LINE WORKS DAY 2025レポート
「紙だからムリ」をなくす、LINE WORKSの新たな文書処理ソリューション「PaperOn」
2025年06月20日 09時00分更新
2025年6月10日、LINE WORKSが主催する年次ビジネスカンファレンス「LINE WORKS DAY 2025」が開催された。今年はLINE WORKSの創立10周年という節目を迎え、「GO NEXT!」をテーマに、次の10年に向けた新たなスタートを切るイベントとして開催された。
会場では、LINE WORKSや協賛企業のブースが出展し、多数の講演が行われた。今回は、その中から、「“紙だからムリ”を変える。LINE WORKSが支える、現場の文書業務改革」のレポートを紹介する。
まだまだ残る紙文化のために使われる時間をなくしたい
日本では1990年代からペーパーレス化やEDI(電子データ交換)の取り組みが進められてきた。この30年で紙の量は大きく減少したものの、今なおオフィスに紙が積み上がっている光景は珍しくない。
問題は、紙が残っているだけでなく、日々の業務の中で新たな紙が絶えず発生していることだ。請求書や見積書はもちろん、製造現場では製造日報や品質検査成績表など、業界・業種に応じて多種多様な帳票が今も使われている。そして、様々な業務でこれらの文書のデータ入力作業が行われている。LINE WORKSでは、社内の至る所で発生しているこれらの業務を総称して「文書処理業務」と呼び、その課題解決に挑む。
例えば、小売企業の事例では、毎月1200枚ものFAX注文書が届いていた。まず現場担当者がFAX注文書を受け取りスキャンし、それをバックオフィスの担当者に連携する。バックオフィスの担当者は、その内容を独自の販売管理システムに手入力で登録していく。顧客情報や注文内容、営業担当者から聞いた付帯情報などを入力し、ようやく登録が完了するという業務フローになっている。
しかし、手入力にはミスが付き物だ。そのため、別の担当者が入力内容をすべてチェックするダブルチェック体制を敷いていた。この結果、注文書1枚の処理に10分を要し、4名体制で月に200時間もの時間がこの業務に費やされていたという。
「1つの商談の準備と実施に2時間かかるとして、この200時間があれば100商談ができます。企業の経営者は、この4名を現場に送り、顧客と向き合う時間を増やしたいと考えていました」とOCRなど画像系AIを活用したソリューション事業を担当する林将史氏。
これほどまでにアナログな業務が残存している背景には、いくつかの理由があると林氏は語る。まず1つ目は、取引先がFAXなどを使い続けているという業界構造上の課題だ。自社が最新のEDIソリューションを導入しても、すべての取引先に同じシステムの利用を強いることは、営業の現場ではとても難しい。取引先にとっても、各社が別々のシステムを導入していては、かえって手間が増える。結果として、誰でも使えるFAXが最も手軽な手段として選ばれてしまうのだ。
また、既存の業務フローをデジタル前提で設計し直すことの難しさもある。特に製造現場や店舗など、PCやタブレットを置きにくい環境では、デジタルツールを使った受発注や登録作業が馴染まないケースも多い。
同時に林氏は「紙は本当に悪いものなのか」と問いかけた。紙には、いつでもどこでも使え、複数の項目を一覧で確認・記入できる視認性の高さ、そして修正や加筆が容易であるといった、デジタルにはない利便性がある。現場が「紙を使い続けたい」と望むことにも、合理的な理由があるのだ。
OCRでの課題を解決する自動化ソリューション「LINE WORKS PaperOn」
近年、OCR(光学的文字認識)ソリューションが市場を拡大させてきた。LINE WORKSもOCRソリューションを提供しているが、その中で顧客から新たな課題が聞こえてきたという。OCRを導入しても結局手作業が残ってしまう、というのだ。
最も多いのが、認識精度の限界。印刷された活字であれば高精度で読み取れるが、手書き文字や形式の定まっていない非定型帳票の読み取りは依然として難しく、結局は人による確認・修正作業がなくならない。結果として「80%の工数削減を見込んでいたのに、20%しか削減できなかった」というケースも多いそう。
さらに、業務は読み取りだけでは済まないという点も大きい。文書の内容をデータ化するだけでなく、独自の社内ルールに基づいてデータを変換したり、別情報と突き合わせて新たな情報を作成したりする作業は、従来のOCRでは対応が困難だった。文書を受け取り、確認・修正・承認を経て、特定のフォーマットに転記するといった一連のプロセス全体を、ひとつのソリューションでカバーすることはできなかったのだ。その結果、全社的にDXを推進していても、特定の文書処理業務だけが「紙だから無理」と諦められ、非効率なまま放置されるという状況が生まれていた。
この課題を解決するために開発されているのが、新しい自動化ソリューション「LINE WORKS PaperOn」だ。文書処理業務全体をカバーするプロダクトで、人手と時間を生み出す、現場にヒットする文書処理業務の新しい自動化ソリューションだという。
従来と異なるのは、文書が発生する現場にフォーカスし、OCRだけでは解決しきれなかった前後の業務プロセスや、人でしか対応できないと思われていた判断業務までをカバーする点だ。PaperOnは、文書の仕分けからデータ化、そして後続システムへの連携まで、これまでバラバラだった業務をひとつのソリューション上で完結させる。
たとえば、FAXや複合機と連携すれば、紙の文書が自動でPaperOnに取り込まれ、処理が進んでいく。処理が完了したデータは、指定のドライブに自動保管することも可能だ。
PaperOnを支える大きな3つの機能がある。まず1つ目が高精度の項目抽出性能。独自のAI OCR技術に加え、LLM(大規模言語モデル)や学習する自動修正機能を活用し、罫線のない手書きのメモのような帳票でも、事前のフォーマット設定なしに項目を自動で判断し、正確に抽出できるのだ。例えば、「予定・実績・不良」といった欄に並べて書かれた数字も、人間が解釈するように各項目に正しく振り分けて認識できる。崩れた手書きの日本語も、文脈を判断して読みやすい形に自動で修正・出力する機能も備える。
2つ目が、現場を起点としたUI/UX。現場で帳票が発生した瞬間に、使い慣れたLINE WORKSアプリをハンディスキャナのように使って撮影・アップロードする。処理が終わればバックオフィスの担当者に通知が届き、担当者はLINE WORKS上で承認ボタンを押すだけで、後続のシステムにデータが自動連携される。物理的な紙の運搬や担当者間のやり取りの手間を大幅に削減されるのだ。
3つ目が柔軟なシステム連携機能。書いてある文字をデータ化するだけでなく、出力形式にもこだわった。あらかじめ設定したルールに基づきデータを自動変換する機能や、商品マスターなどの外部データと連携して商品コードへ変換したり、情報の補完・訂正を行う機能も搭載。さらに、後続システムが受け入れやすいように、出力するCSVの項目順や内容を自由にカスタマイズしたり、指定のフォーマットにデータを転記して出力したりすることもできる。担当者はPaperOnが出力したデータをそのまま後続システムに投入するだけで業務が完了するのだ。
「LINE WORKS PaperOn」は本来やりたい仕事に集中できるソリューション
冒頭の事例でPaperOnを導入したことで、月200時間かかっていた作業が45時間まで短縮され、78%もの工数削減が実現できたという。林氏はLINE WORKSが培ってきたAIやUXのおかげ、と自信を見せた。
請求書処理や製造日報など、企業内には多種多様な文書処理業務が存在する。PaperOnは特定の業務に特化せず、汎用的に利用できるため、一つ一つの業務量は小さくとも、部署を横断して集約すれば膨大な量の業務を一つのソリューションで効率化できる可能性がある。
「紙があっても大丈夫です。PaperOnは人手と時間を増やし、本来やりたい仕事に集中できるソリューションです。正直、文書処理業務は地味なサービスですが、OCR事業で培ってきた技術で「こんなことをやりたい」という想いを、このPaperOnで実現させていきたい」と林氏は締めた。

















