「Google Cloud Next」基調講演で語られたAI最新事例のまとめ
“GoogleのAI”で働き方を変える日本企業 MIXI・メルカリ・博報堂のGemini・Google Agentspace実践例
Google Cloudは、2025年8月5日と6日、年次イベント「Google Cloud Next Tokyo 25」を開催した。
初日の基調講演は、GoogleのAIモデルやGoogle CloudのAIプラットフォームを活用して、いかにAIエージェントを構築するかが主なテーマとなった。Google Cloudの日本代表である平手智行氏は、「“AIエージェント元年”を迎えている。自律的に思考と判断を繰り返し、検索から実行まで一気通貫にこなすAIエージェントは、生成AIを業務に深く組み込むための鍵となっている」と強調した。
本記事では、基調講演にゲスト登壇したMIXIやメルカリ、博報堂による、Google AgentspaceやGeminiなどのAI活用事例をレポートする。
MIXI:3つのステップで進める“Google Agentspace”の導入
MIXIは、2025年7月31日に一般提供が開始されたばかりの「Google Agentspace」の導入事例を披露した。
Google Agentspaceは、企業内の情報を統合して、AIエージェントによる横断検索や活用を実現するプラットフォームである。事前構築されたコネクタによって、Google WorkspaceやBigQueryなどのGoogle Cloudのサービスだけではなく、主要なSaaSサービスとのデータ連携も可能だ。
今後、Google Agentspaceは日本リージョンでの提供も予定されている。そして、同サービスを日本企業で初めて大規模導入したのがMIXIだ。
「“心もつながる”場と機会の創造」を企業ミッションとするMIXIでは、AIを様々なサービスに取り入れてきた。MIXIの代表取締役社長 上級執行役員 CEOである木村弘毅氏は、「私たちは、AIという新たな技術の波を、最高のコミュニケーションサービスを生み出すための大きなチャンスと捉えている」と語る。
もちろん、業務効率化においても積極活用しており、社員のAIスキル向上とAIプラットフォームの整備を進めてきた。「楽しいコミュニケーションを届ける企業として、クリエイティブな仕事にこそ時間を使いたい。クリエイティブとは真逆の管理業務をAIで自動化して、『驚きを生むサービスの創造』に充てたい」と木村氏。
こうした中で、MIXIでは2025年7月、Google Agentspaceを全社導入した。
他の生成AI基盤も活用する中、新たに同サービスに投資した理由は、これまでGoogle WorkspaceやBigQueryなどのGoogle Cloudサービスに企業データを保存してきたこと、そして最優先すべき生成AIモデルが提供されていることだという。「AIを差別化要素にしていくには、MIXIがもつ固有のデータとの組み合わせが不可欠。合理的にデータ活用できるプラットフォームこそがビジネスの根幹を支えられる」(木村氏)
MIXIでは、3つのステップでGoogle Agentspaceの導入を進めているという。
最初のステップは「社内情報検索の統合」だ。社内のあらゆる情報を横断的に検索できるよう、Jiraなどのサードパーティ製品と連携していく。次のステップは「社内AIエージェントの集約」。既に開発している社内AIエージェントを、Google Agentspaceに集約させ、従業員がワンストップで利用できるようにする。最後は「自律連携AIによる業務支援」だ。将来的に、Agentspaceに集約された複数のAIエージェントが自律的に連携し、能動的に業務支援する世界を目指していく。
Agentspaceを活用してマーケティングコンテンツを生成するデモも披露された。AIエージェントが過去のキャンペーンを可視化して、それらを基に新たなアイディアを提案。さらには、クリエイティブ画像を生成して、これらの結果をレポートにまとめる。こうしたAIエージェントとの協働が実際に始まっているという。
メルカリ:カスタマーサポートにおける“言語と時間の壁”を解消
メルカリは、「Customer Engagement Suite with Google AI(以下Customer Engagement Suite)」による、顧客体験の変革を紹介した。これは、顧客向けの対話型エージェントやオペレーター向けのエージェントアシスタント、管理者向けの会話インサイト&品質AIを組み合わせた、顧客エンゲージメントをAIで推進するためのプラットフォームである。
フリマアプリを中心に事業を展開しているメルカリは、これまでも「出品時のサポート」や「自動違反検知」など、サービスの使い勝手や安心感を高めるためのAI機能を実装してきた。同社が次のステップとして注力するのが顧客接点、特にカスターサポートにおけるAI活用である。
メルカリの執行役員 CTO Japan Businessである木村俊也氏は、「カスタマーサポートの課題であった“言語と時間の壁”をAIで解決していく。24時間365日、誰もが適切なサポートを得られる世界を実現したい」と説明する。現在導入を進めるCustomer Engagement Suiteによって、「エージェントによる24時間のサポート」「即時対応と有人チャットへの連携」「リアルタイム要約による回答候補や感情分析」といった、新しい顧客体験やオペレーターの業務効率化を目指している。
木村氏は、Customer Engagement Suiteを採用した理由を3点挙げる。
ひとつ目は、GoogleのAIテクノロジーを最大限活用していること。2つ目は、モジュール単位での柔軟なカスタマイズが可能で、自社開発のカスタマーサポートツールとの接続が容易なこと。3つ目は、社内活用しているGoogle Cloudのインフラとシームレスに連携することだ。「新しいサポート体験を“サービスの一部”として自然に組み込むための基盤になると確信している」と木村氏。
実際のカスタマーサポートにおけるデモも披露された。顧客側では、対話型エージェントが取引に合わせた問い合わせ内容の候補を提示して、それを解決するFAQなどを案内。追加のサポートが必要な場合には有人オペレーターにエスカレーションする。そして、オペレーター側では、エージェントアシスタントが、顧客の感情を数値化しつつ、回答案を自動生成。解決後には、顧客とのやり取りを要約する。この仕組みは多言語に対応しており、世界中からの問い合わせを1拠点で対応できるようになるという。
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