サッカークラブのアビスパ福岡が、2023年2月24日より「Avispa Fukuoka Sports Innovation DAO」をスタートさせている。「DAO」(ダオ)は特定のリーダーを置かず、複数の参加者が目的達成のために協業する組織の仕組み。日本のスポーツチームでは初となる、アビスパ福岡のDAOに迫る。
チーム運営に参加できるまたとないチャンス
「DAO」は「Decentralized Autonomous Organization」の略で、日本語では「分散型自律組織」という意味だ。特定のリーダーや管理者を置かず、複数の参加者、事業者がそれぞれに目的達成に向けて活動するブロックチェーン上で管理された組織を指す。一般のIT企業などでは導入が進んでいる試みだが、スポーツチームでDAOに取り組むのは今回のアビスパ福岡が初めてとなる。
今回の「Avispa Fukuoka Sports Innovation DAO」では、DAOのメンバーが優先的に手に入れることができる特別なデジタルアイテム「Avispa Supporters NFT」の発行や、チームとトークンホルダーが一緒になって若手育成を考える「Avispa Global academyプロジェクト」の実施などを行う。
すでに800人以上のサポーターがトークンを購入(取材時2023年3月)しており、今後は法人向けの展開も予定。個人、法人、規模の大小問わず、トークンを購入することでチーム運営に参加し、一緒にアビスパの未来を考えることができる。サポーターにとっては、チーム運営に参加できるまたとないチャンスだといえる。
さらにクラブを成長させるための手段としてのDAO
DAOを開始した理由について、アビスパ福岡の平田剛久氏は「これまでもアビスパトークンを活用した取り組みを行ってきたが、より多くのステークホルダーに参加していただき、さらに具体的にチーム・地域課題の解決に取り組めるようDAOをスタートさせた」と話す。
もともとアビスパ福岡では、Web3事業を行うフィナンシェと提携し、2021年から「アビスパトークンプロジェクト」を実施。Jリーグでは初となるNFTの発売やグッズの開発、開催試合の権利を活用した新しい観戦体験の創造に取り組んでいた。今回、アビスパ福岡がJ1在籍3年目となり、さらにクラブを成長させるための手段としてDAOが誕生したという。
平田氏は「クラブ単体の力では届かない部分があるのが実情。しかし、サポーターやスポンサー、ステークホルダーの熱量が、課題解決につながるケースも少なくない」と話す。特にアビスパは過去に地元企業やサポーターの助けで、経営危機を何度も乗り越えてきた歴史がある。熱量のある人や企業と協力することで、クラブ単体では気付けない課題やその解決方法を探せる。
他にも、多くの人が集まるほどトークンの価値が上がり、収益も生まれる。そこで得たお金を、また別のプロジェクトに回し、そこで新しい価値を生み出す。このような価値創造の循環が生み出せるのもDAOの魅力であり特徴だといえる。
他クラブからも関心が寄せられているアビスパのDAO
2月24日に始まったアビスパのDAOだが、先述のようにすでに多くのメンバーがトークンを購入して参加している。ステークホルダーが議論を交わすコミュニティールームでは、多くのファンがアビスパへの熱い思いを語っている。また、その盛り上がりを知った別のサポーターが参加するケースもあるという。
また、平田氏によると、所属選手からも大きな反響が寄せられているとのこと。当初は2~3人の選手がアンバサダーになってくれるとうれしいと考えていたが、予想を大きく上回る10人がアンバサダーとして名乗りを上げ、今回のDAOに参加。経営サイドだけでなく、選手もサポーターと一緒になってチームの今後を考える体制が出来上がった。
「ステークホルダーと一緒にチームを運営する」という趣旨のDAOは、同じようにチームや地域の課題解決を目指すクラブチームにとっても注目の取り組みだ。平田氏によると、他クラブや関係者から「どのように進めていくのか」などの問い合わせがあるという。新しいクラブ運営、また収益方法を模索する同規模のクラブにとって、アビスパのDAOがどのように成長していくのかは気になるところだ。
「Web3×スポーツの力で、福岡から世界に広がるイノベーションモデルを共創する」というビジョンで進められているアビスパのDAO。参加することが、サポーターにとってのステータスになれば、今後さらに参加者も増えるだろう。今後の展望に注目したい。