G-Master Spear X670Aをレビュー
Ryzen 9 7950X3D&GeForce RTX 4080搭載PC、クセはあるがゲーミング性能は本物
2023年04月04日 11時00分更新
チップレット構造の弱点を補う3D V-Cache
G-Master Spear X670AのCPUはRyzen 7000シリーズから選べる。近年のRyzenシリーズはモノリシックなダイではなく、複数のダイを組み合わせたチップレット構造を採用している。CPUの機能だけを搭載したダイ「CCD」(Core Complex Die)と、メモリーやPCI Expressのコントローラーを格納する「IOD」(IO Die)が基板に実装されている。
このチップレット構造はモノリシックダイよりも歩留まりが良いため、生産コストを抑えやすい。また、ダイの組み合わせを変えることで複数のモデルを簡単に製造できる、といったメリットがある。
Zen 4世代のCCDは最大8コアのため、16コア/32スレッドCPUのRyzen 9 7950X3DはCCDを2つ(CCD0とCCD1)、IODを1つ搭載したCPUになるわけだ。また、8コア/16スレッドCPUのRyzen 7 7800X3Dであれば、CCDもIODも1つずつということになる。
ただし、チップレット構造にはデメリットがある。その1つがCCD間のキャッシュを共有できないこと。もともとL1キャッシュとL2キャッシュは各コアごとにあるので共有できないが、L3キャッシュは同じCCD内のコアで共有している。つまり、同じCCD内であれば相互にデータを参照でき、レイテンシーを抑えられる。
ところが、CCDをまたぐ場合はコア間でデータを参照できなくなるため、それだけレイテンシーが大きくなる。つまり、コア数が多くてもこれが足かせとなり、仕様上期待できる性能が発揮できないといったことが起こるわけだ。
とはいえ、分散処理に向いている用途ではL3キャッシュの影響は小さい。むしろ、コア数が多いほうが総合性能は高くなりやすい。つまり、メニーコアCPUというアプローチにおいては、そこまで気にしなくていいということになる。
では、性能が向上しづらい用途はなにか? その代表が「ゲーム」だ。近年のゲームはマルチスレッドに対応しているものの、そこまで分散処理されず、多くのタイトルは4~8スレッドで動く。また、L3キャッシュの影響が大きいことが多く、異なるCCDで分散処理されてしまうと性能が上がりにくい。
また、使われないコアもあるのに2つのCCDを動かすと電力が増える。となると、当然温度も上昇する。その影響で動作クロックが上がらず、さらに性能が下がってしまうといった悪循環も考えられる。
こうした状況を踏まえて、Ryzen 9 7950X3Dでは2つのCCDに異なる特性を持たせてチップレット構造の弱点を補っている。片方のCCDは3D V-Cacheを搭載することでL3キャッシュを増量。通常32MBのL3キャッシュを96MBにまで拡張している。もう片方のCCDは従来通りだが、3D V-Cacheを搭載したCCDより高クロックで動作するという特徴を備える。
そして、優先して使用するCCDをソフトごとに切り替える技術も導入している。一般的な用途では高クロックのCCD1を優先し、ゲームでは3D V-Cacheを搭載したCCD0を優先することで、どんな用途でも高いパフォーマンスが出せるという。
なお、Ryzen 9 7950Xでは170WだったTDPは、Ryzen 9 7950X3Dでは120Wに引き下げられており、全コアをフルに動かすようなソフトでは前者のほうが優秀だ。その代わり、片方のCCDを集中的に使えるシーンが多いソフトでは、後者に分があることが多い。