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新清士の「メタバース・プレゼンス」 第96回

AI生成の3Dデータが実用レベルに近づいてきた

2025年02月24日 07時00分更新

文● 新清士

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プロトタイプに活用するのが最も有効

 3Dモデル生成にはまだいろいろな制約があるのですが、それでも様々な使い方ができます。やはり、現状では本開発の前のプロトタイプに使っていくのが最も有効でしょう。

 筆者のゲーム開発では、敵のデザイン検討時にTripoを参考として試しています。3D画像だけではイメージしにくいものを、一度Tripoで3D化してみて、より具体的に検討するために使うのです。敵キャラの本格的な3D化作業をする前に、イメージ画像から3D生成し、UE5に持ち込み、実際のステージの中においてスケール感や攻撃方法などを検討することができます。また、このモデルは、正式な3D作成資料の作成時に背面図などの三面図の画像を作成する際の参考にも使えます。

敵の案をTripoで3Dにした例(この画像はボツ案なので、筆者開発中の実際のゲームには登場しません)

 こうしたツールを組み合わせることで、冒頭で紹介したようなイメージをふくらませる目的のプロトタイプもかなり短時間で作れるようになりました。ロボットと少女が戦うといったシチュエーションでモデルを組み合わせて、UE5上でスクリーンショットを作成します。そして、3Dでアニメーションを作成するのは手間がかかるため、動画生成AIを使うことで画像を動かします。そうすることで、限界はあるにせよ、お手軽にコンセプト動画を作れるというわけです。

UE5上で作成したロボット軍団との対決シーンの別角度でのスクリーンショット。Tripoで作成した女性キャラクターも背面しか見せないことで誤魔化している

 もちろん、3D生成ツールにも様々な制限はありますが、半年余りでも性能の向上は続いており、今後もそれは期待できると考えられます。現状は、そのままプロ用途に使うには、限界を意識しながら有効に使う必要があります。とはいえ、さらに半年後には技術発展が進み、より使いやすくなっていくのは間違いないでしょう。非常に敷居の高かった3Dの作成がどんどん扱いやすくなりつつあるため、今後、3D表現の幅も開拓されると思われます。

 

筆者紹介:新清士(しんきよし)

1970年生まれ。株式会社AI Frog Interactive代表。デジタルハリウッド大学大学院教授。慶應義塾大学商学部及び環境情報学部卒。ゲームジャーナリストとして活躍後、VRマルチプレイ剣戟アクションゲーム「ソード・オブ・ガルガンチュア」の開発を主導。現在は、新作のインディゲームの開発をしている。著書に『メタバースビジネス覇権戦争』(NHK出版新書)がある。

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