今回のひとこと
「デジタルサービスの会社へと変化を遂げることに対しては、資本市場からも賛同を得ている。だが、経営陣が十分な信頼を得られていないこと、自分たちの論理で、これがベストだと判断する傾向が多々あったことを反省している」
デジタルサービスへの資源集中を加速、本社機構の大胆な改革を実行
リコーは、「企業価値向上プロジェクト」を2023年5月から開始している。その取り組みをさらに加速することをこのほど発表したが、その内容からは、改革に向けた、かなりの本気ぶりが伝わってくる。
デジタルサービスへの資源集中をさらに加速する考えを示す一方、本社機構の大胆な改革を実行。さらに、売上高1800億円に相当する10事業を対象に撤退および売却を検討することを盛り込んでおり、まさに大鉈(おおなた)を振るう内容となっているからだ。
発表した変革プログラムでは、「本社改革」、「事業の選択と集中の加速」、「オフィスプリンティング事業の構造改革」、「オフィスサービス事業の利益成長の加速」の4つに取り組むことになる。
「本社改革」では、R&Dの適正化と間接機能の適正化の2点をあげ、リコーが目指すデジタルサービスの中核を担う「ワークプレイス」領域へのR&D費用を増加。その一方で、それ以外の領域への投資は減少させ、2025年度までの全社R&D費用を800億円規模に縮小する。その結果、約300億円の支出改善効果を想定する。また、2024年4月に、新たな本社組織を発足。本社機能を見直すとともに、AIを活用した業務の効率化や業務の削減、それに伴う本社の適正人員数への見直しも行う。
リコーの大山晃社長兼CEOは、「R&D費は10年間変わらないままであり、デジタルサービスの会社として、適正な研究開発テーマへの見直しが進んでいなかった反省がある。また、シーズ志向で技術に投資し、事業化や収益化が難航していた。将来、目指す事業構造から逆算して、事業別の研究開発テーマを見直し、適正に資源配分をしていく」と語ったほか、「本社機能は、OAメーカー時代の中央集約体制から完全には脱却できていない。顧客接点において、多くの価値を創造するデジタルサービスの会社として相応しい体制に見直す」と述べた。
2つめの「事業の選択と集中の加速」では、低収益となっているノンコア事業からの撤退および売却判断を行うことを示した。ここでは、売上高1800億円に相当する10事業を対象に検討する考えを示した。さらに、ノンコア事業のうち、3事業を出口プロセスに移行し、15億円の収益改善効果を見込むという。
大山社長兼CEOは、「出口戦略および実行を担う専門部隊を2023年10月から始動している」とし、「シーズ志向の新規事業には投資が分散したり、リコーが持つ知識が低かったりして、成功確率が低い状況にあり、全社収益に貢献する事業を生み出せていない。これらは抜本的見直しを行う。デジタルサービスの会社としての将来に貢献しない事業や低収益事業は、2025年度までに適切な出口を探していくことになる」と断言した。
3つめの「オフィスプリンティング事業の構造改革」では、働き方の変化やペーパーレス化の動きなどを捉えて、今後、オフィスプリンティング市場が縮小することを前提に、販売体制やサービス体制を改革。間接業務の重複解消、DX化を促進する。さらに、2024年に本格的にスタートする東芝テックとのジョイントベンチャーも、この領域における事業モデルの転換につながり、技術や設備の共有化による生産、開発体制の効率化などを進める。「攻めの施策と守りの施策により、オフィスプリンティング事業の売上高が減少しても、現状水準の収益額を確保できるコスト構造を目指す」という。
最後の「オフィスサービス事業の利益成長の加速」は、今後の成長戦略の軸になる取り組みだ。既存顧客に対するオフィスサービスの導入率の向上に加えて、顧客あたりの導入商材数の増加、高収益なストック商材比率の拡大、インサイドセールスなどを活用した販売体制の見直しなどに取り組む。
ここでは、エコシステムの構築にも余念がない。RSI(RICOH Smart Integration)を通じた自社および他社商品との連携を強化。サイボウズとの連携によって展開しているRICOH kintone plusのように、他社との共同開発による商品展開も視野に入れるほか、継続的なM&Aを推進する考えを示した。
同社では、2024年3月に予定している中期経営計画の進捗説明会で、これらの内容をより詳細に説明するという。
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