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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第810回

2nmプロセスのN2がTSMCで今年量産開始 IEDM 2024レポート

2025年02月10日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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フィンの数ではなくナノシートの数を増減させる技術
NanoFlex

 最適化の一助となるのが、NanoFlexと呼ばれる技術である。もともとTSMCはN3の時点でFinFlexと呼ばれる、特性を変えた3種類のトランジスタを用意、これを組み合わせることで望む特性を簡単に得やすくする技術を提供していた。

NanoFlexの概要。Short Cellはシートの数が少なく、高密度/省電力型、一方Tall Cellはシートの数が大きく、高速型となる。実際にはShortとTallだけでなく、複数の選択肢があると思われる

 実際には複数のフィン数の組み合わせ(NMOS/PMOSでそれぞれ3/2枚、2/2枚、2/1枚となる構成)をあらかじめ用意し、これを利用して簡単に回路を構築できるようにするというものだが、NanoFlexはフィンの数ではなくナノシートの数を増減させて同じことが可能になるようにしている。

 実際にN3EおよびN2プロセスを利用し、Cortex-A715コアを稼働させたときの性能/消費電力の比較も示された。下の画像は省電力同士、つまりN3Eなら2-1構成のもので、一方N2はShort Cellを利用したNanoFlex HDを利用したもので、ピークでは14%高速ないし35%の省電力、0.6V付近では15%高速ないし24%の省電力化が実現できたとする。

省電力ということもあり、電圧の範囲は0.5V~0.9Vまでとなっている

 一方高速同士、つまりN3EがFinFlex 3-2、N2がTall Cellを使ったNanoFlex HPの場合の比較が下の画像だ。動作周波数の向上は12%ないし12.5%とやや小さめだが、その代わり38%ないし30%と省電力同士の場合よりも電力削減効果が大きいものとなっているとする。

こちらは高速型なので0.7V~1.1Vとやや電圧が高めになっている。省電力効果が大きいのは、この電圧が高めな部分も関係しているのだろう

 ちなみにNanoFlexはHD Short Cell/HD cell/HPC cellの大きく3種類に向けたソリューションとなっている。

NanoFlex HDの中には、実際には2~3種類のシート構成が用意され、これを使い分けるかたちになっているものと思われる。これはHD short cell/HPC cellでも同じことだ

 そのN2世代のトランジスタの基本的な特性が下にある4つの画像となる。細かくは説明しないが、既存のN3Eと比較しても十分性能改善がなされていることが、実際のシリコンでのデータを元に示されたことは大きい。

DIBLはPMOSで30mV/V、NMOSで24mV/Vとかなり低めなのだが、ゲート長で正規化しての結果となっている。ゲート長そのものは公開されていない

Ioff(トランジスタオフ時のリーク電流)の比較。縦軸がリーク電流、横軸がレイテンシーの逆数である。傾向としてはグラフが右にずれればずれるほど、リークが少ないことになる。PMOSのSemi-optimizedというのがどういう状況なのが気になるところ

複数電圧での動作。右グラフはRing Oscillatorを構成して、動作周波数(横軸)と消費電力(縦軸)をプロットしたもの。赤がシミュレーション、青が実際のデータとのこと

低電圧時の振る舞い。N3と比較して、0.5V付近ではさらに効率が改善するとしている

 興味深いのSRAMである。何度か書いたが、トランジスタの微細化が進んでもSRAMの密度が上がらない、というのが目下の問題である。これはトランジスタそのものの大きさより配線の方がむしろ阻害要因になっているからだが、それでも2nmでは38.1Mbit/mm2まで密度を上げられたとしている。

とはいえN3からでは34.1Mb→38.1Mbで11%程の増加でしかないのだが。トランジスタ数そのものは15%増なので、やはり配線がネックではある

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