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自分の場所を見つけられる、都会的な庭

「Ginza Sony Park」がグランドオープン、ショールームではなくテナントも募らない、それでも続けられる理由とは

2025年01月28日 15時00分更新

文● HK 編集●ASCII

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プライベートの集合体としてのパブリックスペース

 パブリックスペースを意識して作られたGinza Sony Park。上で紹介した槇文彦氏のことばはプロジェクトの開始直後、さまざまな調査と研究の過程で出会ったある対談記事で見つけたものだが、「最初はあまりピンとこなかった」と永野氏は言う。

屋上にはCESで発表されたばかりのEVカー、アフィーラが展示されていた

 これを実感できたのは、2018年から2021年に展開した第一フェーズの仮設公園を運営してからだ。銀座を訪れる人々が思い思いの使い方で、この場所を楽しむ姿が見られた。たとえば、毎日決まった時間にやってきてコーヒーを楽しむ人、放課後にランドセルを置いて宿題を始める小学生、そんな彼女と待ち合わせ、短時間の会話を楽しむ母親の姿。

 こうした光景から、Ginza Sony Parkが「プライベートな空間」として機能していると気づいたという。

永野 「想像するに、学校が終わった後の待ち合わせ場所がSony Parkで、(その瞬間公共の場所が)2人にとってプライベートな場所になる。銀座で安全に児童と待ち合わせられる場所は金銭的にも安全面でもなかなかない。こういった光景に触れることで、先ほどの言葉の意味がわかってきた」

独特な形状の階段で、通りから自然とビルの上階に向かえる。見る角度でさまざまな表情を見せるビルであり、自分だけのスポットを見つけるのも面白そうだ。

行くたびに変化する場所

 Ginza Sony Parkは地上5階、地下4階建てとなっている。そこではソニービルに掲げられていた象徴的なネオン管や、テナントの入れ替わりで隠れていた50年前の青いハニカム状のタイルなど、この場の歴史を感じさせるディティールにも触れられる。歴史と未来をつなぐ象徴的な存在であることを意識できる。

解体の途中で見つかったという50年以上前の壁面

 かつてのソニービルは自社のショールームとテナントによって構成されていたが、ショールームはなく、テナントも入れない方針だ。地下鉄の通路からつながって入れる飲食スペース「1/2(Nibun no Ichi)」もソニーが直接運営するものだ。

 代わりに、さまざまなイベント企画を通じて、多様な体験を提供する場として設計されている。ソニーグループ全体がこのプラットフォームを活用し、ブランドの価値を最大化するための場所として活用するという。

 ショールームを置かない理由の一つは、かつてのソニーはエレクトロニクスの会社であり、製品がブランドを体現していたが、現在のソニーはより多面的なブランドであるためだという。

永野 「かつての銀座ソニービルとの違いは、テナントとショールームで構成されていたが、それが一切ない。その理由は公園だからです。ソニーの事業もエレクトロニクスから多角化している。つまり、ショールームがあればかつては良かったが、それを吸収しきれなかった。これを吸収できるプラットフォームが欲しかった」

 同時に、ウォークマン、プレイステーション、アイボといった製品を通じて、体験価値を生み出してきたソニーの「挑戦するDNA」が詰まった空間である。ソニーが築いてきた「誰もがやらないことに挑む」精神は「Ginza Sony Park」にも色濃く反映されている。

永野 「ソニーパークというプラットフォームの上で、様々な事業がその存在価値を示す。そのために変化に対応できる場所でありたい。また、来るたびに内容が変わっている場所である必要がある」

 Ginza Sony Parkは、公園でありながら「変化」を大切にした場所である。ニューヨークの街が訪れるたびに新たな魅力を提供するように、いくたびに新しい姿に触れられ、何度でも足を運びたくなる空間を目指している。

永野 「ニューヨーク市の観光局が掲げた『タージマハルに一度行ったらチェックマークがつく、しかしニューヨークには一生チェックマークがつかない。いくたびに変わっているからだ』という言葉が心に刺さっている」

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