日立製作所は、2023年11月1日付けで、Hitachi Vantaraのデジタルソリューション事業を分社化して新会社を設立するなど、ITサービスに関連する国内外の組織を再編すると発表した。今後、生成AI活用やOT×ITのシナジー強化などを通じて、Lumada事業の成長を加速させる。あわせて次期中期経営計画期間中を目標に、海外ITサービス事業で売上高1兆円を目指す方針も明らかにした。
具体的な組織再編としては、Hitachi Vantaraのデジタルソリューション事業を分社化して、Hitachi Digital Servicesを設立。CEOには、ロジャー・レヴィン氏が就く。同社は、クラウドやデータ、IoTを駆使したサービスをベースに、海外の社会インフラや産業分野を対象に、OT×ITを実装するインテグレーターとしての役割を果たすほか、生成AIに重点投資する。「OTとITをつなぐ新会社」と位置づけだ。
一方で新生Hitachi Vantaraは、生成AIを支えるストレージおよびハイブリッドクラウドをコアとしたデータインフラストラクチャーに特化して、ブランド確立を狙う。新CEOには、シーラ・ローラ氏が就任。「世界トップクラスのハイブリッドクラウドベンダーを目指す」という。
国内では、2024年4月1日付けで、日立製作所の100%子会社として日立ヴァンタラを設立。日本で展開してきた日立製作所のITプロダクツ事業部門を同社に統合し、新生Hitachi Vantara傘下の企業として、データインフラストラクチャー事業を担う。日立ヴァンタラの社長には島田朗伸氏が就く。
これらの再編対象となる社員は、グローバルで1万人規模になるという。
“One Hitachi”で生成AIの需要を取り込み、Lumada事業を拡大
日立製作所 代表執行役 執行役副社長 デジタルシステム&サービス統括本部長の德永俊昭氏は、「今回の再編は、日立全体が“One Hitachi”で力強く成長していくために重要なものになる。生成AIの登場による大きな変化を捉えるとともに、日立グループの最大の強みといえる鉄道やエネルギー、産業といったOT分野とのシナジーを加速し、OTとITのインテグレーションを強化して、価値を作り出すことを目的としている。2024中期経営計画の達成はもちろん、その先においても、グローバル事業を伸ばしていくために必要な取り組み」と説明する。
再編後のHitachi Digital Services、Hitachi Vantara、日立ヴァンタラは、2021年に買収したGlobalLogicとともに、One HitachiでLumada事業の協創サイクルを拡大し、グローバルでの成長を支えるという位置づけだ。
また、日立製作所 執行役専務 クラウドサービスプラットフォームビジネスユニット CEOの阿部淳氏は、「ストレージなどのデータインフラ事業と、クラウドマネージドサービス事業では、市場やパートナー、従業員のスキルも異なる。ひとつの会社でカバーするよりも、人財や投資をそれぞれに集中させた方が、顧客ニーズに深く入り込んだ、丁寧な対応につながる。データを効率的に活用するために、データインフラストラクチャーと、OT×ITのインテグレーションによるドメインソリューションやクラウドマネージドサービスをつなぎ、生成AIの爆発的な需要やイノベーションを取り込んでいく」と、再編の狙いを語った。