Windowsノートが変わる!? クアルコム「Snapdragon X」がやってきた! 第2回
PC向けプラットフォーム「Snapdragon X Elite」が話題だが「Snapdragon 8 Gen 3」もAIが進化
2023年10月27日 10時00分更新
◆Oryonはモバイルにも採用される
Oryonにまつわるもう1つのトピックは、次期モバイル(スマホ)向けプラットフォームのCPUとしても採用されるというアナウンスされたことだ。アモン氏は、サプライズの発表として、「このOryonは、2024年のSnapdragonモバイルプラットフォームにもやってくる」と語っている。Snapdragon Summitでは、Snapdragon 8シリーズの最新モデルとなるSnapdragon 8 Gen 3もお披露目されたが、この次に来るのがOryon搭載チップということになる。
従来どおり、世代を上げて「Snapdragon 8 Gen 4」にするのか、PC向けのSnapdragon X Eliteのようにリブランドするのかは不明だが、翌年発表されるチップセットの中身を、一部とはいえ、現時点で公開してしまうのも異例だ。それだけ、クアルコムがOryonの完成度に対しての自信と期待ががうかがえた。
モバイル向け「Snapdragon 8 Gen 3」はAIが大きく強化
このような発表にお株を奪われてしまった感もあったSnapdragon 8 Gen 3だが、こちらはこちらで、AIの処理能力を大きく強化している。NPUに衣替えした(昨年まではDSPと呼ばれていた)Hexagonは、処理能力が98%向上した一方で、消費電力は40%低減している。また、Metaとの提携で、同社の大規模言語モデルである「Llama 2」に対応。これを活用したAIアシスタントが、デバイス上の処理だけで利用可能になる。
基調講演には、MetaのCEO、マーク・ザッカーバーグ氏がビデオメッセージを寄せ、Llama 2をSnapdragon 8 Gen 3に対して最適化したことへの期待が語られた。同チップに内蔵される「Qualcomm Sensing Hub」は、Open AIの「Whisper」に対応。INT4の精度にも対応している。このほか、AIフレームワークの「PyTorch」と提携するなど、生成AIに関する機能が強化されている。
こうした性能を生かした機能の1つとして、カメラの生成AI対応がうたわれた。「Photo Expansion」と呼ばれる機能で、これはカメラに写っていない、フレーム外を生成AIが描いてしまうというもの。現行チップセットの「Snapdragon 8 Gen 2」で取り入れられた、被写体を分析し、それぞれに最適な処理を施す「セマンティックセグメンテーション」も、より細かくパーツを分解できるようになっている。
生成AIの活用を推し進めることで、フェイク画像が乱造される懸念もあるが、クアルコムはこうした課題にも同時に対応。Snapdragon 8 Gen 3では、データの編集や加工の履歴を残すための「C2PA」を利用可能になった。C2PAは、AdobeやIntel、ARM、マイクロソフトなどが立ち上げた電子署名の標準規格。スマホ側がこれに対応することで、写真や画像の“出自”をより把握しやすくなる。
◆「Xiaomi 14」にSnapdragon 8 Gen 3が搭載
例年、新しいスマホ向けのチップセットとともに、これを採用するメーカー名も明かされているが、今年のSnapdragon Summitでは、Xiaomiの幹部が登壇。26日に発表が予定されている同社のフラッグシップモデル「Xiaomi 14」に、Snapdragon 8 Gen 3が搭載されることが明かされた。ステージ上では、Xiaomi 14の実機が公開されている。
チップセットとそれを搭載する端末が同日にお披露目されるのも、これまでのSnapdragon Summitにはなかったパターンだ。PC向けプラットフォームのSnapdragon X Eliteを中心に据えた発表や、そのCPUであるOryonをスマホ向けに拡大してく表明、チップセットと端末の同時公開など、今年のSnapdragon Summitの基調講演は、予定調和に終わらないイベントだったと言えるだろう。競合他社がシェアを伸ばす中、クアルコム自身も転換期に差し掛かっているようだ。
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