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ERPのマイグレーションは「顧客企業とSAPの存続のために必要不可欠」、SAP Sapphireレポート

SAP CEOが語る「ビジネスAI戦略」と「マイグレーションの重要さ」

2024年06月28日 07時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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――SAPでは「クリーンコア」を提唱し、85%のビジネスプロセスを標準化すると述べている。顧客はこの方向性を理解しているのか? 「S/4HANA」とクラウドへのマイグレーションのゆくえをどう見ている?

クライン氏:(クリーンコアやビジネスプロセス標準化に対する理解や方針は)業界や顧客により異なるのが実情だ。

 例えば、Siemensは世界に100以上の工場をもち、クラウド戦略を進めている。SAPを利用して製造を運用していくにあたっては、できるだけ共通のテンプレートを用い、標準化された方法をとっている。これにより、ビジネスプロセスを簡素化する狙いだ。

 小売の例では、スイスのCoopは標準化されたビジネスプロセスを持ち、SAPとともに“ラストワンマイル”のプロセスを構築することで、さらにビジネスを迅速化している。ラストワンマイルを(コアのカスタマイズではなく)「SAP BTP(Business Technology Platform)」を利用して拡張することが重要だ。

 このように顧客各社の方針は異なるが、SAPはそうした異なるニーズをサポートできるアーキテクチャを持っている。プロセスベンチマークのSignavio、SAPの設計と実装のプロであるEnterprise Architectなど、顧客のジャーニーを支援するツールや支援も用意している。今回のSapphireでは、デジタルアダプションのWalkMeを買収する計画も発表した。

 われわれは、SAPのソフトウェアを利用する40万社を成功に導くという重要なミッションを背負っている。これはわれわれの「責任」だ。

 20年前の「Microsoft Office」をまだ使っている、という人はほとんどいないだろう。それと同じことで、ERPもアップグレードが必要だ。「未来はオンプレミスではなく、クラウドにある」ということも理解いただけるだろう。

 変化が難しいことは承知している。それでも、オンプレミスからクラウドにマイグレーションし、クラウドで提供されるさまざまな新機能、新技術を活用してビジネスを成功させてほしい。顧客のためにも、SAPは将来にわたって存在しなければならず、そのためには顧客のマイグレーションが不可避だ。

 (クラウドビジネスの数字を見ると)直近の決算(2024年第1四半期)では、クラウド売上が前年同期比25%増、クラウドERPは同32%増となっている。最も重要な指標であるカレント・クラウド・バックログ(CCB)は同28%増となり、140億ユーロを上回った。2024年はこのペースで成長を維持できると見ている。

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