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最新パーツ性能チェック 第458回

“Battlemage”世代の尖兵「Arc B580」レビュー【後編】

Arc B580のRTX 4060/RX 7600超えは概ね本当、11本のゲームで検証してわかった予想以上の出来

2024年12月19日 10時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●ジサトライッペイ/ASCII

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「Forza Motorsport (2023)」

 Forza Motorsport (2023)では画質系の設定を最高に、アンチエイリアスはTAAを選択。RTX 4060のみDLSSの「クオリティー」だが、ほかのGPUはすべてFSR 2の「クオリティー」とした。ゲーム内蔵ベンチマークにおけるベンチマークシーン再生中のフレームレートを計測。

Forza Motorsport (2023):1920×1080ドット時のフレームレート

Forza Motorsport (2023):2560×1440ドット時のフレームレート

Forza Motorsport (2023):3840×2160ドット時のフレームレート

 アップスケーラーしか実装していないゲームだが、画質を盛るとフルHDですらRTX 4060とRX 7600でも厳しいことがわかる。その点、Arc B580はWQHDまではA750の2倍近いフレームレートを叩き出し、他のGPUにおける優位性をはっきりと示している。

 それが4Kになると一気に最下位に。4K設定でテストを始めて、最初のランでは30fps以上出せるのだが、2回目以降はグラフの通り10fpsを切ってしまうのだ。根本の原因は4K+最高画質だと、VRAMを12GB以上要求するという点にあるのだが、Arc B580のドライバー、もしくはゲーム側がなにかの処理をミスしているように見える。

Forza Motorsport (2023):ベンチマーク中におけるTBPの平均値(単位:W)、および10Wあたりのワットパフォーマンス(単位:fps)

 Arc B580の消費電力が4Kで91Wまで落ちている点は、この解像度ではGPUが完全に窒息してしまっていることを示している。ワットパフォーマンス的にはRTX 4060が優秀だが、Arc B580はそれに次ぐ結果を残せている。

「F1 24」

 最後に検証するF1 24は、XeSS-FG対応を表明しているゲームだ。Arc B580のみXeSS-FG対応のβビルドで検証している。画質は「超高」、異方性フィルタリングは「16x」、DLSSとFSRとXeSSは「クオリティー」設定で、FGも有効化。ゲーム内蔵ベンチマークにおけるベンチマークシーン再生中のフレームレートを計測した。なお、ベンチマークシーンのコースは「モナコ」、天候は「ウェット」にしている。

F1 24のβビルドでは、Arc B580との組み合わせでのみ、XeSS-FGの設定項目が出現。ただし、画面の表示モードでフルスクリーンが選択できなくなるなど、まだ実装に粗さを感じる

F1 24:1920×1080ドット時のフレームレート

F1 24:2560×1440ドット時のフレームレート

F1 24:3840×2160ドット時のフレームレート

 Arc B580はFSR 3 FGでも試してみたが、そちらの結果もRTX 4060やRX 7600に対し、十分なアドバンテージを発揮できた。XeSS-FGを利用すれば平均フレームレートはFSR 3 FGより伸びる印象だが、βビルドの限界なのか、フレームレートの落ち込む頻度がFSR 3 FGよりも高いようだ。FSR 3 FGがあればそれで十分と言えるかもしれないが、XeSS-FGの成長も今後時間をかけて見守っていきたい。

F1 24:ベンチマーク中におけるTBPの平均値(単位:W)、および10Wあたりのワットパフォーマンス(単位:fps)

 Arc B580の消費電力はWQHDまでならさほど大きくはない。絶対値だけならRTX 4060が優秀だが、ワットパフォーマンスを考えるとArc B580はかなりバランスが良いと言えるだろう。

まとめ:苦手とするゲームもあるが、期待以上の出来

 以上でArc B580の検証は終了だ。最初のArc A380ではレビュアーを多いに失望させてしまったインテルが、Battlemage世代でここまで完成度を上げてくるとは思わなかった。Call of Duty(Black Ops 6)のようにArcシリーズだとダメだとか、SILENT HILL 2やForza Motorsport (2023)のように特定条件で発動する不具合はあった。

 しかし、ゲームそのものが動かないというトラブルはあまりなく、むしろVRAMの縛りが厳しくなると、RTX 4060やRX 7600のほうがトラブってしまう印象だった。インテルが推し進めた“安い割にVRAM 12GB搭載”という選択肢は、リッチな画質で遊びたいが予算は限られているというユーザーには良いと言えるだろう。

 インテルもレビュー締め切り前に「2回も」ドライバーを更新するなど気合いが入っており、今後のドライバー熟成が楽しみである。今後もArc Aシリーズと同様に、Bシリーズも成長を見守っていきたい。ただし、問題は価格設定だ。約5万円スタートでは、RTX 4060やRX 7600にターゲットを絞っていた購買層の関心を奪うことは難しいだろう。

 もちろん、上位クラスとの戦いもある。VRAM 16GBを搭載するRX 7600 XTなら最安モデルは5万円強で、なんならAFMF2も利用できる。Arc B580にはQSVによるAV1エンコードが爆速だとか、OpenVINOを利用すればAI推論性能もあなどれない、という付加価値はあるにせよ、シェアをもぎ取ることはそう簡単ではなさそうだ。

 国内発売価格の高さは代理店のマージンや為替、さらに流通コスト高という要因もあるが、Arc Aシリーズの不振という要素も価格設定を悪い方向に押しやっているのではないか、と筆者は愚考する。ただし、実売価格のバランスは時間が解決してくれる。その時にArc B580の完成度が十分高くなっていれば、いくばくかのシェアを奪うことは十分あり得る。その時はまた同じような角度からArc B580を再評価してみたい。

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