AWSジャパンが語る2025年度の中堅・中小企業向け事業戦略
中堅・中小企業のクラウド移行が生成AI活用で加速 AWSを使った3社のAI実装例
2025年07月24日 07時00分更新
Qualiagram:“接客ロールプレイング”から段階的にAI実装を進める
続いて登壇したのはQualiagram。店頭接客の支援を手掛けるピアズの子会社であり、ピアズの蓄積してきたノウハウを活かして、最新テクノロジーを活用したサービスを展開している。
同社の提供するAIサービスはすべて、Amazon Bedrockを基盤に開発されている。Qualiagramの代表取締役である吉井雅己氏は、Bedrockについて、「学習データを外に出さずに内部で完結でき、セキュリティ面で利用しやすい。他社と比べてもLLMのコストに差がなく、AWSサービスとの連携も容易」と評価する。
同社のサービスは接客の現場で活用されるものであり、「いきなりAIが人の代わりをするのは、ハルシネーションの問題など課題が多い」ため、段階的にAI実装を進める方針をとっているという。「(AIの役割は)まずは人の教育サポートから始め、接客支援を経て、最終的にはAI自身が接客をするというステップを意識している」と吉井氏。この最初のステップとして開発されたのが、AIによる接客トレーニングサービスの「mimik」だ。
このサービスは、お手本となる対話データを基にした接客の基礎習得(“型化”)から、顧客AIとの対話によるロールプレイング、AIによるフィードバックまで、接客トレーニング全体を効率化するプラットフォームとなっている。
その他にも、オンライン接客基盤とBPO、AIによる接客支援を組み合わせた「ONLINX+」を提供したり、コールセンタースタッフを代替する「AIスタッフ」を開発するなど、次のステップに向けたAI実装も推進していると紹介した。
やさしい手:自社の介護業務効率化から、業界変革を目指す外販まで
最後の登壇企業は、在宅介護サービスを手掛ける、やさしい手だ。団塊の世代が後期高齢者となり(2025年問題)、介護人材は全国で43万人不足していると言われる。そんな中、同社が開発したのが、介護現場の情報共有と業務効率化を推進する「むすぼなAI」である。
このサービスは、現場職員の「生成AIで解決できるのでは?」という思い付きから生まれている。従来、家族向けと専門職向けに手書きで作成していた2種類の看護記録を、生成AIで自動生成する仕組みを構築。非エンジニアによるプロジェクトチームが、わずか1か月で開発し、2024年6月から業務活用をスタートした。
その後も機能拡充を続け、約4か月で3000人の社員が日常利用するまで定着化が進んだ。そして2024年10月には、むすぼなAIとして外販を開始。加えて、2025年11月には、質問に答えていくだけでケアプランが生成される「ぷらまどAI」もリリース予定だ。
生成AI活用の成果も劇的だった。同社における記録業務は83%(月間800時間)削減され、計画書や報告書、資料の作成時間も大幅削減。それに伴い、直接ケアの時間が25%増え、離職率も前年同期比で15%改善するなど、人材定着にもつながっている。
やさしい手の代表取締役社長である香取幹氏は、非エンジニアで内製開発が進められた背景には、さまざまなユースケースをまとめた生成AIアプリケーション「Generative AI Use Cases JP(GenU)」の存在があったと語る。オープンソースかつドキュメントが豊富で、業務にあわせたカスタマイズも容易であったという。さらに、AWSジャパンの生成AI実用化推進プログラムによる支援も活用した。
「今後も、AWSジャパンとの連携を通じて、生成AI導入にとどまらない、介護に特化した実践可能かつスケーラブルな生成AIソリューションとして、着実に進化させていきたい」(香取氏)













