コロナ明けの低迷期から回復するゲーム市場

テーマは「AI世代のゲームと遊び場」――浜村弘一氏の“ゲーム産業の現状と展望 2024年春季”をレポート

2024年06月10日 15時00分更新

文● ミヤザキ/ASCII

サブスクやVR、PCなどの展開も

 ゲームのサブスクリプションサービスについてとして、浜村氏はXbox Game Passの会員が3500万人になったこと、またXboxタイトルがマルチプラットフォーム展開を始めたことに触れた。浜村氏は、マイクロソフトは多くのユーザーにXboxタイトルを遊んでもらうことでユーザーコミュニティを広げたうえで、Xbox Game Passがお得だと認知してもらおうとしているのだろうと推察した。

 また、動画配信サービスでのゲームサブスクについても言及。Netflixは、2023年第4四半期の決算にて、ゲームのエンゲージメントが3倍に伸びていると発表。これは、2023年12月に配信された『グランド・セフト・オート:トリロジー』がきっかけと言われているという。このゲームがNetflixに入っていると遊べるというのが、非常にユーザーに響いたのだろうと浜村氏。

 クランチロールは2023年11月7日にゲームサービス「クランチロール・ゲームヴォルト」を開始。これは同サービスの有料会員が追加課金なしに無料でモバイルゲームを遊べるというもの。ローンチタイトルとしては、集英社ゲームズの『キャプテン・ベルベット・メテオ ジャンプ+異世界の"小"冒険』、アークシステムワークスの『熱血硬派くにおくん外伝 River City Girls』があるという。

 動画配信サービスはコロナ後も勢いを伸ばす急成長市場。他社との差別化としてゲームを取り込むサービスもまだまだ出てきそうだと浜村氏は予想した。

 上記以外のゲームのサブスクにも浜村氏は触れた。1つは、Googleが提供するGoogle Play Pass。もう1つはApple Arcade。

 Google Play Passは月額料金を支払うことでGoogle Playのゲームやアプリが使い放題なうえ、登録者向けにゲーム内アイテムの割引きが可能になるといったサービス。Googleもゲームに力を入れ始めた気配だと浜村氏は語った。

 そしてすでにサービス中のApple Arcadeでは、国内パブリッシャーのタイトルが増えているという。『ぷよぷよ』や『パズドラ』『サンバ・デ・アミーゴ』といった定番タイトルを提供することで、メーカーは新たな客層にリーチできるのではとタイトルを増やしているところだと浜村氏。

 なお、モバイルアプリでは『Pokémon Trading Card Game Pocket』が注目と浜村氏は語った。こちらは2024年内サービス開始予定だ。

 サブスクの次は、VR市場については、メタがOculus Questシリーズに搭載しているOSを他社にも展開すると発表したこと、またマイクロソフトがOcullus QuestでXboxのゲームが遊べるXbox Cloud Gamingを配信することにも触れた。これらにより、Oculus、マイクロソフトともにユーザーコミュニティの拡大に繋がるのではと浜村氏。

 また、VRの注目のハードとしてApple Vision Proにも触れた。アプリには新しいタイプのゲームが用意されており、その例として、視線でタイピングを行なう『Ninja Gaze Typing』を紹介。Apple Vision Proは、日本国内では年内に発売予定だ。

 世界で伸び盛りのPC市場。最も大きなプラットフォームであるSteamは、同時接続数が右肩上がりに増加。同じくPCプラットフォームとなるEpic Games Storeもユーザーが前年に比べて17%も増えているという。Epicはモバイル市場にも展開するということで、より強力なプラットフォームになっていくだろうと浜村氏は述べた。

 ソフト市場としては、インディーゲームの盛り上がりに注目。『Palworld / パルワールド』の名を挙げ、発売から1ヵ月で2500万本の売上を達成したことは驚異的だと述べた。これまでインディーゲーム開発者たちをプラットフォーマーやパブリッシャー、出版社などいろいろなところが支援してきたが、経済産業省も支援する動きがあることにも触れた。

 また、Epicの『フォートナイト』に『レゴ』や『ロケットリーグ』が参入したことにも浜村氏は言及。これまではゲームハードなどに参入していたメーカーが、ゲームに参加することは非常に珍しいとのこと。

 加えて、Epicにはディズニーも出資を発表しており、『フォートナイト』でディズニーのIPを活用したバーチャルスペースを展開予定。仮想ディズニーランドが『フォートナイト』の世界に生まれるとしたら、非常に夢のあることだと浜村氏は述べた。

 同じく、ユーザーや個人開発者が自作のゲームを展開できるプラットフォームの『Roblox』にて、「Walmart Discoverd」でバックやヘッドフォンなど特定の商品を購入すると、Roblox内のアバター用に該当商品が入手できるほか、実際に現実でも商品が届くという試みを開始したことを紹介。

 『フォートナイト』でもアパレルブランドの商品をキャラクターに着せられて、自分でも買うことができるという施策をやっており、浜村氏はいよいよメタバースと現実の境界線がなくなってきそうだと感慨深げに語った。

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