牛肉があることが前提の味わいになっていると感じる:
吉野家の牛黒カレーがリニューアル 何が変わったのか
2023年10月05日 16時00分更新
「牛黒カレー」
吉野家
589円
https://www.yoshinoya.com/menu/curry/gyu-blackcurry/
トマトとカルダモンがポイント
吉野家は、10月2日より「牛黒カレー」と「牛ハヤシライス」を販売開始。2022年9月末まで販売していた牛黒カレーは、一層おいしく、食べ進めやすい商品へリニューアルしたとうたいます。
そのリニューアルの成果は? 結論からいうと、トマト感とスパイスのさわやかさが確かに感じられました。
そもそも、“黒”カレーとは何か。ルーには、タマネギとトマトペーストなど野菜をベースに25種類以上のスパイスを配合。今回のリニューアルでは、トマトペーストの量を増やしてトマトのコクと酸味、うまみを際立たせたとします。さらに、スパイスにカルダモンのさわやかさを共存させたとのこと。
お肉がのった「牛黒カレー」ほか、シンプルな「黒カレー」、「チーズ黒カレー」「から揚げ黒カレー」などバリエーションを用意。各種テイクアウト可能です。
【商品例】
・黒カレー 435円
・牛黒カレー 589円
・肉だく牛黒カレー 699円
・チーズ黒カレー 575円
・から揚げ黒カレー 644円
※店内飲食、消費税込み
※テイクアウトは税率が異なる
つまり黒カレーは、吉野家の公式画像に「黒(コク)を、もっと。」とあるように、“コク”を持たせたメニューだというわけです。
「牛丼の具材をのせるとパワーアップする」ような仕上がり
実際に食べてみると、うたい文句にもあるように、確かにトマトの酸味が感じられます。といっても、「トマトカレー」とするほど強いわけではなく、酸味やコクにほどよく寄与しているという感じでしょうか。
カルダモンについても同様です。スパイスのさわやかさというか、スパイシーな感じはあるのですが、前面に出てくるほど強くはない。トマトと同じで、「そこにあることはわかるけれども、出しゃばらない」という風情。
強烈にフルーティーというわけでも、飛び抜けたスパイシー感があるというわけでもないのですが、前に出てくる要素がない分「バランスがよい」という仕上がりにはなっています。甘すぎず辛すぎずなので、誰でも食べられるまとまりはありますね。
ただ、コクはあるといっても、専門店のようなどっしりとしたものがあるわけではない。そこで、牛肉(とタマネギ)と合わせることで、コクが増した味わいになるのです。牛肉の脂身もそうですが、タマネギの甘味もプラスに働いているでしょう。
というよりも、この黒カレーは、具(トッピング)をのせて完成するテイストにまとめているような気がします。何かが突出した味のバランスにしていないのは、肉の脂や、そこから溶け出る旨味を受け止める土台にするためではないでしょうか。
新しい吉野家の黒カレー、「バランスがよい」ということもできますが、単体ではちょっと物足りなさも感じるかもしれません。何かトッピングをしてもらうことが前提……というよりも、「牛丼の具材をのせるとパワーアップする」ような仕上がりではないでしょうか。
このあたり、カレーの味を単体でも成立する作りにした(≒「カレギュウ」はどちらかというと派生メニューに近い扱い)松屋などとは、設計思想が異なるように思われます。牛肉をのせてなんぼのカレーというわけです。
そうはいっても、うたい文句にある「トマト」と「カルダモン」の存在感がきちんと出てくるという点で、リニューアルにあたっての堅実な作り込みを感じました。安心して勧められるものになっています。
モーダル小嶋
1986年生まれ。「アスキーグルメ」担当だが、それ以外も担当することがそれなりにある。編集部では若手ともベテランともいえない微妙な位置。よろしくお願いします。
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