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COMPUTEX TAIPEI 2025レポート 第3回

クアルコムがデータセンター市場に参入、NVIDIAとの協業も発表 COMPUTEX2025基調講演

2025年05月20日 01時40分更新

文● 中山 智 編集●北村/ASCII

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AIによるPC体験の変革:Agentic AI

 Amon氏は、AIがデバイスのエクスペリエンスを根本的に変えると考えており、AIが「新しいUI」になる時代が到来すると予測している。これは、オペレーティングシステム(OS)やアプリケーションストア、アプリといった既存の境界を打破し、すべてを再定義するもので、AIは生産性のためのOSとなり、Agentic AIがこの進化を推進すると話している。

 Agentic AIのコンセプトでは、ユーザーの入力(音声、視覚、テキスト、タッチ)と、ユーザーのデジタルフットプリント(カレンダー、位置情報、ファイル、連絡先など)から得られるコンテキストが非常に重要と指摘。特にエンタープライズ環境では、企業システムとも連携し、エージェントがユーザーの意図やデータ、実行したいタスクを理解し、タスク完了を支援するようになる。これは、企業全体のデータ(構造化、非構造化、プライベートデータ)にアクセスし、デバイス上またはクラウド上でエージェントと連携するハイブリッドなアプローチといえる。

 そこでクアルコムは、Agentic AIを可能にするためのインフラとして、可能な限り最高のプロセッサー構築に注力するとのこと。同社自身はAIエージェントの作成事業には携わっていないものの、ユーザーのコンテキストをデバイス上で保持し、異なるデバイス間で共有するための技術開発に多くの時間を費やしている。

 基調講演では、Agentic AIの実例も紹介。Writerは、エンタープライズ向けにAIを活用したワークフロー変革ソリューションを提供しており、クアルコム社内でも導入され、9倍のROI、月間2400時間以上の作業時間削減を実現しているという。Contextは、Snapdragon NPU上で完全にオンデバイスで動作するAgentic AIモデルであり、ユーザーのノートPC上のデータを活用してコンテキストを理解し、ドキュメント検索、プレゼンテーション作成、コミュニケーション draftなどをプライベートかつ安全に実行可能だ。

 DaVinci Resolveのようなクリエイティブアプリケーションでも、Snapdragon NPUを活用したシーン編集検出やオーディオカテゴリータグ付けといったAI機能が実装されている。

 開発者向けエコシステムを強化するため、クアルコムはCPU、GPU、NPUといったコンピューティングリソースの活用を可能にするソフトウェアスタックとツールも提供。AI Hubを通じて、開発者は独自のモデルを持ち込んだり、最適化されたモデルを利用したり、モデルを最適化するためのツールを使用したりできる。

 Dockerとの協業により、開発者はDocker DesktopをSnapdragon Xプロセッサー上で利用し、ローカルでAIモデルを容易に実行できるようにもなっている。これにより、開発者はAgenticアプリを柔軟性、プライバシー、コスト効率を向上させて構築可能だ。

 講演の終盤では、AI技術を活用したデモンストレーションとして、講演中に受け付けていた聴衆から寄せられた質問にAIが応答する様子を披露した。

 デモンストレーションのために、使用されたデバイスには複数のAIモデルを利用。OpenAIのモデルが音声(voice)からテキスト(text)への変換を行ない、Llamaのモデルが聴衆からの質問を選択し、それに対して応答するという役割をになっているとのこと。重要な点として、これらのモデルはすべてNPU(ニューラル・プロセッシング・ユニット)上でリアルタイムで実行しているとのこと。

 Amon氏はこのデモンストレーションの目的として、NPU上でリアルタイム処理をすることによるレイテンシーの低さを示すこと、そしてデバイスにインストールされた十分に訓練されたモデルが応答できる能力を示すことと説明。Amon氏は、このデモンストレーションが予想以上にうまくいき、非常に安心したと述べており、AI革命が目の前で起きていることを示すものだと話していた。

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