「フェアユース」認められた判例、認められなかった判例
やはり、最大の争点となるのは、Sunoの学習が「フェアユース」に当てはまるのかどうかということでしょう。
Sunoに投資しているMatrix Partnersのアントニオ・ロドリゲス(Antonio Rodriguez)氏は、5月のRolling Stone誌へのコメントで、Sunoが訓練されたあらゆる音楽のライセンスを持っていないことを認めていますが、「心配することではない」と述べていました。レコード会社が訴訟を起こす可能性があることは「私たちがこの会社に投資する際に引き受けなければならなかったリスクでしかない。多くのAI企業は、トレーニングは著作権のフェアユース・ドクトリンによって保護されている」と主張しています。
裁判が起こされることは予想されていたことであり、それをわかったうえでの展開であったことがわかります。
実際に、過去の裁判では、商用利用をしていたケースでもフェアユースが認められたケースがあります。セガの「メガドライブ」をリバースエンジニアリングして、ライセンスなしでゲームを出していた企業とセガが争ったケース。1992年の判決ではフェアユースが認められ、セガが敗訴しています。多くの生成AI企業がフェアユースを主張する根拠のひとつはこの判決に基づいています。
一方で、逆の判例もあります。
2023年5月、アンディ・ウォーホル財団に対して、写真家のリン・ゴールドスミス氏が著作権侵害を訴えた裁判。連邦最高裁は著作権侵害を認める判断をしました。現代芸術家として知られるウォーホル氏が、ゴールドスミス氏の写真を無許可で加工して、シルクスクリーンの別作品として展開したのは著作権侵害に当たるとしたのです。
今回の訴状では、「オリジナル作品と同じ、あるいは酷似した目的を達成するためにオリジナル作品を使用することは、……作品を代替する可能性が高く」と、この判決文を引用して触れています。そして、Sunoはコピーを通じて学習した作品により、オリジナル作品を代替することを目的としていると論じており、そのことから「フェアユースとなる可能性は低い」(P.26)と断じています。
つまり、お互いの主張は完全に真っ向から衝突しているのです。

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