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日本生産性本部の継続調査、テレワーク実施率は過去最低だが「働き方の選択肢」として定着

働く人の3人に2人が「収入に不安」、物価上昇が要因か ― 意識調査より

2025年02月03日 07時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 日本生産性本部は、2025年1月30日、新型コロナウイルス感染症(以下コロナ)が働く人の意識に及ぼす影響についての継続調査(最新版)を公表した。

 本調査は2020年5月から定期的に実施されているもので、今回で16回目。企業に雇用されている労働者1100名を対象に、2024年1月6日~7日に調査を行った。

 調査では、コロナ以降のテレワークの実施率や、労働者の抱える“不安”についてモニタリングしている。今回のテレワーク実施率は14.6%と、過去最低を更新。また、「今後の自身の収入」に対する不安感が強いことが分かった。

 生産性総合研究センターの上席研究員である長田亮氏は、「働き方や自宅環境によってテレワークの実施意向は変わり、企業側の制度も職場や職種・業種に影響される。すべての企業でテレワークを導入すべきとは我々も思ってはいないが、多様な働き方のニーズに対応する選択肢のひとつとして検討するのが良いのではないか」と説明する。

生産性総合研究センター 上席研究員 長田亮氏

テレワーク実施率は過去最低を更新、自宅勤務希望は4割以下に

 今回の調査では、テレワーク(自宅勤務・サテライトオフィス勤務・モバイルワーク)の実施率が、前回調査(2024年7月実施)の16.3%から14.6%に微減し、過去最低を更新した。企業を従業員数規模で分類した結果も、すべての規模で微減している。ただし、年代別では20代のみ微増(前回14.3%から16.5%)となった。「テレワーク実施率は徐々に下がっており、近年は15%から16%あたりで推移しているのが実態」(長田氏)。

テレワークの実施率

 テレワークの実施率は徐々に減少しているが、一方で「自宅勤務での業務効率が上がった」という回答が73.7%、「自宅勤務に満足している」という回答が88.0%と、両項目ともに調査開始から増加し続けている。テレワークに適した環境の構築は、コロナを受けて成熟しつつあると言えるだろう。

自宅勤務の効率と満足度

 また今回の調査では、継続調査のなかで初めて「テレワーク(自宅勤務)制度の有無」についても聞いた。「テレワークは、まず企業にその制度があり、社員が制度上利用でき、社員が実際に利用することで、初めて実施したと言える。そこで、テレワークを実施していない人の要因が何なのかを明らかにしたかった」と長田氏。

 調査結果を見ると、「自宅勤務の制度があって利用できる」と回答したのは23.3%。そのうち約半数の11.2%が「制度は利用できるが実施していない」としている。また、「制度はあるが利用できない」「制度がなくなった/利用できなくなった」「制度がない」といった、「制度が利用できない」回答者の合計は59.3%に上った。

 さらに、自宅勤務を実施していない回答者のうち、自宅勤務を「実施希望」は36.9%、「実施したくない」は63.1%と、自宅勤務を希望する回答者の方が少ないことも分かった。

自宅勤務制度の有無と利用意向

64%が自身の収入に対して不安 ― 昨今の物価上昇が要因か

 また、継続調査では、コロナによって働く人の“不安”はどう変化しているかも追いかけている。

 まず、現在の景況感については、「悪い」と感じている回答者が前回調査の59.9%から59.0%に微減した一方で、「良い」も9.8%から8.8%に微減している。どちらか判断できない回答者が増えた形となる。

 コロナに対しては、「かなり不安を感じている」が 9.1%、「やや不安を感じている」が39.8%と、ともに前回調査から反転して、2年ぶりに増加した。「考えられる要素としては、コロナ含めた感染症が冬に増加する傾向があること、インフルエンザやマイコプラズマ肺炎といった感染症が流行していた中で、併発や合併症にかかることに対する不安が反映されたのではないか」と長田氏。

日本の景況感

コロナに感染する不安

 その他、雇用への不安(48.3%が「不安」)や、勤め先の信頼度(41.7%が「信頼していない」)は、前回の調査とほぼ変わらない結果に。

 変化が見られたのが「自身の収入に対する不安」だ。今後の収入に対して「(かなり/どちらかと言えば)不安を感じている」のは合計64.4%と、雇用に対する不安よりも強い。特に「かなり不安を感じる」が、前回調査の18.5%から23.7%へと増加している。長田氏は、「収入に対する不安は、コロナが5類になって以降も緩やかに増えているため、昨今の物価上昇などが不安感につながったのではないか」と分析する。

今後の収入への不安感

 このように、収入に不安を感じる労働者が一定数いる中で、転職に対する考えは「転職をするつもりはない」が61.0%。「転職意向がある」は39.0%にとどまった。転職意向が一番強いのが20代で、53.3%。以降、30代は51.5%、40代は39.1%、50代は23.8%と、年を重ねるごとに転職希望者が少なくなる傾向が見られた。

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