このページの本文へ

前へ 1 2 3 4 次へ

新清士の「メタバース・プレゼンス」 第118回

AIの「ASMRボイス」に脳ゾワゾワ 合成音声の進化と、収益化への課題

2025年08月04日 07時00分更新

文● 新清士

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

「ASMRボイス」合成音声でも脳ゾワゾワ

 ところで、脳をゾワゾワさせるような音声であるASMRボイスでは、AI合成音声でも、それなりに聞ける水準に達しています。VOICEVOXで使用できる何人かのキャラクターには「ささやき」音声があります。

 ASMRの台本をChatGPT-4oに作成してもらい実際に作成してみました。使用した声は「九州そら(ささやき)」です。もちろん、人間が実際に出している音声に比べると、不自然さはあるのですが、イヤホンを付けてその音声でボイスを再生すると、特有のゾワゾワ感を感じることができます。AIの音声は、人間の代替水準には達しているとはとても言えませんが、人間の感覚を十分に刺激できる水準に達しているとは言えます。

△VOICEVOXでのASMRデモ

技術は競争激化 人間との棲み分け、収益化が課題に

 AI合成音声分野は、競争の激しい分野でもあります。メジャーな存在としては、米Eleven Labsがあり、日本へも進出してきています。すでにTBSと連携し、海外に配信する日本の実況系番組のナレーションを英語化したりするのに利用されています。

 また、グーグルの「Gemini speech generation」も日本語に対応し、すでにナレーション分野ではその強力さが認識されつつあります。

 その利用の容易さから、気がついたらAI合成音声が使われている場面は、今後も増えていくと思われます。一方で、現実の人間の声とどのように棲み分けしていくのか、支持されるビジネスモデルはどのようなものかは、まだまだ模索中とも言えます。

 

筆者紹介:新清士(しんきよし)

1970年生まれ。株式会社AI Frog Interactive代表。デジタルハリウッド大学大学院教授。慶應義塾大学商学部及び環境情報学部卒。ゲームジャーナリストとして活躍後、VRマルチプレイ剣戟アクションゲーム「ソード・オブ・ガルガンチュア」の開発を主導。現在は、新作のインディゲームの開発をしている。著書に『メタバースビジネス覇権戦争』(NHK出版新書)がある。

前へ 1 2 3 4 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事
ピックアップ