まつもとあつしの「メディア維新を行く」 第95回
【前編】ParadeAll 鈴木貴歩さんインタビュー
なぜ日本の音楽業界は(海外のように)ストリーミングでV字回復しないのか?
2023年11月18日 15時00分更新
「日本はCDが突出して売れている国」と思いがちだが……
鈴木 言い方を間違えると公正取引委員会から声がかかりかねないので安易なことは言えないのですが、日本とドイツを同じくらいの単価に調整したとすると、2018年のデータで言えば、日本では1.27億人の人口に対して7160万枚の音楽CDが売れています。
一方でドイツでは、2018年のデータを入手できなかったんですけども、2016年のデータでは8200万人の人口に対して7680万枚が売れています。このとき、日本では4割くらいがデジタルでの販売に移行していて、CDはドイツよりも売れてないことがわかります。
また日本では、この数字に「複数枚買い」の要素も入ってくるので、自分なりに予測を立てると、「売上は横ばい、せいぜい微増では」と。
2021年のブログで私が提言していたのは「高付加価値+高価格帯の導入」です。まず値上げをする。昨今のインフレによってグローバルで値上げ傾向がありますから、それが日本にも波及するのは当然のことです。
そして、高音質や高付加価値による高価格帯でサービスを提供することを提言したのですが、結局Apple Musicが価格そのままで高音質の楽曲を提供したことで、高付加価値+高価格帯にシフトしていく流れも難しくなっていきました。
まつもと 最初のお話にあった音楽ビデオはどうなんでしょう? デジタル化に対して何らかの影響があるのか、あるいは価格という部分でストリーミングコンテンツとして何かやりようがあるのか?
鈴木 そうですね……デジタルの高価格商品はやはりなかなか難しいので、今のDVDを単純にデジタルに移行するのは難しいかなと思います。
まつもと ファンにとってはコレクションアイテムになっているわけですね。だからパッケージであってほしいし、パッケージであれば高価格でも許容できて、そこに価値を感じてくれる。でもデジタルになったときにどうなるか、というところですね。
〈後編は明日公開〉
〈連載一覧はこちら〉
この連載の記事
-
第106回
ビジネス
ボカロには初音ミク、VTuberにはキズナアイがいた。では生成AIには誰がいる? -
第105回
ビジネス
AI生成アニメに挑戦する名古屋発「AIアニメプロジェクト」とは? -
第104回
ビジネス
日本アニメの輸出産業化には“品質の向上よりも安定”が必要だ -
第103回
ビジネス
『第七王子』のEDクレジットを見ると、なぜ日本アニメの未来がわかるのか -
第102回
ビジネス
70歳以上の伝説級アニメーターが集結! かつての『ドラえもん』チーム中心に木上益治さんの遺作をアニメ化 -
第101回
ビジネス
アニメーター木上益治さんの遺作絵本が35年の時を経てアニメになるまで -
第100回
ビジネス
『THE FIRST SLAM DUNK』で契約トラブルは一切なし! アニメスタジオはリーガルテック導入で契約を武器にする -
第99回
ビジネス
『THE FIRST SLAM DUNK』を手掛けたダンデライオン代表が語る「契約データベース」をアニメスタジオで導入した理由 -
第98回
ビジネス
生成AIはいずれ創造性を獲得する。そのときクリエイターに価値はある? -
第97回
ビジネス
生成AIへの違和感と私たちはどう向き合うべき? AI倫理の基本書の訳者はこう考える -
第96回
ビジネス
AIとWeb3が日本の音楽業界を次世代に進化させる - この連載の一覧へ