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柳谷智宣の「簡単すぎて驚く生成AIの使い方」 第14回

進化するMicrosoft 365 Copilot ビジネス文書作成にWord Copilotを活用して業務効率化

2025年05月12日 14時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●MOVIEW 清水

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 本連載は生成AIをこれから活用しようとしている方たちのために、生成AIの基本やコピペしてそのまま使えるプロンプトなどを紹介。兎にも角にも生成AIに触り始めることで、AIに対する理解を深め、AIスキルを身に着けて欲しい。第14回はMicrosoft 365のWord使用時にCopilotを用いて業務効率を改善する方法について解説する。

アップデートを繰り返し、便利になっているCopilot

 2023年3月にマイクロソフトの生成AI「Microsoft 365 Copilot」が発表された。当時は、ExcelやPowerPoint、Outlook、Teamsと並んでAIアシスタントを統合する計画が明かされ、Wordにおいても大規模言語モデルを使った画期的機能が提供されると話題を集めた。

 そして2023年11月、法人向けに「Microsoft 365 Copilot」が正式リリースされ、2024年1月には、個人ユーザーにも「Copilot Pro」のサブスクリプションがスタート。多くの人たちが、手軽にCopilotを使いはじめた。

 当初はできることが少なく、肩透かし感があったのだが、それから矢継ぎ早にアップデートが繰り返され、どんどん便利になっている。今回は、ビジネスシーンにおける文書作成で、「Word Copilot」を活用する方法を紹介する。

AIと二人三脚でたたき台を短時間で生成し、業務効率を向上させる

 Word Copilotには、多くの支援機能が搭載されている。もちろん、メインは文章の下書き生成機能だ。ユーザーが「新商品の提案書を作成してほしい」といった具合に簡単な指示を入力するだけで、ある程度の構成や内容を備えたドラフトが瞬時に書き上がる。従来ならば白紙の状態から資料を作る際、構成案を考えるだけでも時間がかかるところだが、初稿作成に費やす労力が大幅に削減される。あとはユーザーが数字や具体例、独自の視点などを盛り込みながら加筆・修正し、ブラッシュアップすればいい。

 Wordで新規文書を開くと、上部にWord Copilotのメニューや入力フォームが表示される。例えば、コーヒーメーカーを購入する稟議書を作って、とプロンプトを入力すれば、即それらしい文書を生成する。価格やランニングコスト、導入理由などを書いておけば、それも文書に反映してくれる。

Wordを開くと、上部にCopilotのメニューやプロンプトの入力フォームが表示される

プロンプトを入力する

稟議書のたたき台が生成された。OKなら「保持する」をクリックする

 もちろん、単発の文章も生成できる。例えば、何らかの原稿を書いているときに、文書内に表示されるCopilotアイコンをクリックし、内容を指示するだけでいい。すぐに、誤字脱字のない文章が生成される。

 1行の指示でも書けるが、入れ込みたい内容を詳細に指示するほど、欲しい文章になる。プロンプトは「具体的に」「明確に」書くのがコツだ。

Copilotアイコンをクリック

書いてほしい文章の内容を入力する

瞬時に原稿が生成される

長文の要約作りや文章のリライトも手間なくできる

 既存の長文ドキュメントを要約する機能も、多忙な人々にとってまさに救世主といえる。報告書や契約書など分量の多いテキストを取り扱う場合、Copilotに「この文章のポイントを3つにまとめてほしい」と依頼すると、重要な結論や数字を抽出したサマリーを提示してくれる。ミーティング前の資料チェックや、新入社員向けのダイジェスト資料作りにも有効活用でき、スピード重視の現代にふさわしいアプローチだ。

 まずは「ホーム」メニューから「Copilot」アイコンをクリックし、チャットUIを開く。要約して欲しいファイルを指定し、要約するように指示すればいい。文書で利用するなら「挿入」をクリックすると、コピペの手間もない。

「Copilot」アイコンをクリックして、チャットを開く

観光庁の宿泊旅行統計調査のPDFを要約してもらった

 文章のリライトや文体変更がワンクリックで実行できるのも便利だ。フォーマルな敬語表現とカジュアルな口語表現の切り替え、専門的な内容をやさしく書き直すなど、従来ならすべて手作業で行っていた作業をAIが一瞬でやってくれる。たとえば「高校生にもわかるように書き換えて」「上司向けにフォーマルにまとめてほしい」などの要望を伝えれば、Copilotは一瞬で文章スタイルを変えてくれる。

 ビジネス現場では、Word Copilotの登場によって文書関連の業務が大幅にスピードアップすると同時に、質の向上も期待できる。提案書や企画書を作成する際に、Copilotが最初のたたき台を用意し、それをチームでブラッシュアップしていくスタイルが急速に普及している。大枠のレイアウトや段落構成をAIに任せれば、人間はコンテンツの中身やクリエイティブなアイデアに集中できるからだ。

 ビジネス以外にも、教育や学習の場面においてCopilotは大きなインパクトをもたらしている。特に教員は毎日の授業準備や教材作り、試験問題の作成など多くの文書作成作業に追われがちだが、Copilotがあればこれらのタスクが効率化できる。

 たとえば教科書の特定の章を要約し、生徒向けに理解しやすい資料を作るのは意外と骨が折れる仕事だが、「高校一年生向けにやさしくまとめてほしい」といった指示をCopilotに与えるだけで、ある程度まとまった形に仕上げてくれる。教員はそこから微調整するだけなので、時間と労力を大きく節約できる。

「ですます調」から「である調」に変換するなど、文体の変更なども簡単にできる

料金プランから気をつけたい制限まで、導入時に押さえる必須情報を総まとめ

 Word Copilotを利用するには、基本的にはMicrosoft 365の各種プランに加え、AI機能のアドオンライセンスを契約する必要がある。企業向けでは、Microsoft 365 E3/E5やBusiness Standard/Premiumユーザーが「Copilot for Microsoft 365」を一人あたり月額4497円相当(年払い)で導入可能だ。

 個人向けの場合は、2025年1月からMicrosoft 365 Personal/FamilyにCopilotが統合され、Personalは月額1775円相当(年払い)、Familyは月額2284円相当(年払い)となる。毎月、「AIクレジット」が60回分付与され、利用する度に回数が消費されていく。それ以上使いたい場合は、月額3200円の「Copilot Pro」を別途購入すればいい。

存分に使い倒すなら「Copilot Pro」を契約しよう

 Word Copilotでは、文書を作成するという行為そのものが変化した。Wordはビジネス文書から論文、個人の趣味の文章まで、幅広い層が日常的に利用するツールなので、そのインパクトは大きい。従来は専門知識と時間を要した「構成」や「要約」「推敲」といった工程が短い一文の指示で完了するのは驚きの体験だ。

 MicrosoftはCopilotはあくまで「副操縦士」という位置づけであり、最終的な舵取りを行うのはユーザー自身としている。AIが自動で生成した文章は、ときに不正確だったり、万人受けしない文体で書かれているケースがあるためだ。とはいえ、その手間を含めても、ゼロから文書を書くよりは格段に効率が高い。それに加えて、AIならではの発想や表現が、新しいアイデアを呼び起こしてくれることもあるだろう。

 これからの時代、文書作成は(部分的にでも)AIに任せるのが当たり前になることは確実だ。まさに“副操縦士”と二人三脚で、新しい文書の未来を切り開く時代が到来したのだ。手書きからワープロ(パソコン)に移行した時よりも大きなインパクトと言っていいだろう。

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OpenAIの新推論モデル「o3」と「o4-mini」のリリースに関する最新情報

OpenAIは2025年4月16日、最新の推論モデル「o3」と高効率な小型モデル「o4-mini」を発表した。「oシリーズ」と呼ばれる推論に特化したモデル群の最新版で、性能を大きく向上。o3はOpenAIにおける現時点で最も強力な推論モデルであり、複雑なコーディング、数学、科学の問題解決において、思考連鎖機能により、精緻な推論が行える。また、o3とo4-miniは「画像で思考する」OpenAI初のモデルというのもポイントだ。モデルが単に画像を理解するだけでなく、推論プロセスで視覚情報を実際に利用できるということ。o4-miniはo3よりも推論能力は劣るものの、応答速度やコスト効率に優れた設計となっており、大量の問い合わせやリアルタイム応答に適している。実際、コーディングや数学、視覚タスクを得意分野としており、前モデルの「o3-mini」よりも利用上限が大幅に増加した。

 両モデルは「エージェント的な訓練」を受けており、ウェブ閲覧、Python、画像理解、画像生成などChatGPTのあらゆるツールを自律的に利用できる。複数のステップを踏む必要がある複雑な問題を効率的に解決できるようになった。ChatGPT Plus、Pro、Teamプランのユーザーは既にo3、o4-mini、o4-mini-highを利用でき、EnterpriseおよびEdu向けも1週間後に提供される予定だ。今後数週間以内に「o3-pro」もリリースされる予定とのこと。

AIモデルの選択メニューから「o3」や「o4-mini」を選べるようになった

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