あるとき、冬の上着はポケットが大きいな、そこにカメラをスポッと入れて出かけたら、スマホとカメラだけで手ぶらで出かけられて楽だな、と思ったのである。バッグをいちいち持っていくのは大変だし。
でも、さすがにミラーレス一眼はいらない。あ、昔使っていたコンパクトデジカメを復活させてみよう。とまあ単純な理由だ。候補は2台。
望遠には弱いけど、超広角と自撮りに強いカシオの「EX-ZR4000」。2016年のモデルだ(その翌年にマイナーチェンジの「EX-ZR4100」が誕生し、その翌年にカシオがコンパクトデジカメ市場から撤退した)。
もう1台は、望遠に強いオリンパスの「STYLUS 1s」。こちらは、2014年のモデル。EVF搭載で、28-300mm相当でF2.8というレンズが売り。どっちも当時のハイエンド機なので(センサーは1/1.7型で約1200万画素だ)、写りは悪くないのだ。
左が、オリンパスの「STYLUS 1s」。自動開閉カバーがいい。右が、当時貴重だった超広角系コンデジのカシオ「EX-ZR4000」。どちらも当時よく使い込んでたモデルだ。ZR4000のレンズ脇のボタンは、自撮り用のフロントシャッター。
近距離なら、ZR4000の出番である。指を差し出して挨拶したら、くんくんと匂いを嗅いだのちにこっちを見上げた瞬間を。広角ならではの近距離感がいい。
さらに近づいてきたら、ZR4000ならではの自撮りモードの出番。モニタを180度反転させ、フロントシャッターを使えば、猫が真横に来てもこんなふうにちゃんと撮れるのである。えらいもんだ。
撮影時のイメージとしては、こんな感じ。親指でフロントシャッターを押そうとしてるところを無理やり撮ってみた。
望遠は、95mm相当までとそれほどでもないけど、モニタを開いて地面すれすれから、こんなローアングル撮影もできる。
望遠は、STYLUS 1sの出番。さっきZR4000で撮った足元に食い込んできたキジトラ猫。出会ったのは、とある神社の境内だ。首輪をしてるし、人懐こいからきっと神社で飼われているのだろう。
人懐こかった証拠に、私の足元に飽きたら(何かもらえると思ったか?)、今度は遠くにいる別の参拝客の足元に行って、すりすりし始めたのである。
急に猫がやってきたのを見たそのおばあさまは、慣れた調子で頭を撫でたのだった。地元の人にはなじみなのかもしれない。
これもモニタがチルトするので、地面すれすれの猫目線で望遠撮影。
猫を撫でてたのは地元のおばあさまなんだが、このあと、足の周りを体をこすりつけながらぐるっと回って、こっちを睨んだのだった。常に体をこすりつけつつこっちを見てるんだけど、その角度が実にいい。
もう1枚行こう。これは買い物帰りにぶらぶら歩いてたら、「里親募集」と書いた貼り紙のある家を発見。このおうちは猫が好きなんだな、と顔を上げると、奥に黒がまじった白猫がちょこんと座ってるではないか。
思わずポケットに入れていたSTYLUS 1sを撮り出して、望遠でパシャリ。横にぶら下がってるオウム(ほんものじゃない……よね)がいい味を出してくれた。
古いカメラなので猫AFはないし(当たり前だけど)、最新機種に比べるとAFは遅いし高感度にも弱い。でも、使ってみると悪くないのである。
当時の撮影のコツを思い出しながら撮影すると、実にいいコンパクトカメラだったんだなあと思う。特に、STYLUS 1sは、300mm相当でF2.8と明るいレンズなので、望遠で猫を撮りたいときにちょうどいいのだ。
手元にこの頃のカメラ(1/1.7型で約1200万画素のセンサーがミソ)を持ってたら、復活させてみるのも一興ですよ。
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筆者紹介─荻窪 圭

老舗のデジタル系フリーライター兼猫カメラマン。今はカメラやスマホ関連が中心で毎月何かしらのデジカメをレビューするかたわら、趣味が高じて自転車の記事や古地図を使った街歩きのガイド、歴史散歩本の執筆も手がける。単行本は『ともかくもっとカッコイイ写真が撮りたい!』(MdN。共著)、『デジタル一眼レフカメラが上手くなる本』(翔泳社。共著)、『古地図と地形図で楽しむ東京の神社』(光文社 知恵の森文庫)、『東京「多叉路」散歩』(淡交社)、『古地図と地形図で発見! 鎌倉街道伝承を歩く』(山川出版社)など多数。Instagramのアカウントは ogikubokeiで、主にiPhoneで撮った猫写真を上げている。Twitterアカウント @ogikubokei。ブログは http://ogikubokei.blogspot.com/

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