このページの本文へ

前へ 1 2 3 次へ

FSR 4はRDNA 4専用として実装

RDNA 4世代の新GPU「AMD Radeon RX 9070XT/ RX 9070」の詳細が明らかになる

2025年02月28日 22時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●北村/ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 2025年2月28日、AMDはRDNA 4世代の新GPU「Radeon RX 9070XT」「同RX 9070」に関する詳細な情報を開示した(以降RX 9070 XT、RX 9070と略)。AMDは先日開催された「CES 2025」において新Radeonを発表したものの技術的背景については開示を避けていた。

RX 9070シリーズの発売は2025年3月6日と発表されたが、具体的な価格情報に関しては謎が残されている。直前まで揉んでいるのだろう

 だが今回、AMDはRX 9070シリーズ(AMDはXTも無印も合わせこう呼んでいる)の発売日を2025年3月6日と発表し、謎に包まれていたRDNA 4やFSR 4(AMD FidelityFX Super Resolution 4)についても情報開示した。具体的価格について筆者が受領した資料には明言されていなかったが、RX 9070 XTは筆者の予想で699ドル(現在の経済情勢では日本円で15万円程度か?)あたりになると思われる。

 本稿では、プレス向けに事前共有された資料をもとに、AMDが発表した内容をまとめたものである。内容的にCES 2025の発表と被る部分もあるだろうが、その点はご容赦いただきたい。

2025年2月28日追記

 YouTubeの発表でRX 9070シリーズの北米予想価格が発表された。RX 9070は549ドル、RX 9070 XTは599ドルスタートとなる。RTX 5070の549ドルをかなり意識した価格設定だが、RX 9070シリーズの方がVRAM搭載量が多いという強みがある。

700ドル以下におけるコスパ最強を目指す

 まず大前提として、AMDはRDNA 4をNVIDIAのハイエンドGPU(RTX 4090やRX 5090)と性能競争するためのGPUではない、という点だ。究極の映像美とフレームレートを両立させるには強力なGPUが必要だが、大半のゲーマーには1000ドル以上するビデオカードに手がでないだろう? というのがAMDのメッセージである。

 そこでAMDは700ドル以下のゾーンで「Performance per dollar」、つまりコストパフォーマンスで優位を獲ることを狙った。RTX 5090に対抗できるGPUではないという点は残念だが、ハイエンドからエントリーまでカバーできるスケーラブルなアーキテクチャーを作るのはとんでもない労力が必要なことを考えると、AMDの決断は“選択と集中”の結果であると言えるだろう。

ゲーマーはより高い解像度と性能(レイトレーシングを含む)を望んでいるが、85%のゲーマーは700ドル未満のビデオカードを買っている。さらにビデオカードのために電源ユニットも買い換えなくてもよいものを欲している、というAMDの主張

RDNA 4はperformance per dollar、有り体に言えば“コスパ”を重視したゲーマー向けアーキテクチャーだ。これにはレイトレーシングやAIの強化も含まれる

 前置きが長くなったが、RX 9070シリーズはNVIDIAのRTX xx70番に対抗するための製品であり、RX 7900 GREとRX 7900 XTの中間に位置付けられる。RX 7900 GRE(発表時549ドル)がWQHDゲーミング向け、RX 7900 XT(同899ドル)が4Kゲーミング向けであるが、RX 9070シリーズは4Kゲーミングの性能をRX 7900 XTより安く提供できる。価格以外の進化の方向性としては、前世代よりもレイトレーシングやAIのパフォーマンス強化も志向しているが、これは近年のトレンドを考えれば当然といったところだ。

CES 2025開催前にメディアに配布された資料より引用。RX 9700シリーズはライバルのRTX 4080やRTX 5090 / 5080と競うための製品ではない。RTX 4070やRTX 4070 Tiにぶつけるための製品である。ナンバリング変更も対抗先を明確にするためのものとなる

RX 9070シリーズの価格はRX 7900 GREとRX 7900 XTだが、性能的には4Kゲーミングを狙えるRX 7900 XT寄りであるとアピールしている

 RX 9070シリーズの主なスペックも発表された。RX 9070 XTはCU(Compute Unit)64基でTBP(Total Board Power)は304W、RX 9070はCU56基でTBP 220W。ともにVRAMはGDDR 6の16GB仕様であり、PCI Express Gen 5対応となる。RTX 40〜50シリーズの上位モデルではより高速なGDDR6XやGDDR7を採用していることから考えるとRX 9070シリーズのGDDR6は周回遅れ感があるが、当のNVIDIAも新メモリーの歩留まりに苦労している事を考えると調達しやすさやコスト的な問題からGDDR6に止まったようだ。

 また、今回のRX 9070シリーズのCUはRX 7900 XTやRX 7900 GREと比べだいぶ少ない。RX 9070 XT(64基)はRX 7900 XT(84基)の約76%、RX 9070(60基)はRX 7900 GRE(80基)の70%に削減されている。TBPはRX 9070 XTがRX 7900 XTに対し微増(+4W)な一方でRX 9070はRX 7900 GREに対し大幅減(−40W)と合わせ考えるとより少数のCUで高パフォーマンスを叩き出せる設計であるのと同時に、小規模な構成での電力効率を重視した設計であると推察できる。RX 9070 XTがRX 7900 XTとほぼ同等のTBPである理由は、おそらくブーストクロック(瞬間的な最高値で、ゲーム中で持続的に出せるゲームクロックより高い)を高めるための仕様のためと思われる。

RX 9070シリーズのスペック。CU数はRX 7800 XT(60基)と近い。ついにAMDもAI TOPSをスペック表に書き始めた。この表にあるAI TOPSはINT4 with sparsity、すなわちINT4の疎行列に対する演算性能ベースのものである

 ちなみに、補助電源コネクターはおなじみの8ピン×2構成となるが、ごく一部のモデルはRTX 50シリーズと同じ16ピン(12V-2x6)構成の場合もある。ただAMD公式としてはPCIの8ピン×2が標準であるため、16ピン構成のカードはメーカー独自の工夫の範疇である。

 ではRX 9070シリーズのパフォーマンスデータを見てみよう。今回のデータで興味深いのはRX 6800 XTやRX 6900 XT、RTX 3080やRTX 3090といった2世代前のハイエンドと比較して大幅な性能向上をしているというデータである。4K&最高画質設定においてはRX 9070はRTX 3080に、RX 9070 XTはRTX 3090に対しどちらも平均26%のパフォーマンス向上が見込めるとAMDは主張する。

RX 9070はRX 6800 XTに対しては38%、RTX 3080に対しては26%高いゲームパフォーマンスを出せるという。どちらの数値も30本以上のゲーム(の平均フレームレート)で比較した際の平均であり、4K&最高画質でのデータとなる

RX 9070 XTはRTX 6900 XTに対して51%、RTX 3090に対して26%高いパフォーマンスが期待できるだろう。本稿で紹介しているゲームのパフォーマンスデータはすべてRyzen 7 9800X3Dベースのものだ

 RX 9070シリーズとRX 7900シリーズとの比較については、RX 7900 GREと対決させたデータしか公開されていない。どんな状況でも確実かつ見映えのする性能向上が期待できるのはRX 7900 GREだけであるということだろう。それによればRX 9070ならば4K&最高画質設定で21%、WQHDならば20%向上し、RX 9070 XTならば4Kで42%、WQHDならば38%向上するという(いずれも30本以上のゲームにおける平均)。

 AMDはRX 9070 XTとRX 9070を直接対決させていないが、以上のデータからRX 9070 XTはRX 9070よりもおおよそ16%程度上のパフォーマンスになるだろうと予想できる。

RX 9070とRX 7900 GREを4K環境で比較。Native 4Kとあるのでアップスケーラーなしでの比較のようだ。「Cyberpunk 2077」だとレイトレーシングなし(左側)で26%、レイトレーシングあり(右側)だと33%向上とある

こちらはWQHD環境におけるRX 9070とRX 7900 GREとの比較。4Kより描画負荷が低いためRX 7900 GREとの差は少々狭まっている

RX 9070 XTとRX 7900 GREを4K環境で比較。RX 9070よりもCU数が多くクロック設定が高いため、レイトレーシング有りの時の性能差が特に大きく感じられる

RX 9070とRX 7900 GREをWQHD環境で比較したデータ

前へ 1 2 3 次へ

カテゴリートップへ