今回でMeteor Lakeの話はいったん終了である。残るのはGPUとSoCまわりとなる。まずはGPUから説明しよう。
Xe-LPGはXe LPの強化版?
Xe LPと比較して2倍の性能と言うけれど……
Meteor Lakeに搭載されるGPUはXe-LPGとなる。Raptor LakeまでのGPUはXe LPベースであり、その意味では新アーキテクチャーの搭載になる。
Xe LPGは連載579回のロードマップには存在しない。構造的にはXe LPの強化版というよりはXe HPGの低消費電力向けという扱いになるかと思われるのだが、インテル的にはXe LPの強化版という説明の仕方をしている。
Xe LPとXe LPGの違いは、以下の3つが挙げられている。
- より高い動作周波数での駆動
- より規模の大きな構成が可能
- アーキテクチャー的な効率向上
まず動作周波数が下の画像で、同じ動作周波数ならより低い電圧で動作するし、同じ電圧ならはるかに高い動作周波数まで稼働するとしている。
リファレンスになるのはRaptor Lakeあたりだろうから、例えば「Core i9-13900HK」を例に取ると、GPUは最大1.5GHz駆動である。ここから考えると、Xe LPGでは最大2GHz位まで動作周波数を引き上げ可能(実際に2GHzまで行くかどうかは不明)だし、ベースとなる1GHzであれば電圧を0.78倍に落とせるので、それだけ省電力になる可能性が高い。ちなみにこれはアーキテクチャー云々というよりも、Intel 7を使うXe LPとTSMC N5を使うXe LPGの違いだと思われる。
次が構成そのものの大型化である。従来のXe LPは最大でも96EU構成であったが、Xe LPGでは128EU構成(Xe LPGの用語なら128XVE)まで拡大できるとしている。EUの中身はこの後説明するとして、EU数で1.33倍、ジオメトリー・パイプラインが2倍、サンプリング/ピクセル バックエンドがそれぞれ1.33倍、そして従来は未サポートだったレイトレーシング・ユニットを搭載している。
レンダースライスの数で言えば3分の2になる計算だが、個々のレンダースライスの性能が大きく上がっている。大規模なGPUであれば、複数のタスクを並行して動かす場合の粒度が下がるので不効率という可能性もあるが、このクラスのGPUであればこれによるデメリットはないと考えていいだろう。
最後がアーキテクチャーそのものである。Xeコアの構造は下の画像のとおり。1つのXeコアに16個のXVE(Vector Engine)とロード/ストアー・ユニット、それとキャッシュが搭載される。
Xe LPの場合と比較すると、サンプラー/メディアサンプラーがXe Coreの外に追いやられている。ではそのXe LPGのXVEは? というのが下の画像だ。
Xe LPのEUの構成は連載579回で示したとおり以下の構成だった。
- INT/FP共用となる8-wideのVector SIMDが搭載
- INT8でDP4Aにも対応
それに対し、XVEでは以下のようになっている。
- INT/FPそれぞれ別に8-wideのVector SIMDが搭載
- FP64のEngineも搭載
- EM(Extended Math)の数は変わらず
このINTとFPのVector SIMDは同時に実行が可能であり、絶対的な演算性能で言えばXe LPGのXVEはXe LPのEU比で2倍の処理性能を誇ることになる。記事冒頭の画像に出てきた2倍というのはこのことで、確かに嘘ではない。
嘘ではないのだが、INTとFPを同時に動かすという状況がどの程度あるのかという疑問は当然出てくる。常時こうした処理があれば、確かに実効性能は2倍になるだろうが、INTのみやFPのみであれば実効性能は変わらないからだ。
また新たにFP64の演算器が搭載されたのも目新しいが、これはHPC用途向けならともかく、Xe LPGにわざわざ搭載した理由が思いつかない。科学技術計算をやらせる(Meteor Lakeをモバイル・ワークステーション的な用途で使う)ケースはあるだろうから無意味ではないが。
XVE数は128なのでFP64では128Flops(MAC演算が可能なら256Flops)。1GHzなら256GFlops、2GHzで512GFlopsになるので、CPU側でAVX256(FP64で最大16Flops/サイクル、Pコアが最大5GHzで動いたとしても80GFlops)を使うよりはるかに高速ではあるのだが、ローパワー向けのGPUにしてはやや無駄な気もしなくはない。
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