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最新パーツ性能チェック 第447回

Zen 5とTDP増でゲーム性能は向上したか?「Ryzen 9 9950X」「Ryzen 9 9900X」の実力チェック

2024年08月18日 13時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●北村/ASCII

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 本稿は2024年8月23日11時に国内販売が解禁される「Ryzen 9 9950X」と「Ryzen 9 9900X」のレビュー後編にあたる。TDPを170W/ 120Wに増量し、物理コア数も16基/ 12基としたことで、マルチスレッド性能が欲しい人に向けたCPUといえる。

「Ryzen 9 9950X」と「Ryzen 9 9900X」のパッケージ

 前編では「CINEBENCH 2024」を筆頭にAIやクリエイティブ系の処理において検証したが、CPUを利用したCGレンダリングや動画エンコードでは前世代の同格モデルに対し性能で上回った一方で、実アプリではコア数の少ない「Ryzen 7 9700X」などに負けることも珍しくなかった。

 そして後編である今回はPCゲームにおける検証となる。Ryzen 9 9950XおよびRyzen 9 9900Xにおいてもシングルスレッド性能は高く、TDPを盛った仕様であるためRyzen 7 9700Xをも上回る。このパフォーマンスはゲームでも一定の効果が期待できる。

 Ryzen 9000シリーズ初登場時のレビューの際は、アーキテクチャーはZen 4だが3D V-Cacheを搭載したRyzenの方が上という状況が大半だった。ではTDPの高い新Ryzen 9では3D V-Cache搭載モデルに勝てるようになったのだろうか? さまざまなゲームで検証してみたい。

DDR5-6000でのパフォーマンスも検証する

 Ryzen 7 9700XおよびRyzen 5 9600Xのレビュー時から時間がそれほど経過していないため、検証環境は同一のものを使用している。ゲームにおけるデータもそのまま継承した。

 発売済みである「Ryzen 7 9700X」や「Ryzen 5 9600X」よりもRyzen 9 9950X/ Ryzen 9 9900Xはどの程度アドバンテージがあるか、そしてゲームキングである「Ryzen 7 7800X3D」や、3D V-Cache搭載かつ最多コア数を誇る「Ryzen 9 7950X3D」の性能を超えられるか? という部分が今回の見どころだ。

 そして、本稿でもRyzen 9000シリーズについてはDDR5-6000での検証データも追加している。前編ではDDR5-6000をTDP 65W仕様のRyzen 7 9700Xなどに装着するとメモリーコントローラー(を含むIOD:I/O Die)の消費電力が増えてしまい、CPUと電力の奪い合いになってしまいパフォーマンスに影響が出る、という筆者なりの仮説を立てた。

 しかしゲームではまた違った傾向が出るはずだ。無論TDPがもともと高いRyzen 9 9950XおよびRyzen 9 9900XではCPUの電力云々があまり関係ないため、より高い効果が期待できる。

 今回も検証にあたり、Secure Boot/ Resizable BAR、メモリー整合性やHDRといった設定は一通り有効としている。GPUドライバーはRadeon Software 24.7.1を使用した。

AMDテスト環境
CPU AMD Ryzen 9 9950X(16C32T、最大5.7GHz)
AMD Ryzen 9 9900X(12C24T、最大5.6GHz)
AMD Ryzen 7 9700X (8C16T、最大5.5GHz)
AMD Ryzen 5 9600X (6C/12T、最大5.4GHz)
AMD Ryzen 9 7950X3D (16C/32T、最大5.7GHz)
AMD Ryzen 9 7900X3D (12C/24T、最大5.6GHz)
AMD Ryzen 7 7800X3D (8C/16T、最大5GHz)
AMD Ryzen 9 7950X (16C/32T、最大5.7GHz)
AMD Ryzen 9 7900X (12C/24T、最大5.6GHz)
AMD Ryzen 7 7700X (8C/16T、最大5.4GHz)
AMD Ryzen 5 7600X (6C/12T、最大5.3GHz)
CPUクーラー NZXT Kraken Elite 360 (AIO、360mmラジエーター)
マザーボード ASRock X670E Taichi (AMD X670E、BIOS 3.06)
メモリー Micron CP2K16G56C46U5 (16GB×2、DDR5-5200/ DDR5-5600)
ビデオカード AMD Radeon RX 7900 XTX リファレンスカード
ストレージ Micron CT2000T700SSD3 (2TB、NVMe M.2、PCI Express Gen5)
電源ユニット Super Flower LEADEX PLATINUM SE 1000W-BK (1000W、80PLUS Platinum)
OS Microsoft「Windows 11 Pro」 (23H2)
インテルテスト環境
CPU インテル「Core i9-14900K」 (24C/32T、最大6GHz、Performance Power Delivery Profile)
インテル「Core i7-14700K」 (20C/28T、最大5.6GHz、Performance Power Delivery Profile)
インテル「Core i5-14600K」 (14C/20T、最大5.3GHz、Performance Power Delivery Profile)
CPUクーラー NZXT Kraken Elite 360 (AIO、360mmラジエーター)
マザーボード ASRock Z790 Nova WiFi (インテル Z790、BIOS 6.01)
メモリー Micron CP2K16G56C46U5 (16GB×2、DDR5-5600)
ビデオカード AMD Radeon RX 7900 XTX リファレンスカード
ストレージ Micron CT2000T700SSD3 (2TB、NVMe M.2、PCI Express Gen5)
電源ユニット Super Flower LEADEX PLATINUM SE 1000W-BK (1000W、80PLUS Platinum)
OS Microsoft「Windows 11 Pro」 (23H2)

DDR5-6000使用時の消費電力について

 本題に入る前にお詫びと訂正がある。筆者は前編においてDDR5-6000使用時にSoC Power(メモリーコントローラーが入っているダイの消費電力)が5W上昇すると書いたが、これは大きな誤りであった。今回はDDR5-6000での検証が必要とされた一方でRyzen 7 9700Xレビュー時のデータと整合性をとるため、G.Skill製DDR5-6400のモジュールを追加し、DDR5-6000として運用した。

 つまりDDR5-5600はMicron製モジュール、DDR5-6000はG.Skill製モジュールを使い、そのデータを混同し、メモリークロックを上げたからSoC Powerも上がったという結論に結びつけてしまった。モジュール違いによる消費電力が大きいという情報が欠落していた筆者の落ち度だ。前編の筆者のレビュープロセスや解説について問題があったことを読者ならびに関係者の皆様にお詫びしたい。

前編で紹介したSoC Powerの推移:DDR5-5600時のデータはMicron製モジュールを、DDR5-6000時のデータはG.Skill製モジュールを使用した時のもの

 では本当のところはどうなのかを含めて改めてRyzen 7 9700Xを利用して検証してみよう。ここではメモリーの構成を以下のような構成にしている(ベースの検証環境は前述の通り)。

メモリーの構成
DDR5-5600 (Micron) Micron製CP2K16G56C46U5(16GB×2)を利用し、DDR5-5600(EXPO)で動作
DDR5-5600 (G.Skill) G.Skill製F5-6400J3239G16GX2-TZ5NR(16GB×2)を利用し、DDR5-5600(EXPO)で動作
DDR5-6000 (G.Skill) G.Skill製F5-6400J3239G16GX2-TZ5NR(16GB×2)を利用し、DDR5-6000(EXPO)

 いずれもuclkとmclkは1:1、インテルで言うところのGear 1動作としている。検証方法は前回と同様「Handbrake」において4K動画をエンコードした際のSoC Powerの推移を「HWiNFO Pro」で追跡したものだ。

メモリーモジュールとクロックを変えた時のSoC Powerの推移

 G.Skill製のDDR5-6400モジュールをDDR5-6000や5600として運用した場合の消費電力に大きな差異はない。ところがMicron製DDR5-5600モジュールを使用した場合は4W程度低くなる。

 すなわち、Ryzen 9000シリーズでメモリークロックを上げたらSoCの消費電力があがったという筆者の観測は完全な間違いだが、よりクロックの高いOCメモリーモジュールではSoC消費電力があがった、が正しい認識となる。全体で使える消費電力に制約がある中でSoC Powerがより小さくなるメモリーモジュールを選ぶことが、TDP 65W仕様のRyzen 9000シリーズを使いこなす上で重要なファクターになるといえよう。

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