ペーパーレスでも、働き方改革でもないのに業務は大きく変わる
買付価格すら変える「流通の情報流」をnimaruとLINE WORKSで構築した横浜丸中青果
2023年06月02日 09時00分更新
営業マンとアシスタントとのやりとりが円滑に 業務や働き方に変化
LINE WORKSの導入により、社内では営業マンとアシスタントとのやりとりも円滑になったという。卸売り業者だからといって、黙っていても、商品が来るわけではないため、営業マンはつねに全国を飛び回っている。しかし、営業マンが出張に出かけてしまうと、移動中は自分で基幹システムに契約金額を入力できないので、アシスタントに任せる必要が出てくる。ここでLINE WORKSが威力を発揮する。金額が記載されている購入伝票をスマホのカメラで撮影してトークで送るだけだ。「もちろん電話でもできますが、LINE WORKSの方が正確です」と岡山氏は語る。
LINE WORKSのグループには、各青果の担当者のほか、営業、アシスタント、荷分け担当など多いときで30人近くが参加しているので漏れも少ない。グループに所属している人数が多いため、返信した人が最後まで担当するという運用ルールを設けた。ただ、マネージャー職は多くのグループに所属することになるため、おのずと通知が増える点が悩みだという。
今回のLINE WORKSの導入効果を定量的に表すのは難しい。「この業種で紙は絶対になくならないです」と岡山氏が断言する通り、注文書を撮影してLINE WORKSで流しているという使い方なので、ペーパーレス化を実現したわけでも、残業時間が減ったわけでもない。使っているのはトークだけで、掲示板もノートもタスクも一切使っていない。しかし、LINE WORKSで業務や働き方が大きく変わったのは事実だ。
たとえば、子育て中の地元主婦をパートタイムで営業アシスタントとして雇えるようになった。「ここは、住宅地の真ん中にあるので自転車でも来られるし、それこそ駐車場はいっぱいあるので、お母さんたちが来やすいんです。複数のパート社員を雇っても、LINE WORKSのおかげで業務も引き継ぎしやすくなっています」と岡山氏は語る。
ちなみに岡山氏がLINE WORKSで評価しているポイントは、PC版が用意されているところ。「女性や若い人はスマホの方が入力も速いのですが、個人的にはPCを使った方が入力が速いので、PC版は本当にありがたいです」と岡山氏は語る。
次はnimaruとLINE WORKSによるデータ活用を武器に
ECサイトやSNSで青果を販売する生産者も増え、大手スーパーは自前で生産者の囲い込みも始めている。まさに戦国時代と言える青果流通の業界で、卸売業はというビジネスも大きな変革期を迎えている。「卸売業って本当に体質が古いんです。これまではなかった流通チャネルが増え、今は多くのライバルと戦わなければなりません」と岡山氏は指摘する。
横浜丸中青果として次に目論むのは、生産者に向けたnimaruのデータ活用とスピーディな情報共有だ。
この30年、日本では人口や年齢構成が大きく変化した。今までの勘と経験に基づいた栽培や販売では、もはや市場に適応できないのだ。「ITって極論1時間ごとに戦略を変えられますが、農業は1年に1回の商売。だから、5年分くらいはデータを溜めて、若い生産者たちが活用できるようにしたいです」と岡山氏は語る。
また、スーパーなどの販売店からすると、良い商品を、安価でスピーディに販売してくれる卸売り業者の選定はまさに商売の鍵。生産者からしても、手塩にかけた青果を高く、いち早く売りさばいてくれる卸売業者に販売を委託したい。こうした販売先や生産者から信頼を得るための情報合戦こそ、卸売業者の本来の土俵だという。「うちは民営化することで大きく変わることができたし、変革の流れがnimaruやLINE WORKSのさらなる活用につながっていると思います」と岡山氏は語る。