GeForce RTX 50シリーズまとめ 第29回

VRAMは16GBにしておけ

GeForce RTX 5060 Ti 8GBは今のPCゲーム環境では“理”のある選択ではない

VRAM使用量が低い検証ではブーストクロックの差が出る

　「3DMark」はGPU評価の最初の一歩。実際のゲームの性能とは異なるケースもあるのだが、同じ課題を実行させて実力を見る、という点ではこれに代わるものがない定番のベンチマークである。

3DMark：ラスタライズ系テストのスコアー

3DMark：レイトレーシング系テストのスコアー

　どのテストもRTX 5060 Ti 8GBのほうがRTX 5060 Ti 16GBよりわずかに高い。これは前述の通り、今回検証用に用意したRTX 5060 Ti 8GBがファクトリーOCモデルだからである。Fire StrikeやPort Royalではそこそこの差がついているように見えるが、それもせいぜい数％。現状の3DMarkではVRAM 8GBでこと足りるため、OC設定の差が出たと考えられる。

フルHDでVRAM平均使用量8GB設定と最高画質設定で検証

　ここからはさまざまなゲームにおけるフレームレートを検証する。解像度はフルHD（1920×1080ドット）、WQHD（2560×1440ドット）、4K（3840×2160ドット）の3通り。画質は最高、あるいはそれに準じる設定とした。

　ただし、今回の検証ではVRAMの容量にそこまで依存しない設定のパフォーマンスも見たい。そこで、RTX 5060 Ti 16GB環境でテストし、フルHD時のVRAM平均使用量が8GB以下になるような設定に調整した。

　さらに、追加ルールとして、画質を下げる際もなるべく「中」設定までにとどめ、「低」にはしないこと。最高画質設定でも平均VRAM使用量が8GB以内に収まる場合は、そこから画質を下げた設定の検証は行わない、という2つのルールを設けている。

CapFrameXでフレームレートを計測するとSensor DataとしてVRAM使用量も得られる。今回は平均使用量に注目した。こうしたツールで得られるVRAM使用量は「単に確保しただけ」か「本当に使っている」のか、数値だけでは判別できないので目安でしかないが、ある程度ゲームの画質設定の決定には使えると筆者は考えている

「Apex Legends」

　Apex Legendsでは、APIはDirectX 12、画質は最高設定とした。射撃訓練場における一定の行動をとった際のフレームレートを計測した。

Apex Legends：1920x1080ドット時のフレームレート

Apex Legends：2560x1440ドット時のフレームレート

Apex Legends：3840x2160ドット時のフレームレート

　フルHDにおけるVRAM平均使用量は約5.5GB、4Kでも7GBを超えないため、RTX 5060 TiのVRAM搭載量の差はフレームレートに現れることはない。RTX 5060 Ti 8GBのほうが若干フレームレートが高い理由は、ファクトリーOCモデルだからだ。

　RTX 4060からRTX 5060 Ti 8GBに乗り換えるという選択に現実味があるとは言えないが、このApex Legendsの結果を見る限り、平均フレームレートはフルHDで約26％、4Kになると約53％向上と確実な伸びを感じられる。価格がもう少し下がってくればあるいは……といった感じか。

Apex Legends：ベンチマーク中におけるTotal Board Powerの平均値（左3つ。単位：W）、および10Wあたりのフレームレート（右3つ。単位：fps）

　上の表は各解像度におけるTBP（Total Board Power：ビデオカード単体の消費電力）と、平均フレームレートとTBPから算出した10Wあたりのフレームレートの比較である。RTX 40シリーズとRTX 50シリーズではAI以外の基本的描画に関係する回路設計に大きな違いはないので、ワットパフォーマンスは横ばい。ただし、今回テストした中ではRTX 4060 Ti 8GBのワットパフォーマンスが少々優秀であった。