危機情報の可視化・予測ソリューション、アジアで“リープフロッグ”を起こせるか
日本発の「BOUSAI(防災)」テックで世界一を目指すSpectee フィリピン政府が採用
2024年12月05日 09時30分更新
アジアにて“レジリエンスのリープフロッグ”を起こす
このように、Spectee Proの導入が順調なのは、災害大国である日本において、防災の技術やノウハウを積み重ねてきたからだ。一方、世界を目に向けても、自然災害や地政学リスクが増大しており、「レジリエンス」の需要は拡大している。
この日本発の「BOSAI(防災)」ソリューションを、世界にも届けるべく、まずはフィリピンにおける事業の立ち上げを開始した。
フィリピンを選んだ理由として、Specteeの取締役COOである根来諭氏は、「(フィリピンは)日本と同じく災害大国。台風がよく上陸し、火山や地震の災害も発生する」ためだと説明する。SNSの利用率も高く、危機の情報ソースに事欠かないことも決め手になっている。
事業の立ち上げにおいては、JICA(国際協力機構)の「中小企業・SDGsビジネス支援事業」の採択を受け活動を進めてきた。これは、従来のODA(政府開発援助)ではなく、JICAが企業をバックアップして、開発途上国の社会課題を解決するビジネスの創出を推進するスキームだ。
ビジネスの案件化調査から、ビジネスモデルの検証や事業計画案の策定において、JICAの支援を受けている。「特に防災(のビジネス)においては公共セクターを開拓しなければならない。JICAの信頼や実績によって機会を得ることができた」と根来氏。
具体的には、2023年からフィージビリティスタディという形で、中央省庁や地方自治体などフィリピン中を周り、Spectee Proの価値を訴求した。その結果、フィリピンのデジタル庁にあたるDICTとパートナーシップを結び、中央省庁および地方自治体に対して、80ライセンスが導入されることが決定した。
導入されるのは、危機情報の可視化範囲を世界にまで拡張したSpectee Proのグローバル版だ。SNS情報のデマ・フェイクを監視する専門チームも現地で構築して、セミナーの実施やフィードバックを受けて機能のローカライズを行いながら、導入に向けて準備を進めている。
同時に、現地の販売代理店とも連携して、民間市場も開拓していき、財閥企業や報道機関を中心にアプローチ予定だ。
フィリピンの事業立ち上げ後は、タイやベトナムへの進出を検討しており、2028年にはASEANや東アジア全域でのサービス展開を目指す。その中で実現したいのは、防災の世界における「リープフロッグ」だと根来氏。例えば、ケニアで固定電話を飛ばして携帯電話が普及したように、旧世代技術の普及段階を経ることなく一気に最新技術に到達する現象を指す。
日本ではオンプレミスの防災情報システムの時代を経たが、その土壌がないアジア各国では、いきなり低コストで導入ハードルが低いクラウドの防災ソリューションを展開できる。そのために、他の日本政府のサポートの活用や他社との協働も検討していく。
代表取締役 CEOである村上氏は、「世界的に災害が増えている一方で、防災ソリューションの領域では、世界を見渡してもあまりプレイヤーがいない。アジアの後は、欧米諸国やアフリカ、南米など各国に展開していき、2030年以降にはトップシェアを狙いたい」と抱負を語った。












