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ビジネスアーキテクトでもデータサイエンティストでもない「ビジネスアナリスト人財」がなぜ必要か

100人の“ビジネス×データ人財”育成目指す島津製作所、カギは「1人のロールモデル」

2024年10月15日 08時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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社内で“3つの整備”を進め人材育成、さらに高度な人材像も視野に

 島津製作所では、2023年度から「Domo Dive Program(DDP)」を立ち上げ、「ロール定義と研修の整備」「情報共有の場の整備」「活用支援施策の整備」という3つの整備を行っている。前述したとおり、目標は2025年度末までに100人のBAを創出することだ。

 山川氏は、初級者から段階的にBAまでステップアップしていく道筋を整理したこと、BA研修においてデータ可視化に関する理論的な知識を習得したあと、即座に実業務課題を解決する実践ワークを行うようにしたこと、BA研修における評価をチェックシートで標準化したこと、研修後も活動が継続するようトラッキングとフォローアップを行っていることなど、プログラムで工夫した/改善したポイントを紹介した。

 「われわれは製造業なので、一度リリースした研修に関しても、日々『PDCAサイクルを回して改善していく』ことを心がけている」(山川氏)

「BA人財」にステップアップしていく道筋と、各段階でのロールを詳しく設定し、それぞれに応じた研修プログラムを整備した

座学研修の後は、それぞれの身の回りにある業務課題をデータ活用で解消する「実践ワーク」を実施

 島津製作所のBA研修は現在3期目を迎えているが、山川氏は、この研修を通じて「“共通言語”が獲得できた」ことが大きな成果だと述べる。

 「課題解決のための会議では、BA研修の参加者が『オーディエンスは誰なのか』『打ち手は何なのか』『それをどう可視化するのか』を共通言語として議論するようになった。これにより会議の質が圧倒的に向上した。研修でのインプットが、データ活用のアウトプット実現を支える成果を生んでいると感じる」(山川氏)

 なお、BA人財育成の先にある目標として山川氏は、BAがさらにデータサイエンスのスキルも習得したような新たな人材の育成を挙げた。「ビジネスアーキテクトとデータサイエンティストに中間に位置する、“AIやデータサイエンスを使い倒せる田口さん”のようなイメージの人財」(山川氏)。そうした人材の育成に向けて、Domoの協力も受けながら計画を進めていると明かした。

Domoが人材育成支援プログラムを体系化、提供

 なおDomoでは同日、「データアンバサダー養成講座」を含む包括的な人材育成支援プログラムの提供開始を発表している。同プログラムは、これまで顧客企業への支援として行ってきた人材育成のノウハウとスキルを体系化したものとなる。

 Domoが定義する「データアンバサダー」(以下、DA)とは、データ活用の社内展開を推進する役割を担う人物、いわば「山川氏のような人」だという。

 Domoのコンサルタントを務め、島津製作所の人材育成プログラム開発も支援してきたコアビズボード 代表取締役の八木幹雄氏は、データ活用の社内展開を本格的に進めるためには、経営層に“勝ち筋”(データ活用を通じた成果達成のロードマップ)を見せ、予算獲得や体制構築を進める必要があるが、それを主導する人材がいないという課題を指摘する。

データアンバサダーは、経営層に“勝ち筋”を見せてデータ活用の社内展開を本格化させる役割を担う

 そこでDomoでは、この役割を担うDA人材の育成に取り組んでいくことにした。DA養成講座では、顧客企業で山川氏のような役割を担った人の活動からベストプラクティスを体系化し、1日間の研修として提供する。これと同様に、島津製作所やほかのトライアル企業で実施しているBA研修も「ビジネスアナリスト養成講座」として提供する。

「データアンバサダー養成講座」の概要

 なおDomoでは、DA、BAを含むさまざまなロールの人材育成を推進しやすくするために、大まかな構成比のイメージも明らかにしている。たとえばDAは「社員1000人につき5人」、BAは「社員1000人につき20人」が目安だと説明されている。

Domoが考えるデータ活用人材のロール(役割)定義と構成比の目安

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