粒状感を強調した表現が可能になった。調整した内容は、「カスタム」としてイメージコントロールに追加することが可能だ。
「粒状感」を強度とサイズで調整することができるようになったことで、よりフィルムっぽい仕上がりにできる。プリントしたらどうなるのかが気になる。絞りF4・シャッタースピード1/15秒・ISO12800・+1.7EV補正
夕暮れ時の雰囲気を描きつつ、各色がきれいに再現されている。画面周辺部の文字もしっかり描写できている。クセがなくて抜けのいいレンズだ。絞りF5.6・シャッタースピード1/25秒・ISO12800・+1.0EV補正
起動や合焦の速度が速くなってレスポンスが良くなったので、撮りたいシーンで素早くシャッターが切れるのが心地いい。映画のワンシーンのようなイメージにもできるのでいろいろ楽しめそうだ。絞りF2.8・シャッタースピード1/30秒・ISO500・イメージコントロール:シネマ調(グリーン)
GRⅣ用小型フラッシュ
「GF-2」も試してみた
GRⅣと同時発表の小型フラッシュ「GF-2」は、ガイドナンバー3(ISO100・m)の外部フラッシュで、価格は1万8040円、9月12日発売だ。
GRⅣ装着時には自動調光が可能で、ISO AUTOに設定すると被写体距離に応じてフラッシュのガイドナンバーとISO感度をカメラ側で制御する自動調光撮影に対応する。
照射角度は上下照射角47°、左右照射角66°で焦点距離18mmの画角をカバーする(ワイドコンバージョンレンズには非対応)。
充電式のリチウムイオン電池を内蔵しており、USB Type-C端子を利用して充電が可能だ。発光間隔は約2秒で、フル充電時約270回の発光が可能。
なおGRⅣとX接点以外の端子の配置が異なるカメラ(従来のGRシリーズを含む)に装着した場合なフル発光のみとなっているが、GRⅢ、GRⅢxシリーズにはフラッシュ撮影時の露出を自動変更する機能拡張ファームウェアが10月頃に公開される予定になっている。
軒下に停められていたバイクをフラッシュなし(この写真)とフラッシュあり(次の写真)で撮影した。背景を暗く落として金属の質感を強調したい場合には、フラッシュが効果的だ。フラッシュなし:絞りF5.6・シャッタースピード1/30秒・ISO12800































