INTユニットにDP4Aの演算エンジンを搭載
回路規模を小さくでき省電力化にも貢献
ところでMeteor Lakeの技術解説記事でKTU氏も触れていた話だが、Xe LPGではINTユニットにDP4Aの演算エンジンが搭載されている。このあたり少し経緯が複雑なのだが、もともとXeの基本的なコアは、Xe LPG同様にIntとFPが別々に設けられ、さらにFP64やXMXなどがオプションで追加可能な構成になっている。
DP4Aのエンジンは本来はXMX(Matrix Extension)に含まれるもので、実際Xe HPGを搭載するIntel ArcではXMXでDP4Aの処理をしている。ただXe LPやXe LPGではXMXが搭載されない。そこでXe LPではIntのVector SIMDエンジンにDP4Aの処理機能を搭載している。これをXe LPGも継承した格好だ。
この方式は、Xe HPGを搭載するIntel Arcに比べると回路規模をはるかに小さくでき、省電力化にも適している。その一方で例えばXeSSを使う場合には、XeSSと描画の両方でXVEのInt側のVector SIMDを取り合うことになる。つまりXeSSを利用すると本来よりも描画性能が落ちることになってしまうわけで、XeSSの品質と描画性能のバランスをどのあたりで取るか、考えどころである。
そうは言っても所詮は内蔵GPUなので、ディスクリートGPUほどの描画性能はそもそも発揮できないし、フルHD程度の画面でプレイする限りにおいてはそこまでクリティカルに描画性能が効いてくることもない(XeSSを前提にすれば、描画サイズはSDないし1600×900ピクセル程度で、これをXeSSでフルHDに拡大するといったあたりだろうか?)ことを考えれば、これで十分という判断かもしれない。
そしてゲーム以外でDP4Aを使うケース(例えば画像加工)もあるから、この場合はGPUをフルにDP4Aの処理に回せるわけで、このあたりがバランスとしては落としどころになるのだろう。
ちなみに他の機能としては新たにアウト・オブ・オーダー・サンプリングが追加されたとあるが、こちらの詳細は不明である。
Meteor Lakeの演算性能は
Raptor Lakeの約1.78倍
また性能は、まだIntel Core Ultraの詳細なSKUが不明なのでなんとも言い難いのだが、1つ目安としてRaptor Lakeと比較した数字がある。それが下の画像だ。
単純に考えると、動作周波数が1.5GHz→2GHzに上がり、96EU→128XVEなので、演算性能そのものは1.78倍ほどになる。これがそのままゲームのフレームレートに直結するわけではないにせよ、相応に性能は強化されたと考えて間違いではないだろう。
ただ所詮は内蔵GPUであり、メモリーはCPUと共用の形になるため、ここがボトルネックになるわけで、ディスクリートGPUとは比較にならない。とはいえ、Intel Arcで言えばA380が比較的構成としては近いので、これにどの程度肉薄できるかは実際に比較してみたいところだ。
ちなみにその他の構成はIntel Arcにほぼ等しい。メディアエンジンはAV1のエンコード/デコードをサポートしているし、ディスプレーは最大4ポート(うち2ポートは内蔵LCD向けの省電力機能を搭載)構成となっている。
この連載の記事
-
第805回
PC
1万5000以上のチップレットを数分で構築する新技法SLTは従来比で100倍以上早い! IEDM 2024レポート -
第804回
PC
AI向けシステムの課題は電力とメモリーの膨大な消費量 IEDM 2024レポート -
第803回
PC
トランジスタの当面の目標は電圧を0.3V未満に抑えつつ動作効率を5倍以上に引き上げること IEDM 2024レポート -
第802回
PC
16年間に渡り不可欠な存在であったISA Bus 消え去ったI/F史 -
第801回
PC
光インターコネクトで信号伝送の高速化を狙うインテル Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第800回
PC
プロセッサーから直接イーサネット信号を出せるBroadcomのCPO Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第799回
PC
世界最速に躍り出たスパコンEl Capitanはどうやって性能を改善したのか? 周波数は変えずにあるものを落とす -
第798回
PC
日本が開発したAIプロセッサーMN-Core 2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第797回
PC
わずか2年で完成させた韓国FuriosaAIのAIアクセラレーターRNGD Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第796回
PC
Metaが自社開発したAI推論用アクセラレーターMTIA v2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第795回
デジタル
AI性能を引き上げるInstinct MI325XとPensando Salina 400/Pollara 400がサーバーにインパクトをもたらす AMD CPUロードマップ - この連載の一覧へ