まつもとあつしの「メディア維新を行く」 第108回
〈後編〉Aiming小川文也さんインタビュー
『陰実』のDiscordが熱い理由は、公式ではなく「公認」だから!?
2024年11月24日 15時00分更新
〈前編はこちら〉
『陰実』人気の秘密はDiscordにあり!?
劇場版も控える人気作品『陰の実力者になりたくて!』。今回注目したのは、『陰実』ファンが集う公認Discordサーバー。さまざまなメディア展開を越えてファンが語り合う熱量の高い場所で、まさにファンコミュニティーの最前線と言える。
前編に引き続き、ゲーム「陰の実力者になりたくて!マスターオブガーデン」のマーケティングディレクター・小川文也さんに、Discordサーバー管理の実際、ゲームオンリーではなく『陰実』全体のコミュニティーとして立ち上げた理由など幅広くお話をうかがった。
『陰の実力者になりたくて!』introduction
「陰の実力者」
それは、主人公でも、ラスボスでもない。普段は実力を隠してモブに徹し、物語に陰ながら介入して密かに実力を示す存在。この「陰の実力者」に憧れ、日々モブとして目立たず生活しながら、力を求めて修業していた少年は、事故で命を失い、異世界に転生した。
シド・カゲノーとして生まれ変わった少年は、これを幸いと異世界で「陰の実力者」設定を楽しむことにする。「妄想」で作り上げた「闇の教団」を倒すべく(おふざけで)暗躍していたところ、どうやら本当に、その「闇の教団」が存在していて……?
ノリで配下にした少女たちは勘違いからシドをシャドウとして崇拝し、シドは本人も知らぬところで本物の「陰の実力者」になっていき、そしてシドが率いる陰の組織「シャドウガーデン」は、やがて世界の闇を滅ぼしていく――。
主人公最強×圧倒的中二病×勘違いシリアスコメディ!?
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原作者監修のシナリオをプレイできる!
「陰の実力者になりたくて!マスターオブガーデン」
主人公のシャドウはじめ、原作でおなじみのキャラクターが登場する完全新作の3DアニメーションRPG。原作者・逢沢大介先生が監修したオリジナルシナリオの存在も見逃せない。2022年11月に全世界165ヵ国同時期リリース、現在はiOSおよびAndroid対応端末、Windowsにてプレイ可能。プレイ料金は基本無料(一部アイテム課金制)。
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『陰実』のDiscordが公式ではなく「公認」である理由
小川 『陰実』のDiscordの立ち位置は「公認」なんです。公式でもなければプレイヤー派生でもなく、公認としてメディア運営に長けたナイル株式会社さんに運営してもらっています。
まつもと それは結構重要ですね。
小川 公認にしたのは、公式のコミュニティーとしてゲーム運営が管理人になった場合、『公式が常に見ているという意識が生まれ、自由な発言の抑制や話題の方向性に制限がかかり、活発な場になりにくいのではないか』と考えたからです。また、公式が見ていることは、お問い合わせやご意見に関する投稿が増加するとも考え、ファンコミュニティーではなく、ご意見どころという側面が強くなってしまうと考えました。
まつもと わかります。なんというか、“お客様とお店”以上の関係になっちゃうんですよね。それに、お問い合わせって、早期回答を当然希望されますが、想像以上にさまざまな関係部署との打ち合わせと合意を経ないと公式見解を答えられないものですから、期待された早さを提供するのは難しいですよね。
小川 お問い合わせやご意見に関する投稿が主のコミュニティーになった場合、そこは不満の吐き場所となります。こうなると、空間の方向がネガティブに向かい、参加者の居心地が悪くなると考えました。とは言え、プレイヤーの自主的な動きに任せる“自発”も難しいと考えています。
距離感が近い同好の士がそれぞれ集まって……という、要するにギルドコミュニティーが個々に作られることはあっても、自分たちで『陰実』のデカい総合コミュニティー作ろうぜ!」とはならないと考えました。
一方、私たちとしては“ファンみんなが集まり自由に話し合える場所”を作りたいという思いがありますので、ギルドではなく公式でもない、中間の立ち位置として「公認」というかたちにした、というのが背景としてあります。
まつもと なるほど。コミュニティーが公認だということはアナウンスされているわけですか?
小川 ゲームから参加を促すときも「公認Discord」と言っています。
まつもと サーバールールの最初の投稿を見ていますが、確かに「公認コミュニティへようこそ」と宣言されていますね。
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