このページの本文へ

山根博士の海外モバイル通信 第656回

シンガポールの展示会で見たNTT ATのモバイル向け最新技術を紹介!

2023年07月14日 12時00分更新

文● 山根康宏 編集●ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

CommunicAsia 2023 NTT ATブース

 海外の展示会を取材していると思わぬところで日本企業の出展に出会うことがあります。2023年6月シンガポールで開催された「CommunicAsia 2023」の会場にも見慣れたNTTロゴのブースがありました。NTTの関連会社、NTT AT(NTTアドバンステクノロジ)が出展していたのです。CommunicAsiaはB2B向けのイベントで、エンタープライズ向けの通信関連製品の展示が行なわれていましたが、シンガポールでの展示会ということもあってか、NTT ATは屋外インフラ向けの材料の展示が主でした。いずれも普段は目にするものではありませんが、なくてはならない素材です。

水をはじく超撥水材料「HIREC300-W」

 HIREC300-Wはアンテナやレーダー、鉄塔など屋外の設備に塗布する超撥水材料です。たとえば雨が降ったときに、アンテナの表面にはうっすらと水の膜が残ってしまいます。しかし撥水剤を塗っておけば、表面に水が残ることは少なくなります。写真で見るとわかるように、HIREC300-Wを塗布した金属板に水をかけると、水は玉になってすべて滑り落ちていきます。一方、一般的な塗料では水の幕が残ります。HIREC300-Wは塗装面と水滴の接触角が150度以上という驚異的な撥水性能を誇ります。

超撥水材料を塗布すると水が玉になり流れ落ちる

 水の膜はアンテナの電波感度を下げる原因になります。特にミリ波のような障害物に弱い電波ではその影響は顕著に現れます。今後、5Gの普及が進んだときに「雨上がりはなんだか電波が弱いな」なんてことが起きないように、5G時代に超撥水材料は必須になるでしょう。なお、HIREC300-Wは揮発性有機化合物をほぼ含まず、引火点もないため消防上も安全です。

HIREC300-Wのカタログから。ミリ波では水膜の影が大きくなる

太陽光を反射し温度上昇を抑える
「サーフクール」

 続いてはこちらも屋外設備向けの材料、高反射遮熱塗料「サーフクール」です。屋外に基地局や関連の発電施設、あるいはデータセンターを設置することもありますが、夏になれば日差しが強く、建屋が太陽光で加熱され室内の温度が上昇してしまいます。サーフクールは太陽の近赤外線(熱線)を効率良く反射させる特殊な顔料で、高い遮熱(日射緩和)効果が得られる塗料です。

サーフクールを塗った石柱(手前)は温度上昇が約4度抑えられている

 通信や電力設備、コンテナ型データセンターなどは一般的に金属キャビネットが使用されますが、その表面に塗布することで温度上昇を防ぐことができます。これにより冷却性能を高める必要が低減され、エネルギーを節約することができるわけです。また歩道やコンクリートに塗布してヒートアイランドの対策にも使えるとのこと。応用範囲は広そうです。

建物のみならず道路などへの塗布も有効だ

結露を防止するシート「G-ブレス」

 屋外機器は電力や通信ケーブルで接続されますが、屋外でもケーブル同士を接続する必要があります。しかし接続したケーブルを雨風から守るため、必ず配線を収納するボックスが設置されます。ボックスは防水機構になっているものの、高温多湿な地域ではどうしても内部に湿気が籠ります。そしてその湿気がケーブルのコネクターを錆びさせケーブルの接続不良を起こしてしまうのです。調湿シート「G-ブレス」は配線ボックスの中に入れるだけと設置が簡単なシートで、屋外が100%と高い湿度の時でもボックス内を60%程度の湿度に保つことができます。

G-ブレスは配線ボックスの中に貼り付けて使う

 日本ではNTTの通信機器の接続端子箱、保護装置に50万件以上、家庭用屋外ドアホンに20万台以上の導入実績があるとのこと。地味な素材に見えますがこれで通信装置などのメンテナンスを低減させることが可能になるのです。

テレワーク時代に必須、自動翻訳機能もあるAI会議システム

 素材の展示とはうってかわって、こちらは多言語リアルタイム会議支援システム(BMA:Borderless Meeting Assistant)のデモ。ビデオ会議の音声を認識してテキスト化してくれ、さらにCSV形式で保存できるため後から会議内容を確認したり議事録化することも容易にできます。

BMAの概要

 また英語と中国語の自動翻訳にも対応、多言語のビジネス会議でも外国語をテキスト化して表示してくれるため、意思疎通がスムーズにできます。ほかにも会議予約システムが組み込まれており、オンライン・オフライン混合の会議も簡単に予約できるとのこと。日本だけではなく中国市場向けにも展開中です。

多言語会議のテキスト化の実際の様子

グローバルeSIMの配布も

 IoT機器向けのグローバルSIMを提供している「Transatel」の紹介もありました。同社は2018年にNTT Communicationsが買収してNTTグループ企業となりました。グローバルキャリアと提携して、国を超えて移動するIoT機器などへの接続サービスを提供しています。

NTTの傘下となったTransatel

 コンシューマー向けにも「Ubidi」ブランドでサービスを展開しており、グローバルで利用できるeSIMを展開中。ブースでは来場者に1GBの無料eSIMの配布も行なっていました。ちなみにUbidiは日本向けに1日500MB 360円や1年24GB(2GB/月)5400円なんてプランも提供しています。このeSIMはいずれ使ってみようと思います。

1GBのグローバル体験eSIMをもらった

山根博士のオフィシャルサイト

「スマホ好き」を名乗るなら絶対に読むべき
山根博士の新連載がASCII倶楽部で好評連載中!

 長年、自らの足で携帯業界を取材しつづけている山根博士が、栄枯盛衰を解説。アスキーの連載「山根博士の海外モバイル通信」が世界のモバイルの「いま」と「未来」に関するものならば、ASCII倶楽部の「スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典」は、モバイルの「過去」を知るための新連載!

 「アップルも最初は試行錯誤していた」「ノキアはなぜ、モバイルの王者の座を降りたのか」──熟練のガジェットマニアならなつかしく、若いモバイラーなら逆に新鮮。「スマホ」を語る上で絶対に必要な業界の歴史を山根博士と振り返りましょう!

→ASCII倶楽部「スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典」を読む

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン