静嘉堂@丸の内では6月22日(土)から、丸の内で初となる刀剣展、「超・日本刀入門revive」を開催中です。館蔵の国宝・重要文化財刀剣9件をはじめとして、「日本刀の黄金時代」と称される鎌倉時代を中心に、平安~南北朝の古名刀を大特集。静嘉堂@丸の内でおなじみの国宝《曜変天目(稲葉天目)》も展示されます!
そもそもの「刀の見方」をわかりやすくご紹介する入門編ですので、この夏休み、ぜひ大人の自由研究気分で楽しまれてみてはいかがでしょうか。もちろん、ファミリーでのご来館も大歓迎です。美術館で“本物”に触れる体験を、ぜひ!
と言ったところでふと、「“本物”ってなんだろう?」と考えさせられる原稿が館長から届きました。
本物と複製をめぐる、安村館長のこの夏のお仕事のことなど、ご紹介します。
「進化し続ける複製」
ひと昔前は、美術品の複製といえば、歴史系博物館で盛んに作られた。歴史系博物館では美術品に表わされた情報が重要だったからだ。その現象を美術館は冷たい視線で見ていた。美術館にとっては、“本物”が持つアウラこそ重要であったからだ。
ところが近年、この複製技術が格段に進化し、本物と判別できないどころか、複製そのものがアートとして販売されるまでになった。昨今話題の「NFT」がまさにそれだ。数年前に大英博物館が葛飾北斎の「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」をNFTとして売り出したという情報はショッキングであった。そもそも北斎の「浪裏」自体が木版摺で大量生産された複製であるのに、それのデジタル情報がNFT作品として流通するというのだ。昨今にあっては、複製の複製は本物になるということか。
このことにつき、以前から関心を持っていた西野嘉章氏が本年三月に『眞贋のはざま ―オリジナルとコピー』を平凡社から上梓されたので、詳しくはその本を読んで、様々な問題を考える糸口としていただきたい。
私はこの進化し続ける複製の問題を美術館としても真剣に考える必要があると考え、NTTアートテクノロジー社の協力を得て、本年七月、イギリスのセンズベリー日本藝術研究所と、信州小布施の北斎館共催で、複製に関する展覧会とシンポジウムを、センズベリーで開催することにした。シンポジウムには私の他、日本からは浅野秀剛(大和文華館館長)氏、イギリスからはニコル・ルマニエール(センズベリー日本藝術研究所・研究担当所長)氏ほかが発表を予定している。どんな議論となるかが楽しみだ。
先程のNFTの例のように、現在の複製は本物とほど遠いものが逆に本物になるという逆転状況にあるのではないか。とすれば、当館のミュージアム・グッズ「曜変天目ぬいぐるみ」が今や本物として愛玩されるのではないだろうか、とふと思ってしまうこの頃である。
安村敏信(静嘉堂文庫美術館館長)
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