高精度の「なろう系小説」が一発で生成された
一般的に、ChatGPTに小説といった長編の物語を書かせるには、まず章立てやあらすじといったものを作成させ、参照させつつ書かせたほうが、高精度の文章が出てきます。LLM(大規模言語モデル)には、展開できるメモリの制約から長期記憶の形成に限界があるため、情報を分割して参照させたほうが、内容の一貫性を維持しやすいためです。
「なろう系」の小説を書いてもらうために、適当に簡単な設定を作って、10章立てであらすじを考えてもらいました。ところが、そもそもあらすじの時点であんまり面白くなかったんですよね。「話と違うじゃん」と思ったら、選択していたモデルが既存の一般モデル「GPT-4o」のままになっていたんです。そりゃ面白くないわけだわと。
そこで、あらためて同じ内容で、10章に分けて各章の概要をo1に生成させてみたところ、そもそも水準の高いものが出てきました。そして、その概要を参照しつつ第1章を1万字と指定して、執筆させていきました。
そして出てきた作品は、冒頭から「正直なところ、もうあんまり希望なんて持ってなかったんですよね。いや、希望なんか最初からなかったわけじゃないんです。」という、いかにもなろう系小説の冒頭にありそうで、引きの強い文章から始まりました。わずか数分で、約8900字もの分量で出力された1章は、主人公が交通事故をきっかけに異世界に飛ばされ、美少女に出会うという“定番”的な展開でしたが、それなりに読める内容になっていました。
以降、次々に続きを章単位で出力させていったのですが、別の冒険者が参加してきたり、魔王の教団が地下水路に仕掛けた謀略を食い止めるために戦ったりと、なかなか面白い展開になっていました。ただ、章が進むにつれて長期記憶の限界量を超えるといったことが起きるのか、展開が概要段階よりもゆっくりになったりしました。
また、「主人公たちが簡単に戦闘に勝ちすぎる」という傾向も出てきたので、もっと限界まで主人公たちを苦しめるようにと指定したところ、今度は毎回死にかけるほどの苦労をする展開になったりしてしまいました。少し今度はダメージを負いすぎなので、最後の方はもう少し緩めにと変更をしたりしました。
最終的に10章で出力した結果は約7万1000字になりました。「各章1万字」と指定しているにもかかわらず、出力は少なめにされる傾向があります。展開が遅くなった影響で、魔王の前哨基地での戦いがいきなり魔王との対決になりクライマックス化するというご都合主義感な展開もあったものの、1本の娯楽小説としては十分に読めるものとなっていました。10章の出力にかかった時間は30分程度で、むしろ読んでいた時間の方が長いと思います(7万1000字の全文は筆者のnoteで公開中)。

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