2024年初頭には、Vertex AI・Duet AIをGeminiで強化
GoogleのマルチモーダルなAIモデル「Gemini」、開発者・企業向けにプレビュー開始
2023年12月15日 07時00分更新
ファンクションコーリング、外部連携、グラウンディング ― Vertex AIも機能拡充中
AIモデルだけではなく、生成AIアプリケーションの開発を支えるVertex AIの直近のアップデートも紹介された。
開発者からの要望が最も多かったというのが、LLMにタスクを実行させるための関数を渡すことができる「Vertex AI Function calling(パブリックプレビュー)」だ。これにより任意のタイミングで必要となるタスクを関数で実行でき、モデルの枠組みを超えたアクションが実現可能になる。
「Vertex AI Extensions(プライベートプレビュー)」は、LLMが外部のデータソースに対して、クエリの実行やデータ変更ができないという課題に対応する拡張機能になる。同機能で、LLMが外部システムのAPIに接続し、さまざまなタスクを実行できる。ハルシネーション対策の1つである、社内データに基づく生成AIの回答を実現するRAG(検索拡張生成)の構築も可能になる。
「Grounding in Vertex AI(パブリックプレビュー)」は、Vertex AI Searchに登録した独自データに基づき生成AIに回答させる機能で、ハルシネーション対策となるグラウンディングを実現。どのデータに基づき回答されているかを提示するCitation(引用)機能も備える。
「Distillation Step-by-Step(パブリックプレビュー)」は、AIモデルのパラメータサイズを小さくし、より効率的に動作するモデルを構築する蒸留(Distillation)の技術を実現する。同機能により推論におけるコスト効率を向上させ、遅延を抑えることができる。現時点では、PaLMの最も大きなサイズのユニコーン(教師モデル)から下のサイズのBison(生徒モデル)までに対して蒸留が可能だ。
さらに、Googleの検索技術を利用したVertex AI Searchとノーコードでの会話アプリケーションを構築できるVertex AI Conversationを、2024年早期に、Geminiによって強化することを発表した。
AI Searchは、Gemini Proにより、検索の品質、精度、グラウンディングの性能が強化され、マルチモーダルなデータを1つのクエリで検索、取得できるようになる。Vertex AI Conversationについても、Gemini Proにより、高度な推論が可能となり、コンタクトセンターのエージェントアシスト機能を追加し、ユーザーインタラクションも強化する。
また、Vertex AI Conversationにおける「Generative Playbook(プライベートプレビュー)」機能では、自然言語の指示と構造化データを、Playbookという形でLLMに渡す。エージェントが実行するフローやアクションを自動で生成し、会話Botのフロー作成が容易になる。
Duet AIにもGeminiを適用、アプリ開発を支えるVertex AIの位置付けを強調
生成AIアシスタントである「Duet AI」に関しては、Google Workspace向けの「Duet AI for Workspace」に対して、2024年早期にGeminiが適用される。これにより、GmailやGoogle Meet、Google Docs、Google Slidesといった各Workspaceの機能がパワーアップし、より生産性が向上することになる。
さらに、Duet AI for Workspaceおよび、開発者向けの「Duet AI for Developers」、セキュリティ担当者向けの「Duet AI in Security Operations」が一般提供を開始した。
今回、Google Cloudは、Geminiを中心としたAIモデルのアップデートに加え、Vertex AIの強化や開発プラットフォームの重要性を強調した。「AIモデルを使って終わるのではなくて、アプリケーションを組み上げるところに重きを置いている。モデルの性能もポイントだが、最終的には、課題を解決するためにどのようなテクノロジーが使えるかが重要」と下田氏。
寳野氏は「Vertex AIを、生成AIアプリケーションの開発から実装までを担う、最高のプラットフォームにすることを目指している。どのAIモデルでも同じように利用でき、簡単に試せるような環境を用意する。GoogleのAIモデルに磨きをかけていく一方で、ユーザーにはベストなモデルを選んでいただく」と述べた。