このページの本文へ

セキュリティ専用管理チップの搭載、AI主導の運用管理など新たな取り組みを紹介

HPE ProLiant Gen12発表、新世代サーバーの目標は「安心」「最適化」「自動化」

2025年03月31日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 日本ヒューレット・パッカード(HPE)は2025年3月27日、最新世代のx86サーバーシリーズ「HPE ProLiant Compute Gen12」(以下、ProLiant Gen12)についての記者説明会を開催した。ProLiant Gen12の特徴として、現在の企業IT環境における課題やニーズに対応した「安心」「最適化」「自動化」をキーワードに掲げている。

日本ヒューレット・パッカード 執行役員 デジタルセールス・コンピュート事業統括本部長の加藤知子氏

日本ヒューレット・パッカード デジタルセールス・コンピュート事業統括本部 コンピュート製品本部 本部長の林亜樹子氏

市場ニーズの変化に対応して進化してきたProLiant、Gen12の方向性は?

 HPE 執行役員の加藤友子氏は、1993年(当時はCompaq)から30年以上続くProLiantサーバーは、その時々の市場ニーズにいち早く応え、業界標準をリードしてきたと説明する。たとえば、2012年のProLiant Gen8では運用管理を自動化する「自働サーバー」を、2017年のGen10ではハードウェアレベルでのセキュリティ強化を図った「世界標準の安心サーバー」を、2022年のGen11ではクラウド型運用管理を実装した「一歩先行くサーバー」を、それぞれ実現してきた。

HPE ProLiantサーバーの歴史

 それでは、2025年のProLiant Gen12は何を実現するのか。加藤氏は、ハイブリッド化が急速に進む企業IT環境では、セキュリティ/運用/ワークロード/効率の各側面で課題が顕在化していると説明する。「こうした課題を解決する良きパートナーとして、HPE ProLiant Computeは、次の世代となるGen12へと進化した」(加藤氏)。

 具体的には、エンドポイントがデータセンター/クラウド/エッジへと分散化する中でリスクが高まる「セキュリティの脆弱性」、マルチベンダー/マルチクラウドで複雑化するシステム運用環境の「可視性やタイムリーな洞察の欠如」、AI/エッジ/仮想化など多様化する「ユースケース/ワークロードへの対応」、そしてエネルギー効率や運用コストにおける「非効率性」の4つだという。

HPEがとらえる現在の企業における主要なIT課題

HPE iLOにセキュリティ専用プロセッサを追加、多層セキュリティをさらに強化

 より詳しいProLiant Gen12の特徴については、HPEでコンピュート製品本部長を務める林亜樹子氏が紹介した。

 まずは「安心」を実現するセキュリティ技術だ。ProLiantシリーズでは、CPUとは独立したサーバー管理機構として「HPE iLO」を搭載しているが、iLO 7では新たにセキュリティ専用プロセッサ「Secure Enclave」が追加された。これが暗号鍵、パスワード、セキュリティ構成、ファームウェアなどの“保管庫”の役割を果たし、ファームウェア改竄のようなサイバー攻撃からサーバー本体を保護する。

 「特許を取得したこの技術(Secure Enclave)は、米国政府のセキュリティ標準規格であるFIPS 140-3 Level3の要件を満たしている(認定を取得する予定)。さらに、量子コンピューターによる脅威やリスクから防御する、業界初の仕組み(耐量子暗号)も実装している」「店舗や工場などのエッジ環境では、サーバーを物理的に(外部に)さらすことになるので、改竄への耐性はとても重要だ」(林氏)

 さらに、ProLiantをラック単位で大規模導入する場合のトレーサビリティやセキュリティの強化なども含め、Gen12では多層のセキュリティを実現していることをアピールする。

ProLiant Gen12で強化された多層のセキュリティ

ラックマウント全機種が直接液冷に対応、AI主導の自動化も推進

 続く「最適化」については、サーバーの性能と電力効率に関する特徴を紹介した。

 ProLiant Gen12では、サーバー1台あたりの処理能力が、2世代前のGen10と比較して7倍に向上している(同等モデルのSPECベンチマークに基づく比較)。つまりGen10サーバー7台をGen12サーバー1台に集約できるため、ラックスペースの削減に加えて、年間の消費電力もおよそ65%削減できるという。

 ProLiant Gen12では「TCO/電力最適化」「高集約最適化」「ビッグデータ最適化」「AI最適化」など、個々のユースケース/ワークロードに最適化した幅広いラインアップを展開する(一部は2025年夏の発売予定)。その中で、特に高負荷ワークロードを扱うAI向けモデルで問題となるのが「排熱と冷却」だ。

 この冷却については、スーパーコンピューター/HPC領域も含めて50年以上にわたって培ってきた直接液冷(DLC:Direct Liquid Cooling)技術を、ProLiantにも実装している。ProLiant Gen12では、Intelベースの1ソケット/2ソケットラックサーバー全機種で、直接液冷をサポートする。これにより、冷却のための消費電力も空冷比で90%削減できると紹介した。

旧世代(Gen10以前)とGen12サーバーの1台あたりの処理能力の比較。サーバー台数の集約によって総消費電力も大幅に抑えられる

 最後の「自動化」では、ProLiant Gen12でのAI主導型の運用管理(AIOps)を紹介した。

 HPEでは、多拠点に展開するProLiantサーバー群を一元管理できるクラウド型管理ツール「HPE Compute Ops Management(COM)」を提供している。Gen12の発表に合わせて、このHPE COMにもAI機能が追加された。具体的には、サーバーのエネルギー消費量とCO2排出量について、過去のデータをAI分析して将来予測する機能だ。

「HPE Compute Ops Management(COM)」の概要。今回はAIによる予測機能を追加している

 そのほかにもHPEは、ハイブリッドIT環境の導入を簡素化する「HPE GreenLake」、各種のアドバイザリー/プロフェッショナル/サポートサービス、利用後のIT機器をリユース/リサイクルするアップサイクリングサービスなどを提供している。林氏は「これらのサービスを通じて、お客様のハイブリッドワールドを支えていく」と述べた。

カテゴリートップへ

  • 角川アスキー総合研究所