Datadogは、2024年4月1日、2024年度の事業戦略に関する説明会を開催。2024年2月1日付けでDatadog Japanの社長兼日本担当ゼネラルマネージャーに就任した正井拓己氏より、重点分野などが語られた。
正井氏は、日本法人社長への着任および直近のDatadogの目標として「日本市場で“名実”ともにナンバーワンのオブザーバビリティの統合プラットフォームベンダーになること」を掲げた。
クラウドの進化に伴う“複雑化”を解決する統合プラットフォーム
Datadogは、2010年にニューヨークにて創業。今では、グローバルでのユーザー企業数は2万7000社を超え、2023年度の売上も対前年比で30%以上成長。ビジネスを順調に伸ばしている。
正井氏は、業績が好調な背景として「企業のクラウド移行」「DXの進展」を挙げる。一方で、クラウドの進化に伴い技術は多様化し、インフラも動的なものに変化、サービスのリリース頻度もあがり、DevOpsにとどまらない他部門との連携も求められている。正井氏は、「企業のシステムは爆発的に“複雑化”しており、それを解決するのがDatadogである」と強調する。
「システムのモニタリングツールのベンダーという印象を持っている人もまだまだ多いが、現在のDatadogは異なる」と正井氏。同社は、インフラ監視やAPM(アプリケーションパフォーマンス管理)、ログ管理といった“オブザーバビリティ”に不可欠な監視、運用の領域からビジネスを開始した。
そこから、セキュリティ部門がポイントソリューションの乱立で管理が複雑化している状況を受けて、クラウドセキュリティの領域にも進出。開発チームとテストチーム間の壁やツールのサイロ化を解消すべく、デベロッパーエクスペリエンスの領域へ。さらには、ビジネスに直結するユーザーの課題を解決するために、デジタルエクスペリエンスの監視にまで領域を広げた。
そして今では、クラウド環境を含む複雑なシステム全体を統合的に把握して、安全性を担保し、コミュニケーションや自動化を推進する、クラウドサービス管理の領域へと足を踏み入れている。
これらの各領域における多様な機能を、AIや機械学習も活用できる統一されたプラットフォーム上で提供することで、あらゆる場所で、誰もが利用可能な、組織の壁を破壊するオブザーバビリティプラットフォームを展開する。
「最初は一部機能から利用しはじめるお客様も、ほどなく複数製品を利用するようになり、やがてはシステム部門を横断する統合プラットフォームとして活用するようになる」と正井氏。実際に、年間サブスクリプションが10万ドル(約1500万円)以上のユーザー企業の比率が、2023年度には86%に達したという。
2024年の日本市場における5つの重点戦略
日本市場のビジネスもグローバルと歩調を合わせて成長を続けている。2020年から2023年までのサブスクリプション売上の平均成長率は43%増であり、パートナー経由での売上の平均成長率も36%増となっている。各業界での導入も進む。
国内の代表的なユーザー企業として、NTTドコモが紹介された。同社は、クラウド化に伴い複雑化する運用管理を強化すべく、主要32システムにおいてDatadogを活用。運用部門だけではなく、開発部門やビジネス部門でもDatadogのダッシュボードを活用することで効率化が進み、組織の生産性は2倍に向上したという。
同じくユーザー企業のJCBでは、オンプレミスの既存システムではシステム改修に時間を要し、ビジネスのスピードに合わせられないという課題を背景としてクラウドネイティブ基盤を構築。それににあわせてDatadogを導入した。自動検知とAPMでインシデント対応を迅速化し、統合機能やIaC化によって運用工数の削減につなげているという。
正井氏は2024年の日本法人の重点戦略を5つ挙げる。
ひとつ目は、「日本市場の継続的なコミットメント」だ。2023年は、国内データセンターや東京オフィスの開設など、2018年の日本法人立ち上げからの一連のコミットメントに一区切りがついたという。2024年からは「次の5年」に向けた体制強化を図っていく。ローカライズにも注力しており、日本語での技術ドキュメントや製品サポートを展開している他、2024年2月には、日本語での認定資格試験も開始した。
2つ目は、「パートナー企業との協業の加速」だ。2022年には、ポストセールスのトレーニングやガイダンスなどを提供するテクニカルアカウントマネージャー(TAM)とテクニカルイネーブルマネージャー(TEM)を開始。さらに今後は、直販強化と並行してクラウドサービスプロバイダーおよびチャネルパートナーとの協業拡大していく。
3つ目は、「市場カバレッジの強化と新規顧客の一層の開拓」だ。これまでの大企業向け、中小企業向けに編成していたセールス組織に加え、新たに中規模企業向けの担当組織を立ち上げる。
4つ目は、「導入製品・適用範囲の拡大と全社基盤化」。監視領域だけではなく、セキュリティ領域など多面的な提案活動に注力して、ユーザー企業内で横展開する、全社的プラットフォームとしての導入を推し進める。
最期は「日本市場でのプレゼンス向上」だ。顧客事例発信やコミュニティ活動の強化、フラッグシップイベントの開催などで、プレゼンスを上げていく。Datadogは多様な機能ゆえに、使いこなすには知見を要するという側面もあるが、先進ユーザーを含めた“ユーザー中心”のコミュニケーションを促すことでその課題を解消する狙いもある。
正井氏は、「実績はもちろん、市場でのプレゼンスや評価といった知名度も含めた、オブザーバビリティの統合プラットフォームにおけるナンバーワンベンダーを目指したい」と語った。