「Everyday AI」を目指すDataikuの現在地
AIエージェントの“混沌”状態を“創造”に変える Dataiku基盤での開発・運用が本格化
2025年05月16日 08時00分更新
Dataiku(データイク)は、「Everyday AI」のビジョンのもと、日常のビジネスにAIを取り入れるためのプラットフォームを展開してきた。AIエージェントの時代を迎えた今、そのプラットフォームは、アナリティクスやモデルだけではなくエージェントを開発・運用できるよう進化を遂げている。
Dataiku Japanの取締役社長 カントリーマネージャーである佐藤豊氏は、「次なるステップとして、AIエージェントの日常化に取り組んでいきたい」と抱負を語る。
本記事では、Dataikuのプラットフォームの特徴と、新たに加わったAIエージェントの開発・制御の機能、そして、これらを日本市場でどう届けていくかについて紹介する。
“ハブ&スポーク”モデルを支える「ユニバーサルAIプラットフォーム」
企業の生成AI活用が実用化に転じつつある中、Dataikuは、AIで成功する顧客に共通する組織のあり方として、「ハブ&スポーク」モデルを挙げる。
ハブ&スポークモデルでは、AIやデータの専門家が集まった「ハブ」組織が、セキュリティやリスク管理を担いながらAI活用を推進。一方、分散型の「スポーク」組織では、ビジネスの専門家が、ドメイン知識を活かしてAIを活用する。「現場の創造性を阻害することなく、ハブ組織が安心で安全なAI拡大を促進することが重要」と佐藤氏。
このハブ&スポークモデルで「中央集権的な管理」と「部門の自立性」を実現するには、寄せ集めのAIツールでは難しく、強固なデータ・AI基盤が不可欠だという。そうした基盤として、Dataikuが提供するのが「ユニバーサルAIプラットフォーム」である。
企業がAIで価値を生み出すには、さまざまな場所に蓄積されたデータを収集・加工・管理して、アナリティクスやモデルにつなげる必要があるが、ここには多様な技術要素が含まれる。Dataikuでは、この複雑な構造をシンプルにするべく、主要なベンダーと連携してデータ・AIのテクノロジーを統合する「AIインフラ層」と、AI開発・運用オーケストレーションを担う「ユニバーサルAIプラットフォーム」の2層構造に定義している。
後者のユニバーサルAIプラットフォームは、現場のドメイン専門家でも、技術を意識することなく、アナリティクスやモデルを作成・運用可能な基盤となる。AI開発と運用オーケストレーションに必要な機能を揃え、何より特徴的なのが“中立性”の高さだという。
技術的には、クラウドやデータプラットフォーム、AIモデル・サービスにおいて中立性を担保することで、ベンダーロックインを避け、将来登場するテクノロジーにも備えることができる。また、ユーザーへの中立性にもこだわり、ノーコードのビジュアルインターフェイスを採用するほか、データ専門家向けに、さまざまな分析ツールや開発環境に対応する。
このユニバーサルAIプラットフォームにおいて、今回、AIエージェントを開発・制御するための機能が拡充された。
マルチエージェントのカオスな状態をクリエイティブに変える
自律性のレベルによって得られる価値の多寡は異なるものの、「コスト削減」「生産性向上」「収益の増加」などのメリットを得られるAIエージェント。
しかし、現実には単純なエージェントでさえ課題が山積みだという。多くの企業が抱える課題は、「機能が限定的」ということだ。「ビジネス部門とデータチームの連携不足から問題が生じており、結局は得られる成果がビジネスのコンテキストに合わない」と佐藤氏。
また、技術的には、相変わらずハルシネーションの問題がつきまとう。これは、単純なエージェントからマルチエージェントへと広がるにつれ顕著となり、エラーが積み重なり、連鎖的な障害を引き起こしかねない。加えて、マルチエージェントでサイロ化が進むと、システムとの脆弱な接続が生まれ、障害の診断が不可能になり、説明責任も果たせなくなる。
こうした課題を解決すべく、Dataikuが提供するのが「AI Agents with Dataiku」だ。監視や最適化、ガバナンスが設計されたプラットフォーム(ユニバーサルAIプラットフォーム)に、AIエージェントを「開発」「制御」する機能を組み込み、カオスな状態からクリエイティブな状態へと変えるという。
AIエージェントの開発においては、Langchainなどのフレームワークで高度なエージェントを作成できる「Code Agents」と、ノーコードのビジュアルインターフェイスで誰もが作成可能な「Visual Agents」を用意。「ビジネスのコンテキストに合わせるためには、コードの書けないナレッジワーカーも、エージェントを生み出せるようにする必要がある」と佐藤氏。
フローと連携して、AIエージェントがタスクをこなすための仕組みが「Agent Tools」だ。レコードやドキュメントの検索、Dataikuのモデルによる予測といったアクションを実現するほか、独自のツールを作成して、エージェントの出来ることを広げることも可能だ。さらに、インターフェイスとして、複数エージェントの窓口となるパッケージ化されたWebアプリケーション「Agent Connect」も提供する。
AIエージェントの制御に関しては、各部署で開発されたすべてのエージェントのガバナンスを保ちつつ、企業全体に展開するための、「統合管理(オーケストレーション)」や「継続的な最適化」、「中央ガバナンス」の機能を取り揃える。
統合管理では、モデルプロバイダーにまたがりLLMアクセスの一元管理が可能な「LLM Mesh」、ガードレール機能である「Safe Guard」を提供。継続的な最適化では、LLMコストを監視・制御する「Cost Guard」、LLMの性能を監視・評価する「Quality Guard」、そして、AIエージェントの動きを追跡し、改善サイクルを回すための「Traces Explorer」を用意する。
中央ガバナンスでは、生成AIのレジストリや本番環境移行おける承認プロセス、エージェントに対する一貫した評価とリスク監視の仕組みを提供する。「AIエージェントは、今まで類を見ないような規模にまで拡大されると考えている。そういった中では、生成AIをレジストリして、本番環境に伴う物理的なプロセスに加え、エージェントの価値やリスクの監視、ポートフォリオを一元管理できるような中央ガバナンスが不可欠となる」(佐藤氏)

















