ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第790回
AI推論用アクセラレーターを搭載するIBMのTelum II Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU
2024年09月23日 12時00分更新
PCIe x16カードの形で提供されるAI推論アクセラレーター
Spyre Accelerator
ところでAI推論アクセラレーターは当然Telum IIにも搭載されており、性能は24TOPSと4倍に向上しているが、もともとTelumの時代からプロセッサー性能と推論アクセラレーターの性能が釣り合っていなかった。
AI処理が多い処理を多数のプロセッサーでこなす、というケースにおいては、明らかにCPUによって推論アクセラレーターの取り合いになる。だからといってCPUの数だけ推論アクセラレーターを搭載するか? というと、それはそれで問題でダイサイズも増えるし、Telumプロセッサーを使うすべてのシステムが大量のAI推論処理を行なうとは限らない。
このあたりの条件に対する解が、Telum IIで登場したSpyre Acceleratorである。SpyreはPCIe x16カードの形で提供され、カード単体で300TOPS以上の性能とされる。このSpyreは最大8枚まで、I/Oドロワーに搭載可能、という説明になっている。
まだTelum IIを使ったシステム(おそらく順番から言えばIBM z17 systemになるのだろう)の詳細構成が不明なので推察するしかないのだが、どうもTelum IIでは1ドロワーあたり8チップ(80コア)が最大構成になりそうだ。
下の画像がz16 systemでのCPドロワーの構成であるが、Telum IIを搭載したz17でのCPCドロワーも似た構成であり、Storage、DIMM、CPU×8、PCIeカードという順序になり、その最後のPCIeスロットの部分にこのSpyreカード×8が収められ、1CPUあたり1枚のSpyreカードという感じになりそうである。
もっともこれは構成次第のところがあって、Spyreカードは別に用意される拡張カード専用ドロワーに収められ、CPCドロワーの方はイーサネットなどのネットワークカードだけになるかもしれない。
製品出荷はIBMのリリースでは2025年になりそうなので、もうしばらくは詳細な構成は明らかにされないと思うが、Xeon/EPYCなどのPC用プロセッサーから進化したサーバー向けプロセッサーとは明らかに異なる原理原則で設計されていることが垣間見られ、非常に興味深い構成になっている。
この連載の記事
-
第808回
PC
酸化ハフニウム(HfO2)でフィンをカバーすると性能が改善、TMD半導体の実現に近づく IEDM 2024レポート -
第807回
PC
Core Ultra 200H/U/Sをあえて組み込み向けに投入するのはあの強敵に対抗するため インテル CPUロードマップ -
第806回
PC
トランジスタ最先端! RibbonFETに最適なゲート長とフィン厚が判明 IEDM 2024レポート -
第805回
PC
1万5000以上のチップレットを数分で構築する新技法SLTは従来比で100倍以上早い! IEDM 2024レポート -
第804回
PC
AI向けシステムの課題は電力とメモリーの膨大な消費量 IEDM 2024レポート -
第803回
PC
トランジスタの当面の目標は電圧を0.3V未満に抑えつつ動作効率を5倍以上に引き上げること IEDM 2024レポート -
第802回
PC
16年間に渡り不可欠な存在であったISA Bus 消え去ったI/F史 -
第801回
PC
光インターコネクトで信号伝送の高速化を狙うインテル Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第800回
PC
プロセッサーから直接イーサネット信号を出せるBroadcomのCPO Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第799回
PC
世界最速に躍り出たスパコンEl Capitanはどうやって性能を改善したのか? 周波数は変えずにあるものを落とす -
第798回
PC
日本が開発したAIプロセッサーMN-Core 2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU - この連載の一覧へ